第16話 亡命途中
「で、結局どこの国に行くの?」
走り始めて数分後、システィアにそう聞かれた。
「ミール国に行こうと思う」
「ミール国?なんで?」
は?なんでだと?
「システィア!お前最初ミール国は何も無いって言ってたけど、全然そんなこと無いだろ!」
「は?ミールってなにかあった?」
こいつ・・・。凄く大事なものがあるじゃないか。
「ミールって最大の娯楽国だろ!」
そう、ミールにはカジノなど、多種多様な娯楽がある。それを言わないとは・・・。
「いや、勇者には関係ないでしょう?」
「いやいや、寧ろ魔王よりも重要だ!」
それどころか魔王なんざどうでもいい。
「・・・アキラってそういう人だったわね」
忘れてたのかシスティア。
「まあいい。そんな訳で行くぞミールに」
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そんな感じで走り続けて一時間後。なんか平原ばっかだなぁ。
「ん、あれは・・・」
1800メートル程先で、女性2人が盗賊っぽい連中に襲われていた。あっ、やられそう。
「どうかしたの?」
「ん?システィアには見えないのか?」
ステータスのDEXの違いか?これで視力に違いが出るんだよな。
「なんか見えたの?」
「女性二人盗賊に襲撃されてる。劣勢」
「な!?助けないと!」
システィアが急いで走っていく。いやいや、
「ちょっと待て」
「な!?」
落とし穴を創りシスティアを止める。それにしてもシスティアの悲鳴全然可愛くないな。
「何するのよ!」
「それは俺のセリフだ。なに助けに行こうとしてんだよ」
面倒なことになるだろ。
「助けないつもり!?」
「誰もそんなこと言ってない」
盗賊たちを『見えない麻痺糸』で仕留める。1800メートル先ぐらい余裕で俺の射程?距離内だ。
「よし勝った」
おー、女性二人驚いている。
「・・・なにをしたの?」
「罠で仕留めた」
システィアも驚いている。
「そんな遠くまで仕掛けられるの?」
「俺の知覚してる範囲内ならどこでも仕掛けられる」
『索敵』使えば半径5キロ以内全て知覚出来るけどな。
「・・・凄いわね」
「でしょ?」
俺もそう思う。
「じゃあ迂回するぞ〜。あの二人と関わりたくないし」
「なんでそんなに関わりたくないの?」
面倒だから。そんなことしてまでフラグ立てたくない。
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「それにしても全然魔物が出てこないわね」
システィアがそんな事を言った。
「俺が殺してるからな」
罠で。敵の目の前に地雷仕掛けるだけの簡単な作業!『索敵』と『遠距離設置』マジ最高。
「そういうことね」
この一言で納得するシスティアさんも凄いと思います。
「つか走るの疲れたなあ。瞬間移動しよっかなあ・・・」
「え、なにそれ。そんなこと出来るの?」
「うん」
やりたくないけど。
「じゃあ最初っからやればよかったじゃない!なんで走ってるのよ!」
いや、だって、
「失敗したら死ぬかもしれないし・・・」
「えっ」
システィアが驚く。
「それどういうこと?」
「言った通り。失敗したら死ぬかもしれない。まあそもそも自分だけしか移動できないんだよね」
「じゃあなんで瞬間移動しようなんて言ったのよ」
「走るの疲れたから」
「だから馬を使えばよかったのに・・・」
「だって走った方が速いし・・・。あ、そうだ!システィア置いて俺だけ瞬間移動すれば良いんだ!」
俺頭良い!よし、やるか!
「待ちなさい」
システィアに止められた。なんで?
「私はどうするのよ」
「・・・・・・ガンバ!」
「それはないでしょう!?」
「大丈夫!システィアならイケるって!」
皆大好きシスティアさんだもの。きっとなんとかなる!
「自分が連れてきておいてそれは酷いわよ!」
「チッ、しゃーねーなー。ちゃんと走ってやんよ」
「なんで私が悪いみたいになってるのよ・・・」
「それが運命だからだ(キリッ)」
「ええ・・・。なんでこんなのと一緒に来ちゃったんだろう・・・」
「酷いなシスティア。俺悲しい」
こんなのって酷くない?俺だって傷つくことがあるんですよ?
「私の方が悲しいわよ!」
煩いなあ。俺の鼓膜がマジでヤバイ。
「まあ、諦めろ。仕方ないって」
「うう、なんで私がこんな目に・・・」
そんなの知らん。
「まあそろそろ走るの止めて野宿するか」
気が付けばもう夜だ。『アイテムボックス』からテントを取り出す。
「・・・あれ?そういえば私たちって二人きり?」
「あ、気付いた?そうだよ、2人きり。若い男女がふ・た・り・き・り❤️」
そう言うと、システィアが震えだした。
「そんな・・・私の純潔が・・・」
「いや、お前何想像してんだよ」
「なんで私を連れて行くのかと思ったら、そう言うことだったのね・・・」
「いやいや、お前の想像間違ってるから」
何言ってんのこいつ。・・・まあそう思わせたのは俺だけどさ。
「だってそういうことでしょう?」
「違う違う。俺にそんなつもりはない。俺は紳士だぞ?」
いやマジで。英国行っても誇れるレベル。
「・・・そう言うなら信用してあげる。でもホントに止めてよね?そうなったら殺すから」
俺がその気になったらシスティアにはどうしようもないけどな。
「大丈夫だって」
そう言ってテントをもう一つ出す。元々テントは1つじゃない、10個くらいある。こんなに要らないけど。
「見張り番はどうするの?」
「罠仕掛けるから大丈夫だ」
そう言って周辺一帯に罠を仕掛ける。よし、これでいいだろう。これを突破する奴はいないだろ。居たらヤバイ。
「じゃあ寝るか」
そう言ってテントの中に入る。眠い・・・
「ちょっと!寝るの早くない!?ご飯は!?」
「俺はもう食った」
「いつの間に!?私は!?」
「そんなの知らん。俺は寝る・・・」
その後もシスティアがなんか言っていたが、気にせず寝た。




