それはそれ、これはこれである
「私がへこみながら生徒会室の近くを歩いているとめちゃくちゃ不機嫌な子生徒が生徒会室の前の廊下にいらっしゃいました。それが秋大様でした」
「当時から。不審者だったんですね」
「誰が不審者だ。少なくとも今は違う」
今不審なのは見た目だけである。それは当時もだが。
「秋大様は自分の作った魔法の道具が教官に低評価で怒っていらっしゃいました。その時のことはよく覚えております」
「これはまた回想話になるんですかね」
「こういう回想話って、実際にはどう説明しているのでしょうかね?」
「何を言ってるんですか?」
「まったくあの教官はなんにもわかっちゃいない」
当時の秋大の不機嫌オーラはとてつもなく、使用人の件で途方にくれていた海泉ですら無視できないくらいだった。
「あっ……」
しかも下手に立ち止まったため、秋大と海泉は目があってしまった。
「なんですかあなたは。人の落ち込んだところを見てって、あなたもえらい落ち込んでますね」
「お分かりになられます?」
「うつむき加減の角度が自分と同じです」
「なるほど……、? 分かるものなんですか?」
「すいません、適当なことを言いました」
落ち込んでるか落ち込んでないかの2択なのだから適当に言っても当たるものである。そうか?
「落ち込んでる割には余裕がありますね」
「こういう時こそ冗談でも言ってた方がいいんですよ」
確かにそうだと海泉は思った。使用人の問題が起こってからずっと暗いままで、誰とも話さなかった。こうして少しでも会話をすると気分がはれるものである。
「ではついでに私の話を聞いていただけますか?」
かくかくしかじか。
「なるほど……。大変と言えば大変ですね。というか、めいじの家の使用人さんなんですか」
「めいじ? 明治様と知り合いなのですか?」
「俺は生徒会副会長ですから。彼とはいつも顔を合わせてますよ」
「ではあなたが明治様の話している秋ちゃんさんですか」
「俺も話は聞いてますよ。ずっとお世話になった、というかお世話してた使用人が変わるかもしれないって悩んでました」
「明治様が……」
明治が自分でなにもかもやるので楽をしているため、海泉は明治がもしかしたら自分を嫌っているのではないかと不安であった。
不安なら仕事をしろという話だが、それはそれ、これはこれである。いやどういう話であれ、仕事はしろという話である。
「めいじはあなたのことをかなり気に入っている見たいですし、第3種魔法使いとして協力したいんですが、さすがに今から強い道具を作るのは難しいですね……」
道具は大量生産されるものと、その人専用となるオーダーメイドの2つに別れる。
前者は一定のランクが求められる代わりに簡単に使える。
後者は使用者に合わせるのでランクは自由になるが、使用者がきちんと使うためにある程度の修練が必要になる。
大量生産の道具が使えない彼女が、大会で戦えるほどの道具を使うとすればオーダーメイドしか無理だったが、道具を作るのには少なくとも半月、まともに修練するのには1ヶ月は必要になる。
既に当時、大会まで1ヶ月を切っていたため、そんな時間はなかったのである。




