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第一章 日常

彼らの日常を描いた物語です。

ここで彼らのキャラクターをわかっていただけたらなと思います。


 いつもと変わらない朝。僕こと天美和樹は通学路を歩いている。昨晩に雨が降った影響で歩きづらい。

 たまにいるんだよな、転けてずぶ濡れで学校に来る奴。そんなどうでも良いことを考えていると

 聞き覚えのある声が後方から聞こえてきた。

「かずー!!悪戯しに行こうぜ!!」

 僕をそう呼ぶ彼は小山猛(17)。名前負けしておらず、パワーがありそう、やんちゃそう

 全くそのままだ。しかし、小心者で女の子には格段に弱い。良い奴なのだが…

「猛、おはよう。また悪戯?相変わらず懲りないね…」

 猛はいつも悪戯をするのだが、悉くバレて怒られている。

「うるせーよ!かずもやるくせになんでいつも俺だけ……ってぐはっ!!」

「おっはよー☆あまちんに猛!」

 豪快な登場をしてきた彼女は遠藤有希(18)。ボーイッシュな顔立ちをしており、そのせいか否かは

 わからないが性格は男勝りである。いつも猛に激しいツッコミを入れてくれる頼もしい…いや

 あの猛を吹き飛ばすほど(ただのツッコミで)なのだから恐ろしい女の子だろう…

「おはよう、有希」

「あまちん!今日は何する!?何して遊ぶ!?」

「気が早いなぁ…まだ朝だよ!おはようって言ったよね!?」

 現時刻は午前7時30分。学校には8時まで行けば良いことになっている。

 普通の学校よりも若干早めの登校時間となっている。ここからの道のりで行けば20分弱で着くので

 何もなければ若干の余裕を持って着くことになるのだが…

「まぁいいじゃない!そんなこと!私は遊びたいのよ!!」

「やれやれ……」

 とりあえず有希の話はスルーしておく。

「ちょっとあまちん!!私の話聞いてるの!?私はねぇ…!」

 ぎゃあぎゃあ騒いでいるが、聞こえない振りをしておこう。

 そういえばさっきまで横にいた彼はどうなったのだろうか…僕は猛の方を見る。

「うぇ~ん!!猛君が倒れてるよ~!!誰か助けてぇ~!!」

 やっぱり猛は倒れていた。日常茶飯事なので慣れたものなのだが彼女は違う。

 泣きながら助けを求める少女は早川亜理紗(17)。とても17歳に見える顔立ちではなく

 今の言葉で言えばロリ中のロリータ!亜理紗を好きになったものならロリコン属性200%!!

 このまま育ち、10年後一緒に歩くようなことがあればきっと犯罪者扱いにされるだろう…

 だけど、そんな亜理紗を可愛いと思ってしまう僕は……

 この事は口が滑っても言えない。楽しい学校生活を守る為に……

「亜理紗、おはよう。これは有希がやった事だから大丈夫だよ」

 大丈夫に見えないが一応そう言っておく。

「うっ…かずくん…おっ…おはよぅ…」

「これ…有希ちゃんがやったんだぁ…」

「こらー!!亜理紗!!ちゃん付けで呼ぶな~!!って何回言わせる!」

 物凄い勢いで有希が迫って来る。有希はちゃん付けで呼ばれるのが嫌い…らしい。

 別に女の子なんだからいいと思うんだけど…

「あん!?あまちん!!何か言った!?」

「な、何も言ってないって!!」

「そう。空耳だったか」

 なんなんだ彼女は…読心術なんて習得してるのだろうか?やはり恐ろしい…

「うわわわわわっ!!ごめんなさい~!!有希ちゃ…あわわわっ!!」

「おちょくってんのかこらぁ~!!」

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて…」

 とは言ってみたものの、こうなると止められないのがお決まりである。

「よし!猛君は置いといて、とりあえず逃げよう!!ダァーッシュ!!」

「あ、こら!逃げるな亜理紗~!!待てやぁ~!!」

 5秒後、二人の姿は消えていた…

 なんだかんだでいいコンビだ。この二人は。しかし、亜理紗のキャラはイマイチ掴めない…

 泣いてみたり、天然なのか…それともわざとなのか…そうこうしてるうちに急にテンション上げてみた

 り…

 あれ?ふと気配を感じる…あっ、そういえば!!

「………」

「猛、大丈夫…?」

「体は大丈夫だが心が痛い……」

「あはは……」

 猛は精神的にも弱かったのだ。そんな会話をしていると…

「おはよ、お二人さん相変わらず朝からテンション高いね」

「別に上げたくて上げてるわけじゃないから…てか高くないし」

 声をかけてきたのは今野怜(18)。学校一の秀才で整った顔立ち、おまけにスポーツ万能。

 所謂モテモテ君だ。

 しかし、彼は女の子達とあまり遊ばない。僕達といるのが殆どだ。そして、僕の親友の一人でもある。

「おはよう、怜。一体いつからいたのさ」

「よう!怜!!悪戯しに行こうぜ!!」

僕と猛は二人同時に話した。

「和樹→和樹と猛が会った時から。猛→お前の話に興味はない」

 怜はなんなく同時に回答してみせる。いつぞやの皇族か、お前は。

「なにぃ!!!???俺の…なんで…○×■※△@♯$%」

 同時に話し過ぎてわけがわからない。こうなった時の怜は大変である。

「ぬお~!!!!!ストップ!!ストーップ!!」

「学校一秀才なこの今野怜ともあろうお方が脳内細胞活発化しすぎにより頭がパンク状態及びパニック状態になり………」

 始まった…。これが怜の唯一の弱点だ。一度パニック状態に陥ると正常を取り戻すまでに時間が

 かかる。そして訳のわからない言葉を発する。これさえなければ怜は本当に完璧な人間かもしれない。

 僕とは違い成績、ルックス、運動神経、性格どれをとっても抜群なのだから。

「怜、大丈夫?そろそろ遅刻しちゃうよ…」

 なんだかんだであれから15分経過している…タイムリミットまで15分…本当にヤバイ。

「俺の話は誰も聞いてくれない…誰も俺を見てくれない…俺はもう…」

「猛…は重傷かな……怜は…」

「すまないな、和樹。俺は生きて行けるぜ!」

 どちらもまともな発言してなのですが…

「とりあえず遅刻しちゃうから学校行こうよ!!」

 二人に促す。全速力で走ればまだ間に合う時間だ。

「あぁ、急ごう!!」

 怜は正気を取り戻していた。助かった。

「俺なんかどうせ……」

 こいつ…やばい!!!!猛の魂は何処かへ飛んでしまっていた。

 僕と怜は二人で猛を引っ張りながら学校へ猛ダッシュした…


 ――――――――――――――――――


 はぁはぁ…目の前に学校が見えてきた…10分間の全力疾走の末の結果だ。しかし余計なお荷物(猛)

 があるため体力の限界が近づく。怜は余裕の表情だ…しかしお荷物(猛)のおかげで走りにくそうだ。

 アイコンタクトで怜に促す。流石親友きちんとわかってくれる。

「怜!!」

「おう!!」

 猛…ごめん!!二人はお荷物(猛)から手を離した…いや、捨てた…

 ずしゃぁぁぁぁぁ!!

 運悪く昨晩に降った雨の忘れ物…水溜まりに入り突っ伏した形になる。そこで猛は正気に戻る。

「ん!?俺は何をしているんだ!?かず達はどこに!?てかもうすぐ学校じゃねーか!!一体全体どなってんだ!?しかもなんで濡れてんだよ!?はぁ!?」

 大声で叫んでいる猛の声が聞こえる。本当の猛獣みたいだ。

「はぁ…猛、意識回復したみたいだね…」

「あぁ…また一波乱起きそうだな」

「気をつけてね…」

 そんな会話をしながら、僕達は今までの倍のスピードで校門から教室までを駆け抜けた…

「なんとか間に合った…また後でね、怜」

「おうよ!じゃあな!!」

 怜が走って去って行く…その背後には巨大な影が…

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!待ちやがれ!!れーーーーーーい!!!」

 びしょ濡れの獣がもの凄い形相で走っている…

「かず!!お前は後回しだ!!お前らよくも…よくも置いていったな!!」

 猛、気づいてたんだ…後で謝らなくちゃ。

「俺ら途中まで一緒に来てたのに!!何で急にいなくなるんだよ!!」

 …………はぁ??捨てて行ったんですけど…

「怜!!!今日こそ決着をつける!!待ちやがれ!!」

 猛の思考回路がわからない…とりあえず、放っておこう。

「…おはよー」

 僕は教室に入り朝の挨拶を交わした。

「うぃっす、天美」

「おっす、和樹。今日も小山達と一戦交えて来たのか?朝からご苦労さん」

「余計な一言付け加えないでよ…」

 僕はクラスメイトにどんなふうに思われているんだろう…はぁ…朝からハードだった為椅子に腰を

 下ろした瞬間にどっと疲れが沸いてくる。しかし、第3の波が押し寄せてくるのだ。

「あ~ま~み~く~ん!!!!」

 これはクラスメイトじゃない…しかし良く知っている人物だ。僕を呼ぶ彼女は桜井由佳里(18)

 天真爛漫、愉快でいつもテンションが高く(有希とは違った意味で)僕達といることが多いが

 僕達といない時でも必ず誰かといる。一人でいるところなんて見たことがない。そんな女の子だ。

「おはよー♪天美君♪」

「うわわ…今日は一段と近いね……。おはよう、由佳里。」

「えへへ。そんなことないじょ♪」

 由佳里はいつも朝の挨拶をする時…顔を近づけてくる。いつもは鼻先5センチくらいなのだが

 今日は3センチくらいだ…(ぶっちゃけありえない)女の子の顔がこんなに近くにあったら…

「ダメだ!!僕の生理的欲求が崩壊していく!!」

 教室が静まり返る…はっ!!思わず口にしてしまったのか!!!

「いや…あの…その…これはちょっとした冗談でして…はは…」

「あ・ま・み・く・ん♪」

 由佳里はチューの真似をする。本当に勘弁してください…。

「天美ー!!和樹ぃ!!天美君!!和樹君!!」

 クラスメイトからの集中砲火を浴びる…。僕、頑張れ。

「すいませんでしたぁ!!僕が悪かったです!!許してください!堪忍してください!」

 あれ、何か誰かに似てきた気がする…。悪いところ、似たくないな…。

 由佳里がいるといつも酷い目に遭う…。

「はぁ…」

 みんな笑っていた。これが日常だから許されるのだ。入学した頃なんか白い目で見られたもんだ。

 説明や誤解を解くのに数週間かかった覚えがある…。最初は怜との関係もしつこく聞かれたっけ。

 昔の事を思い出していると、また悪魔の囁きが…

「ねぇ、天美君♪」

「うわぁ!!今度は何!?」

「やだなぁ…もう何もしないわよ♪今日もみんなで遊ぼうね♪それだけ言いたかったの♪」

「うん、もちろんだよ」

 そうしてるうちに教室のドアが開く。

「こらー。席につけー」

 もう担任が来てしまった…。来たのがギリギリだったから仕方ないが、本当に休む暇がなかった…。

「やっば!!じゃあまた後でね♪天美君♪」

「うん、またね。由佳里」

 由佳里は担任の脇を潜り抜け走り去った。

「こらー!また桜井か!お前はホントにいつもいつも…」

 もう聞こえていないだろうが担任がブツブツ言っている。

「まぁ、この責任は天美に取ってもらうとするか」

「僕ですか!?てか、なんで僕!?」

「あー!!もうっ!!」

「なぁに、冗談だ」

「………」

 クラスで笑いが起きる。

「今日も朝からハードだなぁ…」

「それじゃ、出席とるぞ!」

 そんな時、ふと、携帯が鳴る。携帯を見ると受信完了の文字。明らかなメールだ。

タイトル:おはよう。

本文:今日は日直で会えなかった。連絡入れなくてすまん。じゃあ、今日の放課後な。淳也

 差出人は佐藤淳也(17)。律儀で小まめな性格をしている。メガネがチャームポイント…だそうだ

 猛と一緒で悪戯好きだが、こいつはひと味違う。もう専門職みたいなもので月日が経つに連れ進化する

 日直ということは、今日も誰かが被害にあっているに違いない。

 淳也は猛と違い要領が良く、頭が切れる。なので殆ど淳也がやったとばれない。

 例え、ばれそうになっても巧みな話術でそれを交わす。避けることもプロなのだ。

 とりあえす、メールを返しておこう。

本文:大丈夫だよ。今日は逆に会わなくて良かったよ…。淳也もきっと疲れただろうから…。

 すぐにメールが返ってくる。

本文:既に話は伝わっている。災難だったな…。それより聞いてくれ!!俺はついに快挙をなした!!

   今日のターゲットは担任!!ドアの前に撒いた大量の画鋲が罠と見せかけて、後ろに回避したら

   そこにはアロンアルファ。業務用にしたら予想よりもくっつきが良すぎた。つんのめって壁にも

   たれかけようとしたらそこには…「ペンキ塗り立て注意」その張紙を見た担任の顔といったら…

   もう最高だったぜ!!!!淳也

 ……………ぶっ!!あ、しまった…。

「どうした、天美。また佐藤とメールか?」

「いえいえ!!全然違います!!むせただけです!!」

 なんなんだこの担任は!!本当に驚かされる人達ばかりである。僕にプライバシーはないのか…。

「そうか。なら今の文章を読んでみろ」

「……ぶぶっ!!」

「もういいぞ、天美。廊下に行け」

 ………今日は悉くついてない日だ。



――僕は廊下に立ちながら考える――


――だけど、これが僕の、僕らの日常なのだと――


――色々大変だけど、凄く楽しい――


――こんな日がずっと続けば良いと――


――そう、これは初夏が色めく6月下旬のお話――


――もうすぐ夏休みがやってくる――


――今年もみんなで楽しい夏休みを過ごそう――


――僕はそんなことを考えながら、まだ廊下に立っていた――


――これから先に起こる事なんか知らずに――


――こんな日常がずっと続くと信じて――



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