第76話 ジュライジア到着
ちょっと忙しくて、投稿が遅れました。一番の原因は、筆者がサボってたことなんですけど・・・
「漸く・・・着いたな。ジュライジアに・・・」
「そうね」
「ここまで本当に長かった・・・辛く、険しい道のりだった」
「そうね」
「だが、それでも。俺達は、遂に到達したんだ!」
「そうね」
「わーシスティアさん淡白ぅー」
そんなこんなでジュライジアに着いた。
あのよく分からん都市からここまで、色々あった。
まず都市を出ようとしたら地下都市の連中がわらわらと湧いて来たので二十秒で壊滅させたらレイシアが現れてついて来ようとしてたから「夫の帰りを健気に待ち続けられる女の子って素敵だなー」と言う事で撃退。
そして元気に出発。途中で謎の館とか幻の迷宮とか伝説の盗賊一団とかイベントが多々あったけど、大体全部力技で解決したので説明は省く。
「分かってると思うけど、またキリナが居なくなってるわよ?」
「知ってる」
キリナも、何度も何度も迷子になった。その度に走って追いかけて居たのだが・・・。俺も学習したのだ。迷子キリナの対処法を。
『索敵』で探ると、二百メートル程離れた所にキリナが居た。相変わらずふらふらと歩いている。そこで、キリナの目の前に落とし穴を創る。キリナは落ちる。這い出てくる。こちらに向かって歩いてくる。
二分後。
「師匠!ただ今戻りました!」
「うん。一番良いのは最初から居なくならない事なんだけどな」
キリナが何故居なくなるか。それは、ちょっと興味がある物を見つけると、そっちの方に歩いて行ってしまうからだ。
別にわざと迷子になっているわけではない。迷子になっちゃうのだ。ある物に意識が向くと、ふらふらと向かって行ってしまうだけなのだ。
そこで俺はどうするべきか考えた。まず最初に、常に俺とシスティアから視線を逸らさないようにと言った。目に入るから興味が湧くのだ。まず見なければ、興味が湧くものは無くなり、どこか変な所に行くこともないだろうと思った。
駄目だった。たってキリナすぐキョロキョロと周りを見渡すんだもの。落ち着きが無い。何度言っても駄目だった。
というわけで次の案。ずっとキリナと手を繋いでおく。どこかに行こうとしても、手を繋いでおけばしっかり捕まえておけるはず。
駄目だった。キリナにギュッと手を握られた時は手が潰れたかと思った。俺の痛みに対する耐性では、洗練士の馬鹿力には耐え切れなかった。マジで失神しかけた。まあ、別に手は潰れてなかったんですけどね。骨折もしてませんでしたけどね。腫れてすらいませんでしたけどね。なんともなってませんでしたけどね。
俺の痛みに対する耐性のショボさをまた改めて認識しました。
だったらシスティアと手を繋いで貰えば良いじゃない、と思うかもしれない。俺も最初はそう思いました。そしてやってもらいました。確かに、迷子にならなくはなりました。
でもね・・・三人しか居ないのに、そのうち二人が手を繋いでいて、俺が一人でいると何だか凄く距離を感じるんですよ。二人が手を繋いで仲良く歩いているのに、俺が少し離れて一人歩いているとなんか孤独に思えたんですよ。はっきり言って寂しかった。という訳で、手を繋ぐという案は無しにした。
そして更に考えたのが、迷子になるのはもはやキリナのアイデンティティだから仕方無い。だったら迷子になった後きちんと戻ってくるようにしたらどうか、という案だ。
取り敢えずキリナに、近くに俺とシスティアがいないことに気づいたら、すぐに来た道を戻るようにと六十回くらい言った。
結論、帰ってこなかった。急いで追いかけて、何で帰ってこなかったんだと聞いたところ、『え、お二人は近くに居なかったんですか?』と、言われた。
俺は気付いた。こいつ、そもそも迷子になっていることに気付いてねぇ、と。そこで俺は考えた。だったら、迷子になっていることに気付かせれば良いと。
どう気付かせれば良いかと実験した結果、落とし穴に落とせば良いという結論に辿り着くことに成功。
前もって、『落とし穴に落ちたらキリナは迷子になってるからな?来た道を戻って来い』と言っておいて、実際に迷子になった時に落として見たところ、遂に一人で帰って来させる事に成功。ちょっぴりだけ涙が出てきた。
キリナは、迷子になっていると気付かせれば、ちゃんと元居た所に戻ってくるということが証明された奇跡の瞬間だった。
ちなみに落とし穴に落とすのはちょっと可哀想なので、他に気付かせる方法は無いかと検証した結果、落とし穴が一番適切だという事も分かった。俺の罠は基本的に殺傷力が高いく怪我をあわせてしまう可能性が高い為、地雷とか糸辺りは使えない。ガスは近くに人が居たら巻き込む。弱めの火力の地雷を使ったら、まず踏み抜き爆発した事に気付かれなかった。
その後も色々試したが、落とし穴が程良い衝撃を与えられて、かつ周りの人にも迷惑をかけずに済むという結論になった。落とし穴は、創っても『罠回収』を使えばすぐ無くなるし、他の誰かが落ちて怪我をさせてしまうという事も無い。
・・・今更だけど、どんな理屈なんだろう。何で『罠回収』で穴が埋まるんだろうか。凄く不思議。まあ、例の如くスキルというのはかなり適当で自由なので、そういうことを気にしても仕方ないのだが。
「師匠!ちゃんと一人で戻って来れましたよ!褒めてください!」
「偉いぞー最初から居なくならなければもっと偉いぞー」
「えへへ、照れますね!」
何言ってんだこいつ・・・。最初の『偉いぞー』までしか聞いてなかったんだろうか。
「まあキリナはいつものことだから良いとして。システィアー両替しに行くよー」
「ああ、そういえばそうね」
「まあ場所知らないんだけどね!」
「駄目じゃないの・・・」
このジュライジアは5ヶ国の中で唯一、他の四つの国とは違う通貨が使われている。
それには面倒臭い歴史的背景が有るのだが・・・簡単に説明すると、
エンデス王国「おらお前ら!俺たちゃ世界最強最大の国だぜ?通貨は俺達と合わせろよ!」
ミール「ははー!」
アストラル「ははー!」
ソルカサス「ははー!」
ジュライジア「はあ!?テメェ散々俺達を虐めておいて、俺達がそんな事聞くとでも思ったか!ボケ!死ね!」
こんな感じである。いやマジで。システィアがそう言ってた。
俺のような唯の人間達と、ケモミミが生えてたりする人達との間には大きな壁があるんですよ。まあ、大体唯の人間が、亜人と呼ばれる方々を迫害したのが原因なんですけどね!
・・・エンデス王国マジ滅ぼす。
兎に角、今俺が持っている金を、この国で使える金に両替しなくてはならないのだ。
「なに、両替する場所が分からないなら聞けばいい。そこのおねーさん!」
「・・・はい?何ですか?」
すぐ近くを歩いていた猫耳を生やした女の子に声をかける。別に猫耳娘を選んだのは、俺がそういう趣味だからというわけではない。ここはジュライジア。ほぼ百パーセントの人が亜人と呼ばれる人達なのだ。従って、適当に選んでもケモミミを生やした女の子を選んでしまう可能性は高いのだ。俺の趣味じゃない。ランダムで選んだから。適当に声をかけたら、この可愛い猫耳娘だっただけだから。ホントだよ?
「ごめんね?僕達はこの国に来たばかりで、この国の通貨を持っていないんだ。もし良ければ、両替出来る場所を教えてくれないかな?」
久し振りに使う、イケメン(笑)モード。これで、道案内すらしてくれない女の子は居ない!
「嫌です」
そう言って、猫耳娘は早足で去っていった。・・・えっ。
「イケメン力が・・・足りなかった!?」
「そういう問題じゃないと思うわよ。周りを見てみなさい」
システィアにそう言われ、辺りを見渡すと。周りの人達が、俺達に向けてくる視線。
これはとても懐かしい、エンデスの王城で、よく浴びて居た視線。更に言うと、高校に居た時からよく浴びていた・・・
嫌悪の視線、だ。
本当はジュライジアに来るまでもっと色々書くつもりだったんですけど、別に無くても良いし、書いてても筆者の手間を増やすし完結まで時間がかかるだけなので大幅にカットしました。




