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ごめんね、もう少し  作者: 仲町鹿乃子
10・笙子→未来へ(最終章)
47/50

 瞼に、光を感じた。

 明るい。

 カーテン、ちゃんと閉めなかったのかな?

 昨日の晩のことを思い出そうとしたけど、思い出せない。


 目を開ける。


 天井が見えた。

 見慣れた、わたしの部屋の。


 ふと、違和感を覚え、寝たままで両手を挙げた。

 そして、ゆっくりと手の甲の向きを変え、その違和感のもとである指を見た。


 指の先の爪は、綺麗にまあるく切り揃えられていた。

 そしてその、まあるい爪には、淡いピンク色のマニキュアが塗られていた。




 一階におりて行き、お母さんに挨拶をしたら、いきなり泣きだされてしまった。

 お父さんには「笙子か」と、抱きしめられた。

 ぼんやりと眺めたカレンダーは、十月になっていた。


「笙子、お誕生日おめでとう」

 お母さんに言われて、今日の日付を知った。



 わたしは、朝倉笙子は、今日、17歳になった。




 わたしは、交通事故に遭った。

 そして、事故に遭ってから今までの記憶が、一切なかった。

 学校は、わたしが落ち着くまでの間、休むことになった。

 その日のうちに検査に行った病院では、特に異常はないとのことだった。


 自分の部屋に戻り、勉強道具を広げると、確かに「わたしらしき字」で書かれたノートやレポートが出てきた。

 そして、物理をはじめ、あまり馴染みの無い点数がついたテストも。

 記憶はないけれど、わたしはここで生活をしていた……。

 それは、とても不思議な感覚だった。


 不思議なことは、まだある。


 お父さんの退職祝いの日。

 おめでたい日だというのに、わたしには心配事があった。

 そのせいで、支度が遅れてしまい、当初の予定の電車ではなく、姉の機転でタクシーで行くことになった。


 姉は、太陽のような人だった。

 近くにいると、元気が出る。笑顔になる。

 みんな姉が大好きだ。


 心配事を、姉に相談しようと思ったときもある。

 でも、仲が悪いというわけではないけれど、日ごろあまり話していなかったので、どうしていいのかわからなかった。

 それに相談してしまうと、心配をかけてしまうかも、と思った。

 わたしは家族に心配をかけたくなかった。

 だから、一人で解決しようと、そう思っていた。


 その心配事が。

 いつも、心にずしりとあったあの心配事が。

 きれいに心から無くなっていた。


 引き出しに入れていた、あの白い手紙もなくなっていた。


 両親からは、わたしが切り出すより先に、その心配事だった塾でのトラブルが解決したと聞いた。

 そして「もっと親を頼りなさい」と、お父さんに言われた。


 お父さんのその声は、わたしを叱るというよりは、わたしを安心させるような響きがあった。






 友達の田辺和可奈が、家に遊びに来てくれた。

「和可奈、ありがとう」

 遊びに来てくれた友達の名を呼ぶと「笙子だ!」と、叫ばれた。

 和可奈の話によると、事故の後、わたしは彼女を「ちゃん」付けで呼んでいたらしい。

 また、学校では、やはりといった感じで、勉強で苦戦を強いられていたと聞いた。


「勉強のことではね、笙子、随分と楡井君に、お世話になっていたんだよ」

 和可奈の言葉に、わたしはびっくりした。

 楡井君の名前は、両親から既に出ていた。

 どうやらわたしは、塾だけでなく学校でも彼にお世話になっていたようなのだ。



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