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第75話 そろそろ行くわ

筆者、今になってモブ達の方の伏線回を書いていなかったことに気づく。


でも別に無いなら無いでも話は通じるし、今更足しても不自然な気がするので伏線回は無かったことになりました。



「システィア。そろそろジュラアジアに向かおうと思うんだ」


夜中、宿の部屋でシスティアと向かい合って話をしている。


「いきなりね」


「悪いな」


この都市に来てからそれなりに時間が経ち、それなりに住民達と馴染んでいる。だが、行かなくてはならないんだ。


「俺、もうあの面倒臭い連中と関わるのは嫌なんだ」


以前潰した地下都市の秘密組織の連中、何故かまた懲りずに襲撃して来やがったのだ。殺さずに見逃しておいたのが間違っていたのかもしれない。


とにかく、一日二回のペースで襲撃されて、その度にいちいち相手してやるのはもう飽きた。何であいつら、勝てないって分からないのだろうか。毎回微妙に戦い方を変えて来てはいるのだが、俺には『範囲誘導』があるのでそもそも攻撃が当たらない。何故かあのロボット・・・ではなくサイボーグには効かなかったが、それ以外に対しては絶対的な効力を示している。いい加減大人しく諦めて欲しい。どうせ勝てないから。


「面倒臭い連中って、地下都市の奴ら?」


「ああ」


「そいつら、私の所にも来たわよ」


「えっ、殺したの?」


何て酷いことを・・・


「殺してないから。ちゃんと見逃してあげたから」


「全治何週間?」


「三週間くらいじゃないかしら」


「Oh・・・」


重傷じゃないか。この世界にはHPというものがある。減らされた分だけ治癒魔法を使えば、大体の傷は治る。治らないのは粉砕骨折とか、手足欠損とか、そのレベルの怪我ぐらいだ。全治三週間だと・・・少なくとも、骨の二十本や三十本はやってるな。


「システィア。前々から思っていたけど、貴女かなり容赦ないですよね」


「何言ってるのよ。向こうは殺しに来てるのよ?この位やらなきゃ駄目でしょう」


「まあ、そうなんだけど・・・」


この世界物騒だからな・・・。裏道とか歩いていると、一時間に一回は何らかの犯罪行為を目撃するし・・・。この世界基準で考えると、システィアは割と優しい方だ。だが、平和な日本に住んでいた俺基準で考えると、システィアは結構ヤバい奴である。


「取り敢えず、これが今すぐ此処から出て行きたい理由の一つ目だ」


「一つ目って事は、まだあるのね?」


「ああ。で、二つ目の理由は、辺な奴らが居たからだ」


「辺な奴ら?そんなの何処にでも沢山いるじゃない」


そだね。下半身丸出しの奴とか上着とズボンを逆に着ている奴とかブリッジしながら歩いている奴とか剣を振り回しながら歩いている奴とかそういうのは幾らでもいるけど、今回は違う。


「今回のは特別だ。何とびっくり、エンデス王国の奴らが居たんだ」


「エンデス王国?そんなの、探せば何人かは居ると思うけど?」


「確かにそうだな。だけどそいつらは、俺やシスティアを監視していたみたいなんだよね」


「・・・監視?」


「ああ」


俺が把握している限りでは二十二人。かなりの数だ。


「どういう目的なのかしら」


「それが分からないんだよ。適当に地雷で足飛ばした後、そいつら一人一人尋問しようとしたら全員死んじゃったんだ」


「・・・殺したの?」


「殺してねーよ、自殺だよ自殺。連中、口の中に毒を仕込んでいたみたいなんだ」


折角アイテムボックスから『何故か本当の事を喋りたくなっちゃうお薬(主に痛みにより)』を取り出して楽しい楽しい尋問を行っていたのに、途中で死んでしまったのだ。何だか間接的に俺が殺した気がしないでもないが、俺が直接手にかけたわけではセーフ。死ねって命令したわけでもないからセフセフ。お薬の使用中に「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛殺してくれぇぇぇぇぇぇぇ!!?」とか言ってたけど、俺が殺したんじゃない。あいつらが勝手に死んだんだ。


「そう・・・でも、想像はつくでしょ?」


「ああ。どうせあのアホ国王の手先だろ」


俺とシスティアがエンデスの王城を出る時、俺に暗殺者を差し向けてきたのは忘れてはいけない。王城から出た後も、何人か暗殺者が追いかけていた。ミールに走って向かっているうちに付いてこれなくなっていたけど。


「わざわざ他の国まで殺しにくるのは大した根性だが、わざわざそれに付き合ってられない。次の追手が来るまでにジュライジアに行きたいんだ。これが二つ目の理由」


「まだ何か理由があるの?」


「ああ、これが三つ目にして、俺が早くここから出ていきたい最大の理由だ」


「何?」


「レイシアが怖いから早く逃げたい」


「レイシアって・・・。ああ、前に地下都市の連中から助けたっていう子?」


「ああ」


システィアの言う通り、悪の秘密結社に囚われていたので暇潰しで助けた十四歳の女の子である。


なんで囚われていたのかと言うと、何でもレイシアには不思議な力があって、それが世界征服に役立つとかどうとか言ってたけど・・・。その辺ウザくて聞き流してたから良く分かんね。


まあとにかく、レイシアという女の子を助けた訳だが・・・


「あの()さぁ・・・退院したら何故かずっと俺を追い回してくるんだよ!俺が向かう所何処にでも現れるんだよ!怖いんだよ!」


助けた当初は体力的に消耗していたので、外傷は特に無かったが念の為入院させていたのだ。幸いすぐに退院し、もう囚われることもなく自由な生活を謳歌しているのだが・・・


「本当に何処にでも現れるんだぞ!?散歩してても道具屋に行っても悪い奴らを殴りに行っても闇雲に走って逃げていても!何処にでも現れるんだ!その度に言うんだ、『あ、アキラさん奇遇ですね。また会っちゃいました・・・。これは運命ですね。もう結婚するしか・・・』ってな!トイレで会って運命とか嫌だわ!」


初めて出会った時は儚げで可愛い子だったのに・・・。どうしてこんなことになってしまったのだろうか。


「別に良いじゃない。好かれてるんだから」


「俺だって、好かれて嫌な気はしないさ。だけど、行動に問題があるんだよ!」


そんなストーキングする様な人とは仲良く出来ません。


「アキラ、桐生さんはどうなのよ」


「え、何でここで雪菜が出てくるんだよ」


「良いから、桐生さんは良いの?」


何で雪菜?関係無くない?


「システィアが何の話をしているのかよく分からないが・・・俺、雪菜だったら何されても良いと思ってるぞ?」


「そう・・・じゃあ良いわよ」


「おかしなシスティアだな・・・」


偶によく分からない話をするからなシスティアは。気にしても仕方ないか。


「取り敢えず、これが俺が早くジュライジアに行きたい理由だ。分かってくれた?」


「分かったわ。じゃあ、明日すぐにでもジュライジアに向かいましょう」


「え、良いの?」


かなり急な提案だったし、少し待って欲しいとか言われると思っていたんだが。


「ええ、構わないわよ」


「そう?仲良くなった人と、別れの挨拶をする時間くらいは待つぞ?」


「アキラ・・・そんな別れを惜しむ相手は居ないから」


「あっ」


忘れていた・・・。システィア、ぼっち属性持ちだった・・・


「ごめんシスティア・・・気が利かなくて」


「いや、別に気にしてないから」


そう言えばシスティア、エンデスの王城では俺しかまともに話せる相手居なかったな・・・


「システィア、俺しか仲良い相手居ないもんな・・・」


「待って、キリナが居るから」


「他には?」


「えっと・・・フィアとユイス」


「俺含めて四人だけか・・・」


今はフィアとユイスさんは居ないし、今現在仲良く話せる相手は二人だけ・・・か。


「システィア。今度モブと雪菜と会ったら、仲良くするように話しておくよ」


二人共良い人だし、システィアとも仲良くしてくれるだろう。


「待って、私が友達の少ない寂しい人みたいな扱いをするのは止めて」


「だって事実そうじゃん」


俺でももっと友達居るぞ。モブとか雪菜とか。あとはギリ雑用係も入るかな?


「確かにそうかもしれないけれど・・・」


『かも』じゃないから『そう』だから。


「私は沢山の友達を作る事よりも、今近くにいる人ともっと深い関係を築きたいから」


・・・ふむ。


「システィア、それを俺に言って恥ずかしくないのか?」


遠回しに、俺ともっと仲良くなりたいと言っている気がするんだが。


「えっ?・・・あっ」


システィアの顔が羞恥に染まる。珍しい。


「・・・今のは忘れて」


「・・・ああ」


絶対忘れない。もっと仲良くかー。正直、今でも俺とシスティアは滅茶苦茶仲良いと思うけどなー。こうして今、宿で同じ部屋で寝ているくらいには。


最初にこの宿に来た時、空いている部屋が一つしかなかったので仕方無く三人同じ部屋で寝たのだ。その次の日には何部屋か空いたけど、キリナが『えー、みんな一緒に寝ましょうよー。そっちの方が楽しいじゃないですか!』と言ったので、その後も三人同じ部屋の同じベッドで川の字になって眠っている。あ、念の為だけど、別に何もしてないよ?俺、ジェントルマンだから。


そんな訳で、俺とシスティアは仲が良いと思う。これ以上仲良くするとなると・・・どうすれば良いの?それこそ結婚するしか無くない?


「システィア。俺も、多分キリナもシスティアの事は好きだからな。安心してくれ」


「忘れる気無いじゃないの・・・!別にアキラだけに言ったわけじゃないから。そこは勘違いしないでね?」


「はいはいツンデレツンデレ。システィアちゃんかわいーよー!」


顔を赤く染めるシスティア。今押し倒したら、どうなるんだろう・・・。腹を蹴られて俺が悶絶するだけだな。冗談でも止めとこ。


「・・・今考えたら、孤児院には仲が良い人が沢山居たから。アキラだけじゃないから。他にも仲が良い人は沢山居るのよ」


「システィア孤児院でぼっちだったって言ってたじゃん。俺は忘れてないからな?」


「何でそんな事ばかり覚えているのよ・・・」


だいぶ前に聞いた話だが、システィアは幼い頃孤児院に居たらしい。孤児院って何となくみんな仲良しのイメージがあるけど、システィアはずっと一人で居たらしい。流石システィアさんだぜ!


「俺、システィアの事は全部忘れないで覚えているからな」


些細な会話でも、しっかり覚えている。


「アキラが壊した私のペンダント。覚えてる?」


「何それ知らね」


システィアが白い目を向けてくる。仕方ないじゃん。別に壊そうと思って壊したわけじゃないし・・・。訓練中につけている方にも問題があると思うんですよ。


「まあ、そこまで大事な物じゃなかったから良いけど・・・」


「あ、そう?なら良いじゃん」


「覚えてるじゃないの・・・」


「あっ、おのれ謀ったなシスティア!誘導尋問は卑怯だぞ!」


「は?」


「あ、いや・・・ごめんなさい・・・」


こえー!システィアさん怖いよー!


「全く・・・そろそろ寝ましょう。もう夜も遅いしね」


「そうだな。寝るか」


ちなみにキリナはとっくに眠っている。結構騒いだのに、起きないキリナは凄いなと思いました。


キリナを中央にして、三人並んで寝る。ただ寝ているだけだが、意外と良いものである。


「おやすみ、システィア」


「ええ、おやすみ」


明かりを消し。目を瞑る。そうすると、隣のキリナが寝言を言った。


「えへへ・・・皆殺しですよー・・・」


何この子こわっ!?

3話前の最後に出てきた奴等。全滅しました。本当はもっと後に始末するつもりだったんですけど、別にこいつら何もしないし、いつ死んでもストーリーには全く関係無いし、居ても筆者の手間を増やすだけなので全員死んでもらいました。


彼等のファンの皆さん、ごめんなさい!

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