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ごめんね、もう少し  作者: 仲町鹿乃子/鹿の子
9・香奈→王子様orラスボスor騎士
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 職員室に行くと、宗田(そうだ)はまだ学校にいると言われた。

 今日は、校内巡回の当番だそうで、今もどこかをパトロールしているらしい。

 狭いようで、学校は広い。

 一階から三階まで、全ての教室を見て回ったけど、宗田は見つからない。


 すれ違ったのかもしれない。

 息が上がる。

 笙子(しょうこ)、体力ない。

 笙子は、頭だけじゃなくて、体も鍛えないといけない。


 笙子の体で、宗田と一緒のところを、見られたくはないけど、今日だけは勘弁だ。

 こうなったら下駄箱で待つのが、確実かな。

 当然、誰かに見られるだろうけど、そこはわたしの根性のすわったところを発揮して、いくらでも誤魔化せるだろう。


 そうしてでも、なんとしてでも、今、会わなくちゃって強い思いが、わたしの中にあったから。



 思えば、当たり前のように歩いているこの校舎も廊下も教室も階段も水飲場も。

 25歳の香奈にとっては、全然当たり前じゃない場所だったのだ。


 楽しかった。


 25歳のままでは、出会えなかった子たち。


 そして、宗田。




「宗田断ち」、わたし本当に頑張ったんだ。

 陸上部の友だちにいくら誘われても、集まりに宗田が来ると聞けば、ことごとく不参加だったし。


 避けているの、ばれているかもしれないな。

 感じ悪いのは承知で、そんな真似をした。


 宗田に会わなくても、宗田がいなくても、わたしは元気だった。

 おしゃれに、スイーツに、デートもどき。

 楽しことは、たくさんだった。

 宗田を忘れられたって思った。


 でも、そうじゃなかった。

 笙子の代わりに高校に来て、宗田の姿を目にとめた瞬間、ここ数年の努力がなんの意味もなかったと知った。

 宗田にときめいた。

 心が彼を忘れていなかった。

 とどのつまりが、そういうことだ。


 だったら、会えばよかったのに。


 一生片想いで、心が宗田に囚われたままだとしても、それでも会えばよかったのだ。

 好きを貫き通せばよかった。

 ばかな意地を張っていた。

 さほど好きでもない男の人と出歩いた。

 無駄な時間を過ごした。


 わたしは、自分の想いが報われないからと、宗田に会わないことで、宗田にそれを知らしめたかった。

 宗田が気付いているかどうかもわからないまま、宗田を罰しているつもりだったのだ。

 わたしは、幼かった。



 下駄箱まで来て、ふと、あることを思いついた。



 革靴に履き替えを、校庭に出て、ぐんと首を逸らし、校舎を見上げた。


 大正解。


 宗田、発見。








 学校の屋上へあがるなんて久しぶりだ。


 わたしや宗田の通っていた高校の屋上は、緑化だとかなんとかで、やけに熱が入っていて、ちょっとした庭園のようなものだった。

 空の下大好き陸上部のメンバーは、そこに集まり、みんなでお弁当を広げていたのだ。

 わたしと宗田も、暇さえあれば屋上に来て、どうでもいいおしゃべりをしていた。



 屋上への重い扉を押すと、一面の空とコンクリートの床、そしてやけに高いフェンスが見えた。


 答えのほうへと歩く。

 すると、宗田はまるでわたしが来るのを待っていたような顔をしていた。


 宗田の隣に立つ。

 宗田がわたしを見下ろす。


「……朝倉 香奈(あさくら かな)、か」

「大当たり」


 正解者には、商品です、とポケットから飴を出して宗田に渡す。

 宗田はそれを受け取ると、そのままへなへなと崩れるようにしゃがみ込んだ。


「やっぱり、これでばれた?」


 前髪を手で上げる。

 しゃがみ込んだ宗田が見上げて、わたしのその仕草を見た。


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