希望を聞きましょうか
「どんな魔法を使ってみたいとかありますか?」
「え? 私が決められるんですか?」
「ある程度は作ってありますけど、海泉さんに合うものを作るので一応ご希望をお聞きします」
「えーと、水属性で、あまり複雑ではない仕様で、攻撃力よりは守備重視で、軽くて、あまり価格が高すぎないのがいいです」
属性は説明どおり。道具は杖を振ったり、簡単な呪文を暗記すれば魔法が出るものから、杖の振り方で威力が変わったり、かなり長い呪文を暗記してしかも詠唱しなければならないものまで幅広い。もちろん複雑なほうが、威力も高いし、多様性もある。
攻撃力や守備力、持久力などの組み合わせもオーダーメイドならでは。大量生産品だと、ある程度きまっているためである。
値段はやはりオーダーメイドは高い。特別な部品の納品が必要になったりするからである。
ちなみに、学生が作ったものを使っていいのかという話であるが、企画さえ通れば、オーダーメイド品に関しては学生でも自由である。もちろん学生の大会のみでの使用にはなるが、大量生産品と異なり使う人さえきちんと使えるのならば大丈夫なのである。
大量生産品は誰でも使えるようにしなければならないので、学生が作ったものは本当に優秀なものでない限り同じ学生が使うことはまずない。
「うーん……。すべてを満たそうと思うとなかなか難しいですね。多少は違っても大丈夫ですか?」
「頼んでるのは私ですし、何とかなるのでしたらいいですよ」
「では、まず一つ目ですけど、水属性に応用はできますね。スイッチ式になっているので術式も簡単です。シンプルな形をしているので値段も2万円くらいと安いです。自分の周りに常に魔法を起こせるので、水属性ですと自分の周りに水の壁を起こすみたいな応用も利きます」
「すばらしいではありませんか! とてもよい道具です」
説明を聞いて身を乗り出す海泉。あまり期待をしていなかったこともあったので、驚きもあった。
「ただ、軽量化には成功してないんですよ」
「いえいえ、これだけ好条件でしたら多少重くても大丈夫ですよ」
「800キロくらいあるんですよ」
「さすがに重すぎではありませんか?」
「サイズ自体は小さいですし、使ってる部品は安いんですけど、スイッチ式にした関係で魔力のコアと魔力そのものを通す配線とかがものすごく多くなってしまったんです。これでも2トンからかなり減らしたんですけどね」
「文句を言うわけではありませんが、これで企画は通るものなんですか?」
「企画を通すだけでしたら理論上可能でさえあればいいので。使いようはまだ考えているところです。道具そのものはシンプルですから。教官はめちゃくちゃに言ってくれましたけどね」
「すいません。私にはこれは生かせそうにないです」
「仕方ないですよね。では2つ目……、これは水属性に適用はできます。ちょっとだけ暗記は必要ですがそこまで無詠唱で発動できますからそこまでは複雑ではないですね。スマートホン型なのでとても軽いです」
「こちらもすばらしいですが、1つ言われてないことがありますね。価格はおいくらですか?」
「1万円です」
「価格も安いですね、これでいいと思います」
「ただ1つだけ説明がいるんですが……」
「多少の欠点でしたら何とかがんばりますよ」
「魔力の流出に耐えられる材質の部品が希少なので、それを使うと値段が高すぎるんです。その関係で部品を少し悪いものにしたので、2回使うと壊れるんです」
「ということは……」
「まともに練習したら、数百万円単位で費用がかかりますね」
「すいません、私奨学金と大旦那様からのご支援で何とかやっている次第ですので、申し訳ありませんがそこまでのお金はお出しできないです」
2連続で致命的な問題があった。この様子では3つ目も厳しいだろうと海泉は思い、ここに来たときと同じくらいのあまり期待していないテンションで、残りの1つは勉強は見学程度の気持ちで見ることにした。




