謝罪は大事です
「……、ううん……」
聡美が目を覚ますと白い景色が目に入った。
意識がはっきりしてくると、消毒液の香りがしてここが保健室と分かった。
常日頃怪我人の出やすい魔法学校では、ほとんど病院と変わらない規模と設備が準備されているため、個室がら準備されている。
保健室というよりは保健館という大きさである。
ならばなぜ病院ではないと分かったかというと、掛け布団に保健室備品と書かれていたことと、彼女が保健室に来たことがあるからである。後者の話があるのなら、この六行ほどの説明は無駄ではないのか。
「あ、目を覚ましたみたいじゃない」
「飯田さんおはよう」
彼女が寝ていたベッドの横に明治と秋大が座っていた。のんびり紅茶を飲んでおり、レモンティーの香りがした。ちなみにペットボトルであり、ティーバックにカップではない。十分美味しいよね。
「2人とも……、ぐっ!」
聡美は起き上がろうとしたが、左肩に激痛が走りできなかった。
「まだ起き上がれないよ。ここの医療技術は優秀だけど流石にすぐには直せない」
「ごめんね。聡美ちゃんの肩に刺した傷と凍傷が思いの外重症で、どうしても1日入院が必要だったらしいじゃない」
2人が聡美の顔を上から覗いたことで彼女は2人の顔を認識する。
「あれ? 私負けたの?」
「何を言ってんだい? ちゃんと飯田さんに勝利宣言がされたぞ。寝起きだからボケてるのか? それなら僕と同じだな」
「会長に負けてから約1年負けてなかったから、本当に久々に負けたよ。負けの感覚を忘れそうだったじゃない」
「いや、私も勝ったところまでは覚えてるんだけど、私がこれ負けたみたいじゃない?」
明治は普通に座って秋大と談笑しているし、包帯を巻いたりしている訳ではない。
「それは当たり前じゃん。明らかに有効飯田さんの方が多くもらってたじゃん」
「僕が最終ラウンドの2回だけだし、ちょっと火の粉が当たったのと、技を回避しきれなくて意識が飛んだだけだしね。防御は一応してたから火傷全くしてないじゃない」
「飯田さんは、つらら刺さるわ、酸素を減らされるわ、尖った氷が当たるわ、そんな中で無茶な動きや大技を使うわでそりゃ倒れるよ」
「なんか素直に喜べません! 明治先輩も倒れてるべきですよ!」
「勝ったんだからその結果を喜べばいいのに。脳筋の次は面倒くさい女か」
「そのまま起きなければよかったじゃない」
「2人とも毒舌が過ぎるわ! 明治全力もあんな激闘の後にテンション軽すぎるでしょう」
「頭固いな~。オンオフの切り替えくらいしなよ。肩こるよ。ただでさえ肩こりそうなスタイルしてるのに」
明治、可愛らしい顔してまさかのセクハラ。
しかし、外見が女顔の彼が言うと女性に言われたような感じになり、ただの女性同士の会話になっている。この場に秋大もいるのだが、彼には色々言われ過ぎて今さら気にならないのだろうか。
「まぁそれはそれとして、飯田さんどうする?」
「どうするって、生徒会長と戦う話ですよね」
「そうだけどさ、多分……」
「……勝てませんよね、というより、次に明治先輩とやったら勝てませんよね」
「分かってるんだ……。自惚れてるかと思ったけど流石じゃない」
「あの試合、明治先輩勝とうと思えばいくらでも手はありました。あくまでも、明治先輩自身の事情で真っ向勝負を挑んでくれたからギリギリで勝てたんです」
明治は第2ラウンド以降は、防御に徹すれば判定で勝てたし、彼にはまだ輝細雪刃や氷中迷子以上の技があった。
あくまでも新技輝細雪刃を試した都合で全ての技を使用しきれなかっただけ。
聡美は万物引火や陽炎旋律以上の技はまだ無い。ほぼ実践経験の無い彼女としては十分過ぎるがそれは言い訳にしかならない。
情報面でも次の試合は戦い方が知られているから有利にならない。
この状態で明らかに明治が格上と認める会長に勝つことなど不可能なのは目に見えていた。
「戦うからには勝つ見込みがないと意味がないです。会長にも失礼ですし止めときます」
秋大も明治も驚いていた。
「脳筋かと思ってたのに」
「スタイルに栄養がいったバカかと思ってたじゃない」
内容はものすごく聡美に失礼だった。
「ごめんよ」
「悪かったじゃない」
「そういえば脳筋についてまだ謝られてなかった! 謝るの遅いですよ!」
「えー、その話また持ち出すの~。やっぱり面倒くさ!」
遅くても謝罪は大事ですね。
次の話から学校の話になります




