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ごめんね、もう少し  作者: 仲町鹿乃子
3・香奈→芦田君
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23/50

 翌朝、少し警戒しながら両親と顔を合わせた。


 けれど、二人ともいつも通りで、何もなかったかのように、わたしに接してきた。

 父は、わたしを「香奈(かな)」と呼ぶことに、決めたようだった。

 それは、昨晩のことについて、わたし達は考えを変える気はないんだよ、といった意思表示に思えた。






 学校に着くなり、和可奈(わかな)をつかまえ、小論文云々の理由は言わずに、笙子(しょうこ)が塾をやめていたことを伝えた。


「嘘でしょう? わたし、聞いてない」

「少し前に辞めたんだって。昨日、母に聞いたの」

「……なんか、おかしいな」

「なにか気になることがある?」

「うーん。確かめてから答えるよ」

 和可奈は思案顔で言った。

「あのさ、その、塾のことだけど。なにか、塾で困ったことがあったとか、和可奈ちゃんに相談してなかったかな?」

 笙子に関する手持ちの駒が少ない分、少しでもひっかかりのあるところは攻めて行く。

 すると、和可奈が瞬きをした。

「笙子から相談なんてなかったよ」

 笙子は自分でなんでも解決しようとしているけれど、一人じゃ見つけられない答えだってあるはずなのだ。事実、和可奈はとても親身になってくれている。

「なんか、ほんと、わたし、友達がいのないやつだわ。ごめんね、相談しなくて」

 思わず、そんな言葉が出た。

「やだ、止めて。笙子、なに言い出すのよ」

 いい友だちだな、と思う。

 和可奈は、事故に遭った笙子に対して、特別視せずに、そのままで接してくれる。

 わたしが気が付かないだけで、気を遣ってくれていることだって、想像する以上に多いだろうと思う。


 笙子、あなたにはいい友だちがいるんだね。

 あなたはもっと彼女に頼っていいんだよ。

 ひとりで頑張らなくてもいいんだよ。

 いつもと違う場所に身を置くことで、見えてくる景色もあるんだから。


 だから笙子。

 戻っておいでよ。



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