やや素人でも
「あのー、どういうことですか?」
「言葉通りの意味ですよ。今すごく遊ばせていただいてますから」
「メイドの仕事ができなくて辛くないんですか? その為に頑張ってきたんですよね」
「間違ってはおりませんが正解ではありません」
意味が理解できないのか聡美は頭をかしげる。
「メイドになるための努力をしてきたのは確かですが、楽をできるのが1番です」
「豊本先輩のメイドになるのはそんなに大変なんですか?」
「めいじはじいさんに好かれてるんだよ」
作業が大体終わった秋大が話に参加する。
「それはなんとなく分かります。豊本先輩いい人ですからね」
「あの家はじいさん以外は、魔法に対してまったく興味がないんだ。めいじの父さんなんて喫茶店の店長をやってるくらいだからな」
「明治先輩のお父さんですか……」
まだ見ぬ明治の父親と祖父がどんな容姿をしているのかが今更ながら微妙に気になり、目の前のメイドへの興味がやや薄れる聡美であった。
「ちなみに、めいじ以上にあれだぞ」
「すごく見てみたいです」
「私の話を無視しないでいただけませんか。急に興味がなくなっているではありませんか」
「まだいたんですか」
「存在にすら興味無くなられている!?」
「私は、豊本家に多く雇われました使用人の1人でした」
「角田先輩。何事もなかったかの様に話を再開してますけど」
「聞いてあげて。話好きなんだよ。めいじの家にはいずれ連れてってあげるから。後少しでこっちも終わるし」
「分かりました。まぁ暇潰しにはなるでしょう」
真面目なはずの聡美が毒舌を言う。地味に聡美も生徒会に染まりつつある。
「大旦那様、つまり明治様のお祖父様は若い第2種魔法使いを使用人として集めて、海外に輸出するための魔道書や杖の模擬実験をしています。この実験への参加と使用人として働く代わりに、東魔法学校に通うための援助をしています」
「そうなんですか! それは面白いですね」
ちょっと興味が出てくる聡美。
「この学校には600人の生徒がいますが、約60人は第1種魔法使いですから、第2種魔法使いは第3種魔法使いがいることも考えると、500人くらいがいるんですけど、50人は大旦那様の援助を受けて通っています」
約一割を占めている。豊本家の息がかかりすぎである。
「それは危険はないんですか?」
道具の実験を、若い学生にさせるのは問題があると聡美は思ったため心配になった。
「そういう危険かどうかの実験は別の人がやります。学生にやってもらうのは、あまり魔法が上手くない人でもきちんと使いこなせるかどうかの実験です」
杖や魔道書が海外で需要があるのは、きちんと学んだ人が、ちゃんと魔法を使える。つまりは努力さえすれば誰でも魔法を使えると言うことにポイントがある。
「東魔法学校に通えるくらい努力できる学生のデータを集めるのが意外と大変で、大旦那様はこのようなシステムを採用されました。東魔法学校は学費も高いので、余程好成績で奨学金や学費免除がないと、お金持ちでない場合は3年間通うのは難しいんです。お金持ちの学生ははあまり使用人として働いていただけませんし」
「簡単に言うと、やや素人でも使える道具の実験に学生を使うんですね」
「そうです。私も3年間こちらにお世話になりました。そして明治様は私より1つ下ということで年が近く、私がお世話をすることになったのですが、先ほども言った通り明治様は何でもこなされるので楽をさせていただきました」
それはやっぱりどうなのかな? 聡美は思ったし、この場に誰かいればそう思うだろう。
「そして、明治様が2年生になられた時に生徒会長となってお疲れになって遅くに帰られることが多くなりましたので、大旦那様がきちんとボディーガードもこなせる明治様専任の使用人を募集されました」
明治は確かに強いが、見た目華奢な明治が夜道を歩くのは危険だった。
「私は楽な使用人生活を止めたくなくてもちろん立候補しましたが、私以外にも立候補が多かったので大旦那様は毎年1回行われる、学生のみの魔法大会で最も好成績を残せたものを明治様専任の使用人とされることに致しました」




