表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/80

第25話 トラウマって治るのだろうか

「う、なんだ・・・?」


「ん、目が覚めたか」


チンピラ共を縛り上げた30分後、ようやく連中のボスが目を覚ました。ちなみに、チンピラ連中を叩きのめした部屋とは違う場所に移動していて、今は俺とボスの二人きりだ。一応椅子に縛り付けて座らせているが。


「お、お前は!」


「黙れ」


「がっ!?」


騒いだので殴りつけておく。交渉するときは最初が肝心だと思うんだよな。最初にビビらせておくと従順になる気がするし。


ボスだけをこの部屋に連れて来た理由は、まあ簡単に言うと仲間が周りにいる状況じゃなくさせるためだ。仲間がいると強気になるからな、人は。それだと交渉しずらい。


「・・・俺達をどうするつもりだ」


「別にどうするつもりも無いさ。ただ一つ頼みがあってな」


「頼みだと?」


ボスが怪訝そうにする。


「ああ、でも一応聞いておきたいんだが・・・。俺を襲撃してきたのは何故だ?」


「・・・お前がカジノで7000万パルも持っていったせいで、俺たちは大損害だった。だから、それを返してもらうために、仕方なくやっただけだ」


返してもらうとかそんな穏便なやり方じゃなかったよな?剣とか持ってきたよな?斬りかかってきたよな?どう考えても返してもらう、じゃなくて奪い返すだよな?まあ良い。なら遠慮はいらないな。


「お前ら全員、俺の手下になれ」


大物オーラを放ちながら言う。このオーラを放つと、相手が萎縮し、言う事を聞きやすくなる。超便利。


「はっ、断る」


鼻で笑われた挙句断られた。海に沈めたくなってきたが、我慢我慢。


「じゃあ、お前ら全員ここで殺すか」


「なっ!?」


おお、驚いてる。まあ、実際はそんな事しないけど。平和な日本・・・いや、大多数の人にとっては平和な日本に住んでいた俺に殺人ってのはハードルが高い。一部嫌いな奴は容赦なく殺れるが。死ね白河。


「・・・何が目的だ」


「いや、お前らには俺の大いなる野望を果たすのに協力してもらいたくてな」


「野望?一体何なんだ?」


えー、それ聞いちゃう?教えるの恥ずかしいなあ。


「それを言うには、まだ時期では無い・・・」


大物オーラ3桁割増しで言う。頼む!これ以上聞かないでくれ・・・!なんか言うの恥ずかしいんだ・・・!


「・・・なら良い」


大物オーラ最強。マジで最強。今度言いたくない事出来たら大物オーラ使おう。


「お前に目的が有るのは分かった、だが何故俺たちが協力しなくちゃいけないんだ?」


「は?お前らは俺に負けたんだぞ?なら俺に従えよ。それともなんだ?死にたいのかお前ら」


殺気を剥き出しにする。殺気の出し方はシスティアに教えてもらった。実際にシスティアから殺気を浴びせられたりしたが、あの時はマジでチビるかと思った。いや、ホントに。


「ぐっ・・・。だが、俺たちにもやらなきゃいけないことが・・・」


「やらなきゃいけないこと?なんだそれ」


お前らみたいなチンピラにも目的ってあるんだな。びっくりした。


「俺たちは、なんとしてでもこの国を手に入れなきゃいけないんだ・・・!」


・・・うわ、なんかいきなり壮大な話になってきた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「まずミールは、大まかに五つの地区に分かれている。東西南北、そして中央だ」


ボスがなんか語り始めた。聞かなきゃ駄目かな。駄目か。


「んで、此処は西地区だ。俺たちがここを締めている」


締めているって、さらりと凄いこと言ってる気がする。


「ここからが問題なんだが・・・。ミールには3つのグループがあってな、まず、さっきも言ったが、この西地区を俺たちが締めている」


へー。


「んで、北地区を『ユナイテッド』の連中が締めている」


ふーん。


「そして・・・。東地区と南地区を『ブレイカー』が締めている」


あらやだ物騒な組織名だこと。地区二つもゲットしてるし。


「この3つのグループが、中央地区を獲るために、日々戦っている」


どうしよう日々戦ってる連中40人以上ボコボコにしちゃったよ。まあ良いか。ボコボコになってても戦えるだろ。根性かなんかで頑張れ。


「中央地区を獲ったらどうなるんだ?」


素朴な疑問。


「中央地区は、この国で最も貿易などの商売が盛んな地区で、あらゆる流通の中心となっている中央地区を獲れば、他の地区にも多大な影響力を持つことができる。だから俺たちは中央地区を手に入れたいんだ」


なるほどね。


「それで、この国を手に入れて、一体何をするんだ?」


そう言うと、ボスは何かを堪えるような顔をした。え、もしかして聞いちゃ駄目なことだった?どうしよう、謝れば良いのかな・・・


「俺は、妹を取り返したいんだ・・・!」


あ、聞かなかった方が良かった。面倒なことになる気がする。


「そもそも、俺を含めたシャイニングのメンバーは、昔はただの商人やその子供で、今みたいにギャングなんてやっていなかった」


なんかまた語り始めた。長くなりそうだな・・・。よし、聞き流す方針で行こう。


「だがある日、それはブレイカーの奴らのせいで滅茶苦茶になったんだ・・・!」


なんで俺、こんなむさい奴らと一緒に居るんだろう・・・。雪菜に会いたいなー。あの笑顔を見て癒されたい・・・。あ、モブ・・・は煩いしいいや、会わなくて。


「奴らは、卑怯な手で俺たちの店に多額の借金をさせ、破産させ、金が払えなくなったら今度は妹を売れと言ってきた!ふざけんな!テメェら如きに俺の可愛いフィアをやるか!なのに強引に奪いやがって!死ね!マジで死ね!俺のフィアを返せぇぇぇぇぇ!!奴隷にするとかマジで死ねぇぇぇぇぇ!!」


なんかいきなり叫び出した。怖い。叫んできたせいで内容頭に入ってきてしまったじゃないか。取り敢えず言いたいことは、お前、途中から完全に私情だけ言ってたよね?ってとこかな。


「・・・すまん、熱くなった」


「あ、うん」


「とにかく、俺の妹は今中央地区に奴隷としている。本当なら奴隷に堕とされた者を奪い返すことなんて不可能だが、中央地区を支配すれば話は別だ。他の連中も、大体ブレイカーの連中に奴隷にされた家族や恋人を取り戻したい、ってのがギャングをやり、中央地区を獲りたい理由だな」


予想外に立派な目的を持っていたことに驚愕を禁じ得ない。目的も無くただの遊び呆けてる頭の緩い奴らだと思っててごめんなさい。


すると突然、少し離れた所から騒がしい声が聞こえた。


「よし、やっと来たか・・・」


「ん?」


ボスがいきなりニヤリと笑った。キモい。


「おい、なんで俺がこんな事をわざわざ説明してやっていたと思う?」


「知らん。興味も無い」


「・・・まあいい。話は変わるがお前、随分綺麗な連れがいるみたいじゃないか」


「いるけど、それがどうかしたか?」


こいつのニヤつき具合がかなりムカつく。殴って良いかな・・・


「そんな綺麗な女、一人にしておいていいのか?もしかしたら、どっかのギャングが拉致しに行ったかもしれないなぁ・・・」


ん?こいつ何言ってーーってまさか!もしかしてこいつ!


「おいお前!もしかしてシスティアを!」


「そうだ!お前とやりあう前に、俺の部下にその女を連れて来るよう言っておいたんだよ!あくまで念のためだったが・・・やっておいて良かったぜ・・・」


な・・・こいつ、何てことを・・・。システィアを襲うだと?そんなことしたら、そんなことしたら!


「よし、入ってこい!これで形成逆転だ!」


部屋に誰かが入ってくる、そいつはーーー


「あ、アキラ。やっぱりいたの」


「え」


・・・返り血まみれのシスティアさんだった。ああ、やっぱり。システィアを襲うなんて・・・馬鹿な事を。


「お、俺の部下はどうした!」


「あなたの部下?私を襲って来た奴らなら、あっちに転がっているけど?」


「はぁ!?どういうことだ!」


「どういうことって・・・。普通に私が倒したんだけど。流石に10人も背負うのは大変だったわ」


「はぁ!?」


ボス、驚いております。はぁはぁ煩いです。興奮しているのでしょうか。というかシスティア、怖い・・・。訓練の時ボコボコにされたトラウマが・・・


「お前みたいな女が、俺の部下を倒せるわけないだろ!」


「性別で判断するのはどうかと思うけど?」


確かにこの世界、大事なのは性別じゃなくて天職とレベルですよね。


「アキラ」


「ひっ、な、なんでしょうかシスティアさん?」


「後でアキラにも話があるから」


・・・突然だが、システィアについて話をしよう。システィアはいい奴だ。優しいし細かいところにも気が回るし、料理や洗濯など家事の技術も一流と言っていい。その上美人でスタイルもいい。嫁にするなら最高の女と言っていいと俺は思う。


だが、システィアは、戦闘面において一切の容赦がないのだ。ホントに容赦ない。俺もシスティアから剣の訓練を受けていた時何度殺されると思ったか・・・。いや、殺されてないし、骨だって折られてないが。それでも、剣を持ったシスティアがトラウマの対象になってしまった。


盗賊連中と戦った時は、躊躇わず全員血祭りにした事があったくらいだ。別にシスティアと戦っているわけじゃない俺がビビるレベルだった。


まあそんな感じで、普段は優しくて素敵なシスティアだが、戦闘となると一切の情け容赦がない。別人なんじゃないかと思うレベル。以前システィアに、なんで戦闘になるとそんなに性格が変わるの?って聞いた事があるが、その時システィアは、戦う時は自分の中でモードを切り替えている、と言っていた。切り替えすぎじゃないかと思う。


まあとにかく、戦闘モードのシスティアは俺にとってトラウマの対象というわけだ。


そして今、システィアは完全に戦闘モードであり、おまけに返り血がべっとり付いている。


そんなシスティアに対し俺は、


「は、はいっ!分かりました!ですが優しくしてください!殺さないでくださいっ!?」


・・・完全にビビっていた。仕方ないじゃん。システィア怖いもの・・・


「何言ってるのよアキラ・・・。まあいいわ。そこに居なさい」


そう言うと、システィアはボスを縛り付けている縄を剣で切った。せっかく俺が縛ったのに・・・


「・・・どういうつもりだ?」


「私、身動きの取れない人をいたぶる趣味は無いのよ。さあ、この剣を持ちなさい。叩き潰してあげるわ」



システィアがボスにそこらで拾ったと思われる剣を投げ渡す。


なるほど。折角戦闘モードになっているのに戦えないのは嫌だから、相手を戦える状態にしてから完膚なきまでに叩き潰すというわけですね。分かります。


「くっ・・・。お前がいくら強かろうと!簡単に勝てると思ってんじゃねぇぞ女ァァァ!!」


システィアとボスの剣がぶつかり合う。勝負は割と早く決した。大体10秒くらい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ