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ごめんね、もう少し  作者: 仲町鹿乃子
4・香奈→手紙
25/50

 家に帰ると、わたしはそのまま笙子(しょうこ)の部屋に入った。




 そして、あの手紙が挟まっていた机の一番下の引き出しを、そのまま前に引いた。

 真っ白だった。

 あの手紙の封筒と同じものが、引き出しの中にバサバサと無造作に入れられていたのだ。


 その上の引き出しを開ける。

 そこには、塾のパンフレットや、新聞の切り抜きが大きさを揃えて入れてあった。


 さらにその上の引き出しを開ける。

 ペンやメモ帳が綺麗に整理されて入っていた。



 あの引き出しだけが、異質だった。


 まるでゴミ箱だ。





 わたしは、その場にへなへなと座り込んでしまった。





 芦田(あしだ)の冊子にはびくともしなかったけど、この手紙の量にはぞっとした。


 一度だけじゃない。

 笙子が手紙を受け取ったのは、一度だけじゃないのだ。




 一階に下り、台所へと向かう。

 母は夕飯の用意をしていた。


「お母さん」

「なぁに」

「相談したいことが、でてくるかも」


 引き出し一杯の手紙を見つけたわたしは、そのまま笙子の部屋も調べた。

 ごめん、と謝りながら隅から隅まで全て見た。

 けれど、あの手紙以外に変なものはなかったし、それに関係するようなものも何もなかった。

 手紙に関しては、気になることがあった。

 最初に見つけたものには、「日にち」に対して「時間」が一つしかなかった。

 けれど、他の手紙の中には、時間が複数書かれたものがあったのだ。

「5月25日 AM10:30 PM2:00」といった具合に。

 おびただしい量の手紙からは、悪意しか感じられなかった。

 笙子は、想像以上に悪質なトラブルに遭っていたのかもしれない。

 母にも伝えなくていけないとわかっている。

 けれど、もう少し自分の気持ちが落ち着いた上で、話したいと思ってしまったのだ。


 そんなわたしの思いなど知るはずのない母の返事は、「はいはい」と軽やかだ。

 けれど、その声を聞くと、わたしはあたたかな気持ちになった。

 一人じゃないって思えた。

 と同時に、笙子がこれを一人で抱えていたのかと思うと、やりきれない。

 どうして家族に相談してくれなかったのかと、情けない気持ちになる。

 笙子にとり家族は、頼りない存在だったのだろうか。


 笙子のことでいえば、気になることがあった。

 最初に手紙を見た時、確かにわたしはあの子を体の中に感じた。

 なのに、あのおびただしい量の手紙を見ても、それはなかった。

 笙子の反応は、なかったのだ。

 理論的ではなく、感覚的な話なんだけど。


 やっぱり思う。

 時間がないって。


 笙子が段々遠くなっていく気がするのだ。



 それが、怖い。


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