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第13章:第四殺人

殺されるかもしれない。

落合英明は自分の部屋でただひたすら怯えていた。

清城明澄、須賀美咲と連続して殺されているのだ(そして英明はまだ知らないことだが、柏崎健介ももう死亡している)。

次は自分だ、と英明にはそんな気がしていた。

犯人は合鍵をすべて奪い去っている。

一応ドアには鍵をかけてあるが、開けるのは容易いことだ。

そして美咲は毒物で殺されていた。

だから安易に飲食物に手を出してはならない。

英明はこの吹雪が止み、山を降りるまで一切飲食物を口にしないと誓った。

そのため英明はひたすら震えて部屋の中にこもっているしかなかった。

もう既に午前12時を回っている。

結局朝食も食べることができなかったから、丸一日何も食べていないことになる。

「腹、減ったな・・・」

英明は心細そうに呟いた。

今まではこんなことはなかった。

父親が大病院の院長である英明は、昔から何不自由なく暮らしてきた。

1日何も口にしないなど初めてのことだったのだ。

何度も自分の鞄の中にある、山のふもとの店で買ってきた菓子類に手を伸ばそうとしたが、英明はそれを必死で我慢した。

食べたら死んでしまう、と自分に言い聞かせて。

空腹と疲労で、眠気が襲ってくる。

英明は眠気を必死で振り払い、辛抱強く起き続けていた。

起きていれば殺されることはない。

起きていれば、大声を出せば誰かが駆けつけてくれる。

そう信じていた。

しかし、頑張り続けていた英明だが、ふとまどろんでしまった。

気を抜いていたわけではなかったと思う。

それでも、疲労と空腹が積み重なり、ついうとうとしてしまったのだ。

そんなぼんやりとした英明の意識だったが、ふと誰かが目の前にいるのを感じた。

英明の意識は一瞬のうちに覚醒した。

目の前に立っているその人物は、手にロープを持ち、こちらを見下ろしていた。その人物の背後にある英明の部屋のドアは、既に開かれていた。

「ひいっ!」

英明は恐ろしさのあまり声を漏らし、震える足で立ち上がる。

その人物はゆっくりと近づいてきた。

「お・・・お前が犯人だったのか・・・?」

英明は震える声でその人物に声をかけたが、返事はなかった。

その人物は、ゆっくりと近づいてきた。

「やめろ! やめてくれえええええ!」

英明は必死に声を張り上げた。

既に深夜といっていいほどの時間であったが、誰か起きているかもしれない。何しろこの山荘内には殺人犯がいるのだ。怖くて眠れない人間がいてもおかしくないはずだ。

英明はその人物に自分の声が届くよう、必死に声を出す。

だが、誰かが英明の部屋に駆け寄ってくる気配はまったくなかった。

その人物はロープをしっかりと握りながら、英明の目の前まで来た。

「やめろおおおおおお!」

英明はその人物を必死で押しのけ、半開きになっているドアのほうへ駆け出した。

が、疲労と空腹、眠気、そして強大な恐怖を感じていた英明の足は、ドアに到達する前にもつれてしまった。

「あっ!」

声を上げたときにはもう、英明は床に倒れこんでいた。

その人物はすばやく英明の背中に馬乗りになった。

「頼む・・・・。許してくれ・・・・」

英明は泣きそうになりながら哀願したが、その人物は無言のまま英明の首にロープを引っ掛けると、そのままその首を絞めた。

ギリギリと音を出しながらロープは英明の首に食い込み、英明は一瞬のうちに息ができなくなる。

英明は必死に抵抗しようとしたが、馬乗りにされ、首を絞められた状態ではそれも不可能だった。

しばらくすると、英明はぐったりとして動かなくなった。


「はぁ・・・はぁ・・・」

その人物は、英明が動かなくなってもしばらくの間首を絞め続けた。

そしてようやくロープから力を抜くと、英明の体は床に沈んだ。

その人物は荒い息を繰り返しながら、額の汗をぬぐった。

ようやく終わった、とその人物は思ったが、すぐにまだ終わっていないと気を引き締めた。

そう、まだ終わっていない。

これからこの部屋にちょっとした細工を加えなければならない。

自分が罪から逃れるために、英明にすべての罪をかぶってもらうのだ。

しかし、その人物はふと思った。

本当にこれでよかったのだろうか、と。

そしてこれからすることは、本当に正しいことなのだろうか、と。

正しいことではないことはわかっている。

4人もの人間を殺害し、そのうえその罪を死人とはいえ他人に擦り付ける。最低の行為だ。

これでは目の前で死んでいる英明たちがやったことと同じではないか。

いや、むしろそれよりも自分のほうがひどいかもしれない。

頭ではわかっている。わかっているつもりだ。

その人物は疲れたようにひとつ、ため息をついた。

「・・・・ごめんなさい」

その言葉は、自らが殺した英明たちに対する言葉なのか、それとも既に死んでしまった「彼女」に対する言葉なのか、それとも別に深い意味などなかったのか。

その人物自身にも、わからなかった。

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