5-1
家族で夕飯を食べながら、わたしは笙子の塾について母に尋ねた。
「あぁ、塾ね。塾はね……」母の視線がすっと父へと移った。
「笙子はね、辞めたのよ」
「え、辞めたの?」
笙子が?
なんで?
「笙子ね、もっと小論文に力を入れた授業があるところに移りたいって。それがね、本当に突然だったのよ」
「お母さん。それ、いつか覚えている?」
「……事故の前、かな」
「それで、笙子は、新しい塾を決めていたの?」
「ううん、まだよ。夏休み前までには、決めたいなぁって言っていたけど」
その前に、事故がおきたのだ。
あれっと思う。
母に見せようと持っていた塾の講座のパンフレットをぱらぱらと捲り、和可奈が折ってくれたページを開く。
その中の一つに、「小論文を書こう」という講座があった。
「香奈、どうしたの?」
母の声に促されるように見せる。
「これ、学校で笙子と同じ塾だった子からもらったパンフレット。この特別講座に参加しないかって誘われたんだけど」
「あら。ここでも、小論文をやっているのねぇ」
しかも、その講座の説明には、
――当塾で力を入れている小論文の授業を体験してみませんか――
違和感の原因はこれだった。
「この講座に興味があったからお母さんに相談しようと思っていたの。でも、笙子が塾を辞めたのなら、無理だね」
母にそう言いながら、ふと楡井の言葉を思い出した。
――これ、塾生じゃなくても参加できる講座だしね
楡井は、そう言った。
――「そういえば楡井君も、わたしと同じ塾なんだよね」
――「まぁ」
――「……楡井君とわたしは、同じ校舎?」
――「うん。俺と朝倉は、同じだった」
もやもやが頭の中に溜まって来た。
前髪を上げる。
考えろ。楡井との会話の意味を。




