表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/23

第12章:晩餐会

昼食の後、崇史の部屋に戻ってきた3人は少し疲れたようにため息をついた。

「ことり先輩、もう部屋に戻ったのかなあ?」

彩音がぽつりと呟く。

あのあと結局「まだもう少し片づけが残っているから」と言ってことりはキッチンのほうへ戻ってしまったので、3人はことりを1人置いて部屋に戻ることとなったのだった。

「ことり先輩、精神的に相当参ってたし・・・・。大丈夫かな?」

彩音は相当ことりのことを心配しているようだった。

今までの彩音の態度を見ていればよくわかる。

彩音はことりのことを実の姉のように慕っているのだ。

「夕飯のときは、ちょっと手伝おうか?」

優の提案に、彩音は顔を輝かせた。

「そう! そうだよね! 私もそうしようと思ってたの!」

何度もうんうんと頷く彩音。

これで崇史も夕飯の支度を手伝う羽目になりそうだったが、今まではすべてことり1人にその役目を担ってもらっていたので、それもいいかもしれないと思った。

「それはそれとして、とりあえず問題はこれじゃないか?」

ことりのほうに話が傾いていたので、崇史はテーブルの上においてある紙切れを手に取った。

「あ、そうだった! 暗号解読、しなくっちゃね」

彩音は張り切った様子で崇史からその紙切れをひったくった。

その紙切れとは当然、明澄の残したダイイングメッセージのことだ。

これからまた長時間にわたる頭脳労働が始まる。

崇史は自分の頬を叩いて、気合を入れなおした。


春日部比呂はタバコを吸いながら、天井を見つめていた。

ゆらゆらとタバコの煙は立ち上っては消えていた。

比呂はその様子をしばらくぼうっと眺めた後、胸のポケットから1枚の写真を取り出した。

4年前の同窓会のときに取った写真だ。

写真の中の比呂は笑顔だった。

比呂だけではない。みんな、みんな笑顔だった。

比呂は無言のままその写真をポケットに戻すと、タバコを灰皿に捨てる。

彼はそのまま目を閉じ、じっと何かを考えていた。


小宮悠紀はその本を閉じると、テーブルの上においた。

今度彼が訳すこととなっているアメリカの本。向こうでは相当な人気らしいが、悠紀にはその本のどこが面白いのかわからなかった。

「愛」だの「友情」だのといった言葉が頻繁に使われている。

この本の作者はただ言葉を使えばいいと思っているのだろうか。

悠紀は忌々しげにテーブルの上の本をひと睨みしたあと、ベッドにダイブした。


深森ことりは外を眺めていた。

外は相変わらずの吹雪で、勢いはほぼ衰えていない。

激しく、強く、狂おしいほどに雪が舞っている。

窓に手のひらを当ててみる。ひんやりと冷たい感触がした。

ことりは手のひらを窓ガラスからゆっくりと離した。

心地よかった冷たさは、すぐに失われた。



「あ、深森さん! 手伝います!」

結局明澄の残したダイイングメッセージの解読は、まったくといっていいほど進展しなかった。

長時間の頭脳労働で崇史の頭はつかれきっていたが、ことりの手伝いをすると3人で決めた以上、守るべきだと思った。

キッチンで料理をしていることりに、真っ先に優が駆け寄って行く。

そのときちょうどことりはスープを作っているところだった。

「あら、如月くん。それに彩音ちゃんに緒方くんも。本当に手伝ってくれるの?」

「勿論です!」

彩音と崇史もすぐにことりの元へと走っていった。

「じゃあ、まず皿を用意してくれる? 彩音ちゃんはそっちの野菜を切っておいて」

「はい!」

3人は声をそろえて返事をした。

1時間もかからないうちに料理は完成し、テーブルに並べられることになった。

「ありがとう。こんなに早くできたの、あなたたちのおかげよ」

ことりはにっこりと笑ってそう言った。

そのあと悠紀と比呂を呼び、昼食のときと同じように6人での夕食となった。

「健介と英明、大丈夫かしら? おなか減ってないかな?」

「放っておけ。どうせ料理を出したところであいつらは食べやしねぇよ」

健介と英明を心配することりに、比呂は食べながらそう言った。

ことりは少し悲しそうに顔をうつむかせながら「そうね」と答えた。

その後も変わったところは特になかった。

真っ先に食べ終わった悠紀が席を立ち、次に比呂が部屋へと戻る。

昼食のとき同じパターンだった。

大体そのころには崇史や彩音も食べ終わっており、まだ食べているのは優とことりだけだった。

「ふぁぁ〜。何か眠い・・・」

2人が食べるのを眺めながら、彩音が大きく欠伸をかいた。

その様子に優は苦笑すると「先に部屋に戻って寝ちゃってもいいよ」といった。

「昨日もあまり眠れなかったんじゃない? 僕のこと待ってないでいいから部屋に帰って寝ちゃっていいよ」

「え・・・でも・・・・」

彩音は反論しようとしたが、明らかに眠そうだ。

実はそれは崇史も同じで、瞼が重くて仕方がなかった。

「崇史も、早く部屋に帰って寝なよ。・・・・何だか僕も眠くなってきちゃったし・・・・」

結局優の言葉に甘えることにした崇史と彩音は、そのまま部屋に戻った。

何だか異常に眠たかった。

「何だろ・・・・これ・・・」

崇史はそのまま深い眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ