第78話 スキルこそ至高
何故か筆が乗ったので、二日連続で投稿することに成功しました。やったぜ。
「いやぁ、とても清々しい朝だなぁ!雲一つない快晴、気分も高揚!今日は最高だぜ!」
翌日。何故かよく分からないが、目が覚めたら妙に高いテンションになっていたので、そのノリのまま隣の部屋のシスティアとキリナと合流した。
そして、システィアは言った。
「気でも狂ったの?」
「あの、システィアさん。暴言に定評のある俺でも、流石にその言葉はどうかと思うんですけど・・・」
何でこんなに辛辣なの?俺、何かしたっけ・・・。駄目だ、心当たりが多過ぎる。どれがアウトだったのか分かんねぇわ。
「それでアキラ。早速キリナの故郷に向かうのよね?」
「ああ。というわけでキリナ、お前の故郷まで道案内よろしく」
どのくらい離れてるんだろうか、キリナの故郷は。出来るだけ近いと良いけど。
「え?私、どこにあるのか分かりませんよ?」
「えっ」
分からない?どゆこと?
「何で?自分の家だろ?」
「だって私、自分の村を出るの初めてですから。そもそも、ここがどこなのか分からないです!」
「えええ・・・でも、ミールに来るまでにどんな道を通ったかくらいは覚えてるだろ?」
「分かりませんよー。私、ずっと馬車の中にいましたから。外なんて見てないです!」
「えー・・・」
だったらどうすれば良いのこれから。場所が分からないのに、向かうなんて無理なんですけど。
「システィア、何か知らない?」
「知るわけないでしょう。私はジュライジアに来るのは初めてなんだから」
「ですよねー」
どうしよう・・・。本当にどうしよう。向かうべき場所が分からないなんて展開になるなんて思ってなかった。
「そうだ、この宿の女主人に聞いてみよう。何か知っているかもしれない」
そうして、実際に何か知らないか聞いてみた。
「そんなの知るわけないだろう?エルフの村なんて沢山あるだろうし、その中からお嬢ちゃんが住んでいたとこを当てるなんて無理に決まってる。そもそも、エルフの村の場所なんて一つも知らないからねぇ」
駄目でした。
「じゃあ、知っていそうな人を知らないか?」
「知らないねぇ。エルフは自分達の村の事を頑なに秘密にしているからね。場所がどこかを知っている人なんて殆どいないだろうさ」
「じゃあ、エルフそのものを紹介してくれないか?直接聞き出す」
「エルフの知り合いなんていないよ。エルフは自分が生まれ育った場所からなかなか離れないらしいからね。おまけにこんな国境近くだ、エルフなんて一人もいないだろうね」
詰んだ。打つ手がない。
「どうしようシスティア。俺、どうして良いか分からないよ・・・」
「私だって知らないわよ」
冷たい。システィア冷たい。いつからこんな冷酷キャラになったのだろうか。前からクールではあったが、こんなに冷たくはなかった。
・・・良くないな。これから暫くシスティアの好感度上げに邁進するか・・・。嫌われたくないし。
「考えろ俺・・・!何か手があるはずだ。思いついてないだけで、何か手が・・・!」
スマホを使う。駄目だ、この世界にはマップが対応してない。そもそもとっくに電池切れてる。
勘で何とかする。駄目だ、失敗したらシスティアに嫌われそう。リスクが大き過ぎる。ちゃんと成功しそうな手段を考えないと・・・
何か無いか・・・。これまでの異世界生活の中で、俺も成長してきたんだ。何か使えそうな技を、一つくらい習得してなかったっけ・・・
「あ、そうだ。スキル使おう」
そういえばスキルがあったじゃん。今まで散々頼りにしてきた素晴らしい力が。
「スキル?アキラのスキルに、この状況で使えそうなスキルなんてあったかしら」
「ある。俺には、『逃走本能』っていうスキルがあるんだ」
スキル『逃走本能』。昔、ミールのカジノで金を稼ぐ時に使っていたスキルだ。
「『逃走本能』?スキル名を聞く限り、今使えそうなスキルだとは思えないんだけど・・・」
「いや、多分大丈夫だ。『逃走本能』は、勝負に負けそうなら事前に負けるって教えてくれるスキルなんだ」
カジノでは、コボルドレースという馬の代わりにコボルドという犬みたいなのを走らせるというギャンブルで、このコボルドに賭けたら負けるかどうかっていうのを一匹ずつ調べる事で、勝てるコボルドを探していた。
「このスキルで、どの方角に進めば負けるか、つまり間違った方角なのか調べる。負けるって出なかった方角が、キリナの故郷への方角だ」
「・・・そんな使い方出来るの?」
「出来る。多分出来る」
スキルというのは毎度の事だが、適当かつフリーダムなのだ。俺が出来るって言ったら出来る。
「よし、あっちの方角に進んだら・・・負けるな。こっちだと・・・負けるな。じゃあ、こっちは・・・負けない。つまり、正しい方角だ!」
『逃走本能』が、負けると出さなかった道を指差す。
「・・・本当にその方角で良いの?正直、信用出来ないんだけど」
「大丈夫、俺を信じてくれ」
正直俺もちょっと不安だが、これ以外に方法を思いつかない。ここでただ時間を無駄に過ごすよりも、取り敢えず行動した方がいいに決まってる。
「よし、行くぞシスティア、キリナ!ついて来い!」
キリナの故郷を目指し今、最初の一歩を踏み出したのだった。
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そして十日後。
「あ、師匠!この景色、見覚えがあります!私の村のすぐ近くですよ!」
なんかキリナの故郷に着いた。
「俺SUGEEEEEEEEEE!!」
まさか本当に着くなんて思わなかった。スキルには、無限の可能性を感じるね。
「本当に着くなんて・・・信じられない」
システィアも驚いている。俺も驚いてる。
「システィア、俺に何か言う事有るんじゃないの?」
システィアはこの十日間で、何度も本当にこの道であってるかーとか、やっぱりスキルはあてにならないんじゃないのかーとか言ってきたのだ。その謝罪を求めても良いはず。
「そうね・・・アキラ、今まで疑ってごめんなさい。謝るわ」
「良いってことよ。お互い様だろ?」
これで、システィアの好感度もだいぶ上昇したはず。やったぜ。
「早く行きましょう!私の家に招待しますから!」
キリナがウキウキで俺とシスティアを呼んでいる。
「ああ、すぐに行「キリナァァァァァ!!キリナなのか!?この気配、キリナなのか!?」くって・・・誰だアレ」
前から知らないイケメンが現れた。誰アレ。キリナを呼び捨てしてるけど。
「あ、お父さん!ただいま!」
「ああキリナ!よく帰ってきてくれた!今までどこに行っていたんだ?心配したんだぞ!」
そしてそのイケメンは、キリナに抱きついた。どうやら、キリナの父親の様だ。流石エルフ、随分と若々しい。
「えへへー、今まで大冒険をしてきたんですよ!ミールに行ってきましたから!」
「ミール!?隣の国じゃないか!なんでそんなところに!」
行ってきたっていうか拉致されたんですよね。自分の意思でミールにいた訳じゃないですよね。
「色々あったんですけど・・・とにかく、師匠とシスティアさんに着いてきました!」
そう言われて、漸くキリナの父親は、俺とシスティアの存在を認識したようだ。
「ん・・・?お前ら人間じゃないか!キリナに何をした!死ねぇ!!!!」
なんか知らんけどいきなり殴りかかってきた。
「勝利へのアツイ一撃!」
「ぐはぁ!?」
綺麗にカウンターで回し蹴りを決めてやった。流石俺。今のは自分でもなかなか良かったなと思います。一撃で気絶させてやった。
「よし、勝った!」
「いや駄目でしょうが!キリナのお父さんなのよ!?」
「あ、そうだった!ついうっかり!」
なんだか雑用係を思い出す言動だったので、雑用係に対するノリのまま蹴り飛ばしてしまった。
「師匠凄いですね!お父さん結構強いのに!」
父親が蹴り飛ばされたというのに、俺を褒め称えるキリナ。親を心配しないのだろうか。
「取り敢えず、今の内に傷を治しておくか」
俺がこれからしようと思っていることを考えると、反撃してしまったことはよろしくない。嫌われないようにしないといけないのに・・・
「この人が起きるまで待つか」
それから数十分、俺達は、キリナの父親が起きるまで待っていたのだった。正直かなり退屈だった。




