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母がわたしに、商店街の福引補助券を見せてきた。ピンク色の券が5枚。
「いいところに来てくれたわ。これから福引をするの。ちょうど1回できるのよ」
「お母さん、がんばって」
「香奈、ひきなさい」
「え、わたし? でも、わたしこういうのって、あんまり当たったことないけど」
「あら。わたしだって、当てたことないわよ」
うちの家族は、総じてくじ運が悪い。
「あのさ。はずれても、文句はなしね」
「当たり前でしょう。文句なんて、言いませんよ」
母の笑い声に背中を押され、商店街の真ん中にできた、小さなテントに向かった。
一等は、あの勝手に床の掃除をしてくれるという掃除機だ。
頑張ったな、商店街。
大丈夫か?
今日の福引の係は、文房具屋さんのおばさんだった。
おばさんと目が合う。
おばさんが、にたりと笑う。
なんとなく、縁起が悪い。
わたしはおばさんに券を渡した。
そして、母が見守る中、ぎゅっとハンドルを握り、えいやぁと抽選機を回した。
抽選機がのそりと回る動きと、少しずれたような重そうな玉の音がじゃらんと響いた後、一個の白い玉が出た。
その場がしーんとなる。
そして、空気を裂くように、大きな鐘が鳴り響く。
「おめでとうございます~」
わたしと母は目を丸くし、顔を見合わせた。
「いやぁ、当たるんだね」
家までの帰り道、おばさんから渡された目録を、しみじみと見た。
現物はそこにはないので、後日送付ということだった。
「当たるのねぇ」
母も感心したような声を出す。
「そういえば、香奈。以前、相談があるって言っていたけど、どうなったかしら?」
「あぁ、うん。……あのね、ほら、少し前になるけど、和可奈ちゃんから塾の講座に誘われたって話したでしょう。あれ塾生でなくても受講できるって話だったの。どうしようかと迷っていたけど定員もあるから、お母さんに相談前に申し込んじゃったのよ」
「塾に行くのは構わないけど。よくそんなお金があったわね」
「一応、社会人なんで」
わたしの財布には、講習会に参加でできるくらいのお金はあったのだ。
「香奈、勉強好きでもないのに。無理してない?」
「わたしもね、少しは賢くなりたいし」
わたしの嘘に、母は困ったような顔をしつつも、了承してくれた。
手紙のことは、母には言わないことにした。
以前は、おびただしい量の手紙について、なにかしらの目安がついたら母に話そうと思っていた。あの時、わたしは孤独だった。一人で考え、動くしかなかった。だから、誰かに相談したかったのだ。
けれど、今は楡井がいる。
それに、手紙や怪我の話を母にしてしまうと、わたしは、あの塾に近づくことができなくなるだろう。
それは、困る。
あの手紙には、笙子をもとにもどす鍵がある。
これは、危ない橋かもしれない。
そういった自覚は、あった。
そんなところに「笙子」を行かせていいのか、とも思う。
でも、行かないと、動かない。
変わらない。
このままでいいと、香奈でいいんだと思う両親には、わたしのしようとすることは、きっと受け入れられない。
知られたら、止められてしまう。




