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ごめんね、もう少し  作者: 仲町鹿乃子
2・香奈→楡井君
19/50

4-3

 物理は、暗記だけじゃ問題は解けない科目だ。理解して、それをきちんと説明できないと、テストの点数はとれないのだ。

 そこを楡井(にれい)は、丁寧に教えてくれていたんだけど。


 ――「あれ、読んでくれたんでしょう?」


 どうしても、芦田(あしだ)の言葉が、どうしても浮かんでしまう。


「楡井君、ごめんなさい。今日は、頭に入らない」

 両手を合わせて謝ると体が少し動いたのか、隣の席に置いてあった鞄が床に落ちてしまった。

 中身が床に広がる。

 教科書にノートにポーチに――飴。

 ポーチまでは笙子のものだけれど、飴は香奈(かな)として持っていたものだ。

 これをわたしは、「元気の源」と呼んでいた。

 学生時代はもちろんのこと、飴は社会人になっても持ち歩く必需品であった。

 疲れたり、落ち込んだりするときに舐めることもあるし、お腹が空いて家までもたないときも、これでしのいだりしていた。

 わたしが飴を常備していることは有名だったので、よく周りの友だちから「元気ちょうだい」と、せびられもした。

 お陰で、どこでどの飴が底値かってことを、わたしは熟知しまくりだったけど。

 宗田(そうだ)はパイナップル味の飴が好きだった。

 わたしは、他の味は切らしていても、その味だけは常備していた。

 彼から飴をねだられたときに、いつでも出せるように準備していたのだ。


 わたしは椅子から下りると、しゃがみこみ、落ちた教科書やプリントをとりあえず机の上へと載せた。

 そして、椅子座りなおすと、今度は机の上のものを鞄にしまい始めた。


「朝倉は、塾の一日講座を申し込むの?」

 楡井は、鞄からこぼれた和可奈(わかな)から渡されたパンフレットを手にしていた。

「あ、うーん。考え中」

 実は、行ってみようかな、という気持ちになっていた。

 けれど、それを決めるのは、母に相談してからにしようとも思っていた。


「そうか。これ、塾生じゃなくても参加できる講座だしね」

「そうなんだ。詳しいね。そういえば楡井君も、わたしと同じ塾なんだよね」

「まぁ」

 まぁ、って。

 同じなの?

 違うの?

 YESかNOか、はっきりしてよ。

「そのパンフレットね、田辺 和可奈ちゃんから貰ったのよ」

「あぁ、田辺ね。彼女は、別の校舎だったよなぁ」

 どこだっけ、と楡井は考えるような顔をした。

「……楡井君とわたしは、同じ校舎?」

 今までの会話から、細い糸のように出た可能性をぶつける。

「うん。俺と朝倉は、同じだった」


 ビンゴ!


 楡井と笙子は図書委員だけじゃない。塾も同じだったのだ。


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