第6話 メイドさんの講義
説明回です
「じゃあ、ステータスについての説明をするわね」
この世界に来てから一晩たった今日。俺はシスティアから講義を受けていた。他の奴らは優秀な教師から教わっているらしいが、俺はハブられた。陰湿なイジメだ訴えてやりたい。
「俺としてはまず、この世界について説明して欲しいんだけど。地理とか通貨とか」
この世界で生きていくなら、まずそれを知るべきだろう。
「そう?じゃあ教えるわね」
システィアが、ポケットから硬貨を何枚か取り出す。
「まず、通貨からね。通貨名はパルと言って、右から石貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨って言うの」
一つずつ示しながら説明してくる。
「あと、持ってないけど貴族貨と王貨というのもあるわ」
どんだけ見栄を張りたいんだよ国王共。貨幣に自分達のことを入れるとか。
「石貨が1パル、鉄貨が10パル、銅貨が100パル、銀貨が1000パル、金貨が10000パル、白金貨が100000パル、貴族貨が10,000,000パルで、王貨が100,000,000パルね」
貨幣に自分たちのことを入れている辺りから、貴族共が見栄を張りたいのがよく分かります。
「ちなみだけど、石貨から白金貨までが平民が使う下等貨幣、貴族貨と王貨が、高貴なる者が使う高等貨幣と呼ばれてるわ」
そこまで行ったら流石に引くわ。どんだけ自分たち偉いアピールしたいんだよ。
「物価はどんな感じなんだ?」
「どんな感じと言われてもね・・・一般の四人家族が一ヶ月過ごすのに必要なお金が40万パルくらいと言えば分かる?」
「この世界の生活水準が分からないから、よく分からん」
「そうよね・・・」
うーん。これは実際に外に出て色々見なきゃ分かんないかな?
「そこらの料理店で一食700パル弱位なんだけど・・・」
「なるほど。よく分かった」
「いや、なんでこれで分かるのよ」
勘だけど?まあ、物価は日本とそう差はないのかな?1パル=1円って感じで。
「まあいいわ。次は地理についてね」
システィアが紙とペンを出す。
「この世界には一つの大陸があって、そこに5つの国があるわ」
紙になにやら書き込んでいく。というか国少ないな。我が世界には二百近くあるのに。
「この国は大陸の西にあって、エンデス王国と言うわ」
へー。
「5つの国の中で最も広大で力のある国ね。そして最も亜人差別が酷い国でもある」
「亜人って?」
「エルフや獣人などの人間に近い容姿を持つ種族ね」
なるほど。まあ所謂ファンタジーの定番だな。それにしても亜人差別とか・・・。いつかこの国滅びないかなぁ。
「南にあるのがダンジョン国家ソルカサス。この国には王が居らず、地方自治を行っているわ。名前の通りダンジョンが多く、冒険者が多いから魔石の輸出で成り立っている国ね」
「知らない単語が沢山あったんだけど」
ダンジョンとか冒険者とか魔石とか。
「ダンジョンと言うのは、要は魔物がいっぱいいる迷宮の事よ」
「魔物って何?」
「魔物は、魔石を身体の中に持つ生き物のことね。動物みたいなのや、スライムとかゴーレムとかいっぱい種類があるわ」
「魔石って何?」
「色々な機械を動かすためのエネルギーである石のことよ」
「冒険者って何?」
「冒険者は、冒険者ギルドに加盟した人たちのことね。依頼を受けたり、ダンジョンで魔石を取りに行ったりするわ」
「冒険者ギルドって何?」
「依頼を仲介したり、魔石の買収をする組織のことね」
なんか全部予想通りだな。面白みに欠ける。
「次は東にある亜人国家ジュライジアについて。獣王と呼ばれる亜人が国王をやっているわ。この国とは仲が悪いわね」
だろうな。この国亜人差別酷いらしいし。
「北にあるのが神聖国家アストラル。国民は皆ファンタジアという神を信仰していて、司祭たちが権力を握っているわ」
宗教国家ってことか。というか神の名前、随分ファンタジー感あるな。
「中央にあるのがミール国。この国について特に言うことはないわ」
「なんでミール国には説明が無いんだ?」
「差別がある訳でも力がある訳でも宗教を信じてる訳でもなく、極めて普通な国だからよ」
つまり個性のない国か。
「じゃあ次はステータスについてね」
よし、ついにか。
「でもちょっと待ってくれる?ちょっと行ってきたい場所があるから」
「は?どこに行くつもりだよ」
このタイミングで行くことないだろ。折角少しずつ集中して来たのに、ここで切らされるなんて。、
「その・・・お花を摘みに」
「ごめんなさいどうぞ行ってきてください」
聞かなきゃ良かったです。こういう時男はどんな反応をすれば良いんだろうね。俺には人生経験が足りな過ぎて分からんぜ・・・