真っ白な吐息
公務員を目指すのは給料が安定しているからだ。
魔法が苦手のくせに魔法生物対応係なんていくのは倍率が低いからだ。
倍率が低いのにはこの市役所がヤバいからじゃないかと疑いはしたが試験を受けたのは無職から公務員へのステップアップを考えれば耐えられるものだと思ったからだ。
採用試験で死にかけるなんて一切考えてなかったからだ・・・
息を切らしながら俺は必死に頭に叩き込んだ魔法生物の知識を引っ張り出そうとした。
魔法生物:
①魔法エネルギーの余波を浴び姿を変えた動物たち。人間のペットとなっていた犬が変化するパターンが多くケルベロスの確認例が一番多い。
②人間に飼われていた生物の変化が多いため魔法生物は人間に危害を加えることは少ない。
③魔法生物が使える魔法は大抵火炎弾
④魔法生物は使える魔法の数と比例して体が大きくなるが今までの確認例では元の体調の2倍(2種の魔法)が最高記録
⑤魔法生物には・・・
よく、ここまで引っ張り出せたと自分でも褒めてやりたくなったが今の俺の状況には全く役に立たなかった。俺の目の前の魔法生物は鳥だ、しかも冷気を吐く。勉強不足のせいもあり断定はできないが多分ガルーダ。そして、俺は・・・いや数少ない受験生たちは魔法生物ガルーダとの戦闘にさらされていた。
実技試験があるなんて予告なかったし、対応係はいわゆる市民の窓口で他に魔法生物を対応する部署と市民をつなげる役目だと参考書に書いてあったはずなのだが俺が愕然としてるのはそこじゃない。他の受験生たちが当たり前のようにチームを組んでいる、魔法を連動させてこの状況を突破しようとしている事である。
逃げ回ってる間にチームができたらしい・・・え、どこで?えっと・・・試験前の談笑に参加しなかったけども、むしろ試験前に談笑とかバカじゃねえかとか見下してたけども・・・
連動魔法とガルーダ(仮)の吐息がぶつかり合う景色の中、1人立ち尽くした俺は新しい就職先を考えていた。