狙ってたんです
「申し訳ございません、生徒会室で仮眠をとらさせていただいて」
「寝てたんですか! 立ったままで!」
「私の特技です」
表情はポーカーフェイスだが、指がピースマークなので自慢しているのは分かった。
「お初に御目にかかります。私は清水海泉と、申します。明治様のメイドを勤めさせていただいております。そして、この学校の卒業生でもあります」
「わ、私は飯田聡美です」
「明治様から話は伺っております。明治様に勝たれたそうですね」
「あ、はい」
「明治様も喜んでおられました。久々にいい戦いができたと」
「ありがとうございます」
聡美は安心していた。生徒会室に乗り込んでからというもの、わが道を行く3人に圧倒されていたため、ようやく常識のありそうな人に出会えたと。立ったままで寝てることはそこまで気にされていないようだ。
「それではまた私は仮眠をとらさせていただきます」
海泉がまた目を閉じると仕事の音しかしなくなる。
「だから待って! 問題は解決していないわ!」
急に大声を聡美が出したため、海泉が驚いて目を開ける。
「人が寝てるところで大声をお出しになられるのは非常識ですし、はしたないですよ」
「立ったままで寝るのははしたなくないんですか!?」
「分かりました。横になって寝させていただきます」
そう言うと、生徒会室の端にあったパイプ椅子をいくつか持って開いて横になる。
「そういう話ではなくて、何故豊本先輩のメイドさんがここにいるのかを教えてもらえませんか?」
「分かりました。お答えします」
ムクッと起き上がると、真面目な顔をした。ポーカーフェイスなので分かりにくいが。
「私は明治様の専属メイドでございますので、原則としては明治様のお側にいることになるのが普通です。しかし、明治様はあのようにお強い方ですし、炊事洗濯裁縫何でもこなされます。メイドなど本来はあの人には必要ありません」
ポーカーフェイスながら、悲しそうな表情をしているように聡美には見えた。
せっかくの自分のスキルが生かしきれないと言うのは、努力家の聡美にとっては耐え難いことであった。
「ですが、専属で任されている以上はやることがなくても学校などの外出先についていかなければならないんです。3年生の明治様は今日のように自習をなさることもあり、私が手持ち無沙汰になることも多くなりました……」
「辛いですね……でもお仕事ですから頑張らないと……」
「学生時代に頑張ったかいがありましたよ! このポジションずっと狙ってたんです!」
ポーカーフェイスながら片腕を大きくあげたポーズは本気で喜んでいると分かった。
そして、聡美は海泉も変わった人であると察した。
さっきまで悲しそうに見えたのは完全に気のせいだったようだ。




