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ごめんね、もう少し  作者: 仲町鹿乃子/鹿の子
2・香奈→楡井君
9/50

1-2


 クラスに戻り、田辺たなべ 和可奈わかなに物理のテスト直しの話をした。

笙子しょうこが18点。で、放課後には楡井にれい君が物理の先生」

 和可奈はそれきり、黙ってしまった。

「わたしの点数はともかくとして、楡井君に勉強を教わるって、そんなに変?」

「……笙子が休んでいた時の物理のノートのコピーも楡井君が貸してくれたんだけど」

「もしかして、これのこと?」

 わたしは鞄からごそごそと、以前、和可奈に貰ったコピーを出した。

「そう。楡井君から」

「これ、和可奈ちゃんのじゃなくて、楡井君の?」

「だって、わたしの選択は生物で、物理は選択してないもん」

「和可奈ちゃんが楡井君に頼んだの?」

「違うよ。笙子が休んでいる間のノートをいろいろと集める中で、彼が声をかけてきてくれたの。楡井君とは、わたしも接点なかったから驚いたんだけど、笙子とは物理で同じクラスだっていうし、まぁ、貸してくれるっていうならありがたいから、そうさせてもらったんだけど。それが、テスト直しまでとはねぇ」

 和可奈が、意味ありげなほほ笑みを向けてきた。

「わたしと楡井君、実はひそかに仲が良かったとか?」

「どうなんだろう? 楡井君だろうが、誰だろうが、男子だよ。ミス・堅実の笙子は、男子には、近づかないじゃない」


 ――ミス・堅実。


 笙子に、そんな渾名が与えられていたとは。

「わたし、男嫌いだったのね」

「そうじゃなくて。笙子、いろいろと面倒な目にあったのよ」

「わたしが? トラブルでもあったの?」

「覚えてないのなら、聞かない方がいいかも」

「知りたい。これから、また同じ目にあうかもしれないじゃない」

 あの「7月12日 PM6:15」の謎を解くヒントになるかもしれない。

「それもそうね。笙子は、綺麗だし、男の子から人気があるの。だから、ちょっと宿題を教えただけの男子がその気になったり、その男子の彼女がヤキモチやいてきたりとか」

「もしや……修羅場が?」

「そこまではいかないけど。笙子、嫌な思いはしていたと思う。笙子って勉強できるから「教えて」って口実で近づきやすいのよ。でも、今回は、笙子が教わるのよね」

 でも、近づいてきたのは楡井だ。

「楡井君には彼女いるかな? わたし、いじめられそう?」

「楡井君、彼女はいないと思う。でも、そうね。以前の笙子だったら、楡井君は避けるかも。彼、さりげなく人気があるから」

 人気な笙子と、さりげなく人気の楡井。

 嫌な予感しかしない。


「そういえば、高1のときの同じクラスの芦田あしだ 祐仁ゆうじん君。高校入ってすぐの4月だったかな。笙子が勉強を教えてあげたの。そのあと、なんかすごくしつこくて」

「それで、どうなったの?」

「ある日、笙子が、もう解決したから大丈夫って。聞かないでって雰囲気だったから、わたしもそのままにしちゃった」

「そうなんだ。心配してくれたのにごめんね」

「いいよ。なにも起きなかったから。笙子の言う通り、大丈夫だったんだよ」

 笙子は一人で解決したのか。

 それが悪いとは言わないけど。

 こんなにいい友達がいるのだから頼ればいいのにって、姉としては思うよ。


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