第1話 プロローグ
処女作なので文の構成等おかしいかもしれません
「貴様は何者だ?」
そう尋ねるのは、一匹の巨龍。全長は20メートルを超え、圧倒的な風格を持ったその地方の支配者だった。
「・・・・・・」
それに対峙するのは、一人の少年。身長は170センチ台後半で、この世界では珍い黒髪黒目を持っていた。
「答えない、か」
龍は疑問に思う。自分は生物の中でも最高峰の実力を持った強者であり、こんな一人の少年が戦うような相手では無いからだ。
が、驚くことはそれだけでは無い。この少年、何故か何の武器も持っていないのだ。さらに、武器だけでなく防具も着けてない。そこらの一般人が着るような服を着ている。
だがしかし。龍は決して油断しない。何故なら、命のやり取りをする中で、油断というのはなによりもしてはならぬことである。例え相手が、手を軽く振っただけで死んでしまいそうだったとしてもだ。
自分の自慢の牙で、相手を咬み殺そうと足を一歩踏み出したとき、
地面が突然爆発して足が吹き飛び更には全身が強烈に麻痺し何故か爆弾が雨あられと降って来てしかもその爆弾の破片が硬い自分の鱗にサクサクと刺さりそこから信じられないような激痛が走り何本ものロープが自分を完全に縛り上げた。
「グギャァァァァァ!?」
何だこれは!?!何故こんなことになっている!?
ロープを解くために暴れようとするが、身動きとれなかった。
それを見て少年は笑顔になり、
「いやー、やぁっと掛かってくれたか」
と、言った。
「こ、これは貴様がやったのか?」
龍は尋ねる。そうすると少年は更に笑顔になり、
「そうだよ。いやー、お前罠に掛かるの遅すぎ。待つの面倒だったぞ?」
と言う。
「ま、待て。いくら何でもあり得ない。私を一瞬で倒すなど」
そう、これはおかしい。自分は絶対的な強者であり、こんな訳の分からないうちに倒されるなどあり得ない。
「いやいや、今実際にやったじゃん。お前馬鹿か?麻痺が強すぎたか?そこまで強くしてないはずなんだけどな・・・」
少年は龍に話していたが、独り言にシフトした。
「ま、いっか。殺せれば一緒だしな」
少年は何も無い空間から剣を出し、それを自分に向ける。龍は自分の最期を悟った。
「さ、最期に聞かせてくれ。貴様は一体何者だ?」
「俺が誰か?それはな」
少年は笑って言った。
「教えるわけ無いだろ?プライバシーだし」
「はあぁぁぁぁぁぁ!?」
断末魔?を叫び、龍は息絶えた。
「よし、大金ゲット!今日は宴だ!俺酒飲めないけど!」
少年は楽しげに龍の死体を魔法『アイテムボックス』で、亜空間に仕舞う。
「ん、そういえば」
少年は思い出す。
「今日でちょうど一年か?この世界に来てから」
ーーーーーーーーーーーーーーー
「あーーーだりーー」
無駄に暑い7月に、俺、水瀬明高校2年生は、怨嗟の声を発していた。
「もうあれだな。学校爆破すればいいな。そうすれば学校休みだ」
そんな感じで色々独り言を言っていると、
「何物騒な事言ってんだよ」
と話しかけられた。この話しかけてきたモブ顔の男はーー
「・・・あれ?お前の名前なんだっけ?」
「佐藤拓郎だよ!いちいち忘れんなこのバカ!」
あ、そうだった。そういえばそんな名前だった気がしないでもない。
「悪い。あまりにもお前がモブいから忘れてた」
「モブいって何!?失礼だろ!」
えー。だってコイツ、凄いモブなんだぞ?顔はそこら辺にいそうな感じだし、成績は真ん中辺りで、運動能力は種目によってばらつきはあるものの、総合すれば平均的という、神がかったレベルでのモブなんだぞ?
「あー煩い煩い。頼むからどっか行けよモブ」
「お前失礼過ぎるだろ!親しき中にも礼儀ありって知らないのか!」
「俺とお前そこまで親しくないだろ」
「だったらなおさら気を遣えよ!」
あー煩い。こんな暑い中騒ぐとか馬鹿なのかな?馬鹿なんだろうな・・・
「で、なんか用かモブ」
「お前なあ・・・!・・・はあ。なんかもう良いや」
諦めたように溜め息をつくモブ。何を諦めたんだろう。今年中に彼女。作る事をかな?
「もうすぐ球技大会があるだろ?その作戦会議があるから、ちょっと来てくれ」
何それ俺知らな・・・あ、
「そういえばそんなのあったな。今年も楽しめるかなあ」
と言った瞬間、クラス中の女子が俺を睨みつけてきた。恐っ。
「お、おいアキラ。下手な事言うなって。お前は去年やらかしてるだから」
「いや、俺は何もしてないだろ。俺はただサッカーしただけだぞ?」
更に睨みつけてきた。
「おい!マジで止めろって!」
モブが小声で叫んできた。
「んー。俺のスーパーテクニックのどこがダメだったんだろうか」
これでもかというくらい睨んできた。
「お前わざとやってるだろ!」
「煩い」
この至近距離で叫んでくるとは。俺の鼓膜を破りにきてるな絶対。
「懐かしいな。俺の機転で逆転したんだよな」
「機転でも卑怯なことだろうが・・・」
去年のサッカーの試合の決勝戦で俺達のクラスは、一年にしてサッカー部でレギュラーとなったイケメン二人を擁するクラスと戦った。
しかし、後半になり一点差で負けていたのだが、そこで俺がフェイクとかを駆使して頑張ってイケメンサッカー部2人の動きを誘導し、イケメン二人を衝突させ怪我させ退場させて、そこから一気に逆転したのだ。おかげで女子生徒から凄く嫌われたけど。
ちなみにその怪我のせいでイケメン二人はサッカーの公式戦にも出ることが出来ずこの学校は負け、サッカー部の顧問にも嫌われる事となった。気にしてないけど。・・・本当だよ?サッカー部の顧問俺の英語の教科担当だけど。テストで94点とったのに評価が4だったのは、関係無いと思いたい。
「というか作戦会議とか必要か?うちのクラスは、そのイケメンサッカー部プラス俺がいるんだぞ?」
今年は件のイケメンサッカー部2人と俺が同じクラスになった。まずサッカーで負ける事は無いだろう。野球とか他のは知らね。俺出ないし。
「そりゃお前らがいて負けることは無いだろうが、白河がやるって言って聞かないんだよ」
白河とはイケメンサッカー部2人の片割れであり、一致団結とかワンフォーオールとかその辺の言葉が大好きそうな見た目も言動も超爽やかイケメンボーイの事だ。まあ、裏があるけど。でもとりあえず・・・
「白河の野郎・・・!絶対に許さん。後で後悔させてやる」
後であいつの学校ジャージにマジックペンででっかく『しらかわ』って書いてやる。下の名前も書きたいけど知らないからどうしようもない。知りたくもない。
「止めろバカ。そんな事言ってるからお前はモテないんだぞ?折角顔は良いのに」
「前までモテてただろうが」
俺は結構顔がいい。イケメンサッカー部二人と俺で、一年三大イケメンと言われていたぐらいだ。おかげで結構モテていたのだが、
「それは去年の球技大会までだろ」
イケメンサッカー部二人に怪我させてからはモテなくなるどころか嫌われた。べ、別に悔しくなんてないんだからね!
あ、別に見栄張ってる訳でもなく普通に気にしてないよ?
と、その時、何故かクラスから歓声が上がった。
「なんだよ煩いな。おいモブ、ちょっと話聞いてこい」
「いや、自分で行けよ」
文句を言いながらもモブが話を聞きに行った。奴隷根性でも染みついているのかな?
暫くすると興奮したモブが帰って来た。何こいついきなり興奮してんの?こわ・・・性犯罪者なの?
「おいアキラ!桐生さんが応援リーダーやるんだってよ!」
「桐生が?」
桐生雪菜。
黒髪セミロングでクールビューティーの学校一と名高い美少女で、よく男子生徒から告白されているらしい。今も男子に囲まれている。
かつて学校一のモテ男だった男子バスケ部のキャプテンが執拗に言い寄った時に、「ウザい。私に近寄らないで」と言って振ったのは有名な話だ。ザマァ、キャプテン。テメエごときじゃ釣り合わねぇよ。
「ああ、白河がお願いしたらオッケーしてくれたらしいぞ」
「へぇ・・・」
応援リーダーというのは球技大会で各クラス男女1人ずつやる係だ。女子の応援リーダーは、指定された可愛い服を着るんだが・・・
「桐生がアレを着るのは想像出来ないな」
桐生はクールなイメージがあり、年で唯一私服を着てきてもいい学園祭でも制服を着ていた。そんな桐生が可愛い服を着るところはいまいち想像出来ない。制服姿でも可愛いし別に制服でも良いと思うが、周りの男子達は落ち込んでいたらしい。何で「らしい」なのか?だって俺他の男子のことなんていちいち見てないし・・・。モブから聞いた。
「やっぱ噂の桐生さんが好きな人は白河なんじゃないか?」
桐生には好きな人がいるらしく、その好きな人は誰なのかということで訳の分からん騒動が起きた事があるのだが、そこで有力視されたのが白河だ。だから、白河が頼んだおかげで応援リーダーになることを了解したと思ったんだろう。だが、
「いや、それは多分無いな」
俺は違う気がする。
「なんでそう思うんだ?」
「桐生が白河を見る回数が少な過ぎる。一日に一回見るかどうかってレベルだ。好きならもっと見ているはずだ」
「なんでそんな事知ってんだよ」
そんなの決まってるだろ?
「俺が桐生をずっと見ていたからだ」
「変態かよ!」
いや、 なんでそうなるんだよ。
「いや別にそういう訳じゃ無いぞ?ただ桐生の好きな人が気になったのと、目の保養にと思って」
「え、なにそれ。お前桐生さんの事好きだったの?」
だからなんでそうなる。
「いや、別にそういう訳じゃ無いけど」
「いやいや、お前の話を聞く限り、桐生さんの好きな人が気になっていて、お前ずっと桐生さんのこと見てたんだろ?しかも何日も。それ好きってことだろ」
・・・ 確かに。
「もしかして俺、桐生のことが好きだったのか?」
頭をひねっていると、
「水瀬君」
と声がかかった。声の主を見ると、
「・・・桐生か」
件の桐生がいた。
「何か用か?」
「ちょっと聞きたいんだけど・・・」
顔を少し赤く染めながら聞いてくる。肌が白いと、赤くなるのがすぐわかるな。だが止めろ、周りの男子が殺気立ってる。流石に複数人から、ガチで殺す気なんじゃ無いかと思う様な目を向けられると恐い。
「私、中学で水瀬君と同じクラスだったよね。その時のこと、覚えてる?」
そんなの、 忘れるわけないだろ。
「ああ、よく覚えている」
確か桐生は男子から根暗女とかって言われていたな。まあ男子としては恥ずかしがってるだけだったんだろうけど。あの時の俺は若かった・・・
「覚えててくれたんだ・・・」
嬉しそうに言う。というか今気付いたが、桐生から誰かに話し掛けるってかなりレアなことじゃね?少なくとも、高校での桐生が自分から誰かに話しかけることはほとんど無かったはずだ。
「水瀬君に言いたい事があるんだけど・・・」
妙に顔を赤く染めモジモジしている桐生。
言いたい事?俺なんかしたかな?というかモブ。折角桐生が話し掛けてきたのに静かだな?「お前桐生さんと同じ中学だったの!?」とかって騒ぐと思っていたんだけど。あとこの静けさはなんだ?さっきまでクラス全員騒いでいただろうが。
「私、水瀬君の事がーーー」
桐生がそこまで言った時。何かが強く光り、
「・・・何処だここ」
知らない場所に立っていた。
次はまだまだ先です。