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悪役王女のわたくしが、自給自足したヤンデレたちから逃亡するまで。  作者: 陽海
ヤンデレ育成編

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07 間接ヤンデレクッキング:すれちがい解消

明日から3,4日ほど更新をお休みさせていただきます。

そのため、本日は書き溜めていた話を全部放出します!

「そういえば最近、騎士部隊に筋の良い新人がいるんだ」


 メレディス兄様が思い出したように言い、わたくしは魔法の発動をやめました。

 時折、メレディス兄様には水魔法の稽古をつけてもらっていました。クレアにも教えてほしいとせがまれて上手く教えることができずにいたところ、メレディス兄様がわたくしの魔法を見てくれることになったのです。ゼノンやノクス兄様とは魔法の系統が違うのはもちろんですが、あの2人はどうも感覚的で分かりにくいんですわよね。その点、メレディス兄様は説明上手で分かりやすかったです。


 興味本位でどんな方か尋ねたら、わたくしの1つ上の15歳の少年で、筋肉が付きにくい身体のようですが剣筋や身のこなしが良い、というお話でした。

メレディス兄様は小さい頃から剣や体術、馬術などあらゆる運動をこなしていて、時間があるときには騎士部隊に顔を出しています。そんな兄様が目をつけるということはよほどの人物なのでしょう。


「マークという男なんだが、姓を名乗りたがらない。良いところの家の出のような振る舞いもするんだが、それにしては粗野な気がする。まあ、それぞれ事情があるし詮索はしないが」


 道理で、とわたくしは妙に納得しました。

マーク・ウォルター、ヒロインのお相手の一人です。子爵家出身の騎士ですわ。このくらいの時期に騎士部隊に入っていたんですね。

 マークは、家庭事情が複雑だったはずですわ。おそらく、名乗りたがらないのも家出か何かして絶縁状態なのでしょう。ノクス兄様とはまた違う、精神が不安定なお方なので、メレディス兄様も少し手を焼いているのですね。


「メレディス兄様が目をかけてくだされば、きっと少しくらいマシになるはずですわ。悪い方ではないですし」

「ん? あ、ああ。ヴェロニカはたまに全部見透かしているような物言いをするよな」

「そうでしょうか」


 すまし顔ですっとぼけておきました。最近、多いんですわよね、こういうの。いっそのこと、もう未来が見える魔法があるとか言っておいた方が楽かしら。


 メレディス兄様から話を聞いて、さっそく騎士部隊を覗きにいくことにしました。

 マークはなんといいますか、ハイな時と駄目な時の落差がすごいんですわよね。ヒロインと出会ってからは一途で良かったのですが、出会いも結構酷かったですし。


 考えながら、歩いていると騎士部隊の訓練場を遠巻きに眺めている怪しい人影が見えました。挙動不審です。近づいてみると、相手はびくりと身体を震わせて、わたくしを見ました。その顔も見知った顔でした。マークの妹、エミリーです。わたくしが何も言わずに眺めていると、慌てたように名乗りました。


「お兄様に会いにきたのですか?」


 遠回しな探りが面倒で、直球で尋ねました。

マークはエミリーとも気まずい仲だったはずです。わたくしが少々高圧的な態度で尋ねたからか、怖い顔をした女が兄のことを言い当てたからなのか、エミリーは少し泣きそうな目になっていました。ストロベリーブラウンのふわふわしたくせ毛に小さな身体です。小動物みたいですわね。


「泣かないで、わたくしがいじめたみたいでしょう」

「ちが、そんなことは……」


 わたくしは聞こえない程度の大きさで溜息をつきました。正直、彼女のこういうところが苦手でした。お家の事情を考えれば、彼女の境遇にも同情しますが、それと意志の弱さや兄に甘えきる態度はまた別ですわ。


「話してみてくださらない? わたくしもあなたのお兄様にご用事があって来たんですわ、用立てくらいならできますわよ」


 少し腰をかがめてエミリーの目線に合わせます。エミリーはぽつぽつと話をし始めました。


 マークは家で虐待を受けていて、魔法を持つエミリーは甘やかされて育ち、自分と兄の境遇の違いを不思議に思っていたそうです。エミリーはエミリーでおそらく、両親の言いなりになっているのでしょうが、兄が家を出ていき、穏やかになった家を見て、自分が両親の言う通りに生きていれば兄に迷惑を掛けず、兄は自由に生きられると思ったのだそうです。

 一度マークは家に戻って来たそうです。きっと家に残してきたエミリーが心配だったのですね、けれど、エミリーは家から連れ出そうとした兄に「わたしは家に残る」と伝えたのだと言いました。


「けれど、それきりお兄様は来て下さらないし、お手紙なんかも返って来なくて……だから、直接会いたいと思って、ここまできたんです」


 エミリーはぽろぽろ涙をこぼしました。酷い家庭状況です。虐待をする親など滅びれば良いと思います。けれど、何とも言えないイライラがありました。


「良いですか、エミリー、あなたは言葉足らずですわ。あなたはお兄様の自由のために家に残ることを決めたのですわよね? それは言いましたか?」


 尋ねると、エミリーはふるふると首を横に振ります。思っていた通りです。きっとマークはその「家に残る」という言葉を悪い方向に受け取って拗れているに違いありません。


「おそらく、お兄様はあなたに、家に残るか、一緒に行くかという選択肢をあげたのだと推測します。あなたは残るという選択肢のみを伝えた。ああいう堅物には聞かれたことに答えるだけではなくて、どうしてあなたがそうしようと思ったのか、という意思を言わなくては伝わりませんわ。わたくしの言いたいこと、伝わってまして?」


 エミリーはこくこくと頷きます。わたくしはなぜ幼子にするような諭しをしているのでしょうか、と少し我に返りつつ、乗りかかった船なので仕方ないと腹を括り、エミリーを訓練場の入り口まで連れて行きました。そのままマークに取次を頼みました。


「今わたくしに話したことをそのまま! 言ってくださいませ。良いですね?」

「は、はい……!」


 マークらしきテラコッタの髪色をした少年がこちらに駆けてくるのが見えました。兄妹水入らずで話した方が良いでしょう、とわたくしはその場から離れました。

 らしくない行動でしたが、わたくしからあれこれ話すよりも、妹から真意を聞いた方がよっぽどメンタル改善に繋がりますわよね。これであのヒロインとの最悪な出会いも無くなれば良いのですけれど。

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