22 だって悪役王女ですもの
大変お待たせいたしました……!!
新生活ってとっても大変ですね(泣)まだしばらく不定期になりますが、短いスパンで投稿できるよう頑張ります!
わたくしとクレア、メレディス兄様の3人で森の中を歩きました。ブラッドからもらった情報通り、サラマンダーがこの森にいるのは間違いなさそうですし、後は分かりやすく残されたトカゲのような三つ又の足跡を追って、いかにも「何か出そう」な洞穴へ向かうのみ、なのですが。
それでは、あまりにも一本道すぎて、親密度が上がる気配がないままチャプタークリアしてしまいますわ!
わたくしを真ん中にして歩いているおかげで、常にわたくしが2人の会話のお邪魔をしてしまっているみたいでとても心苦しいです。というわけで、さっそく作戦実行ですわ。
「では、兄様、クレア、昨日お話したとおりに動きましょう」
兄様はにこりと私の方を見て、頷きます。兄様はクレアを連れ立って洞穴とは反対の方に向かって歩き始めました。わたくしはそれを見守り、洞穴の方へ向かいます。
作戦はこうですわ。メレディス兄様とクレアを2人きりにして、共闘させること。昨日の夜お借りした兄様の上着に、サラマンダーの好物であるミルクの小瓶を忍ばせてありますの。兄様ったら、何も疑うことなく、朝渡した上着を「今日さっそく着ていこう」とか言って着てくださって助かりましたわ。
兄様には、わたくしが先に洞穴を探索するから周囲の警戒をしてほしいとお伝えしていますわ。洞穴にサラマンダーがいたら、ツタ魔法で拘束し、魔力探知機で合図をすることになっています。
ちなみにこの魔力探知機というのは、ノクス兄様が最近作った対魔獣用の魔力探知ができる魔法器具ですわ。特別に一台お譲りいただいたんですの。一応ノクス兄様は危険な魔獣を秘密裏に実験して管理している立場ですから、GPSのようなもので管理している感覚なのかしら。
洞穴までそそくさと歩いていきますと、ブローチ型の魔力探知機が胸元で点滅し始めました。洞穴を覗くとごうごうと寝息を立てて眠っているサラマンダーの姿があります。噂よりかは小さく、少し可愛らしいような気もしますわね。
手始めに、わたくしは静かにツタ魔法を発動して、体を拘束しました。飛び起きたサラマンダーはわたくしに向かって、威嚇するように炎のたてがみを纏いました。
「手荒なことをしてごめんなさいね。あなたがちょーっとだけ、わたくしの頼みを聞いてくれるのなら、すぐに解放しますわ」
ぴくりとサラマンダーの体が動きます。やはり、人語を理解できるのかしら。トカゲ自体は強い生き物ではないけれど、サラマンダーは火の精霊と言われるような生き物ですから、上級魔獣なのでしょうか。わたくしは、持ち歩いていたポシェットからミルクの小瓶を見せました。
「良い子にしていたらこれをあげます。もう一瓶あるのだけど、それもあげますわ」
燃え盛っていたたてがみの炎が鎮まります。わたくしは満面の笑みを浮かべました。先ほどよりも勢いよく明滅を繰り返すブローチがついた羽織ものをサラマンダーの首に巻き付けます。急ごしらえだから、後でちゃんとしたものを作りましょうね。
「同じミルクの瓶を持った人たちを襲って。軽くよ。怪我はさせないでね」
承知したようにさっと洞穴から駆け出て行ったサラマンダーを見送ります。
ああ、やはりわたくしは悪役王女なのですわね。魔獣を使って人を襲わせることに全く抵抗がありませんでしたわ。でも、それもこれもヤンデレを拝むため。共闘、愛、そして執着の芽生え! 早く見たい、待ちきれませんわ!
しばらく小躍りをしながら歩いていると、なにやら戦闘音が聞こえます。わたくしの視界には、望んでいたものが写っていました。
火のたてがみを纏い、襲い掛かってくるサラマンダーを相手に、メレディス兄様とクレアが共に背を預け合いながら水魔法を放っています。
「クレア嬢、無事か!」
「はい! メレディス様!」
「もっと集中して魔法を放つんだ!」
まあまあまあ! クレアが放つ魔法を兄様がサポートしています。まだクレアは水魔法がおぼつかないので、それを心配する目がたまりませんわね。サラちゃんの攻撃をかわしながらも、気がそぞろですわ。
「ヴェロニカはどうしたんだ、まさかこの程度の魔獣に負けるわけもないだろう」
「この魔獣、私たちをあまり害そうというように見えませんし……」
サラちゃんは傍から見ていても、じゃれているようにしか見えませんわ。いや、実際目の前に現れたら恐ろしいでしょうし、襲われていると思うでしょうけれど。お互いを意識するには十分ですし、そろそろ収束させにいきましょうか。
わたくしは着ていた衣服を破り、わざと泥まみれになると、息を切らしたような素振りで駆けだしました。
「兄様、クレア、無事!?」
「あ、ああ問題ない! ヴェロニカこそ、何があった?」
メレディス兄様の表情がわたくしのボロボロの衣服を捉えて険しくなりました。わたくしの声に反応して、サラちゃんがこちらを向きました。伝わるかは賭けでしたが、目で合図すると、サラちゃんはわたくしのツタ魔法で大人しく拘束されてくれました。すぐさま、兄様とクレアが水魔法でサラちゃんを制圧しました。
「はあっ、2人とも無事でよかったですわ。先ほど洞穴で襲われて斜面を滑り落ちてしまったのですわ。それで、少し気を失っていて……」
横目でサラちゃんをうかがいます。横たわったまま、きゅるんとしたお目目でわたくしを見上げています。演技派な魔獣もいるのですね。すっかり懐かれたようですし、後でたくさんミルクをあげましょう。そうね、ノクス兄様に頼んでサラちゃんも可愛らしくできるか頼んでみようかしら。せっかくなら、新しい魔獣探知機ももらって、きちんと首飾りにしましょう。
気がサラちゃんに逸れていると、急にガッと肩を掴まれました。そのままぐるりと、わたくしはメレディス兄様の方へ向かされました。
「怪我は無いな。よく見せてくれ。帰ったら王宮の医師にも念のため診てもらおう」
「い、いやそれほどの怪我はありませんし……」
「駄目だ。傷が残ったらどうする」
怪我も何も、無いんですのよ。偽装がバレる方が困りますわ。
「そうですよ、ヴェロニカ様。きちんとお医者様をお呼びしておきますからね!」
「はは、優秀な侍女がいて俺も安心だ」
そんなところだけ仲良くならなくていいんですのよ。
何とか抵抗したのですけれど、結局医師の前に引きずり出され、「いたって健康、擦り傷もありませんな!」と太鼓判を押されてしまいましたわ。
サラちゃんは連れて帰ってさっそくノクス兄様にお見せしました。ノクス兄様には「魔獣に好かれやすい体質か何かなの?」と半ば的を得たことを言われながら、兄様のところで面倒を見てくれることになりましたわ。
シナリオ通り、わたくしは魔獣を裏で操る悪役王女のような働きをしましたし、メレディス兄様とクレアの仲も上々。アルベール様や他の殿方たちのクレアへの好感度も良い感じです。
この調子でチャプター12までクリアしていけば、理想のヤンデレ世界もすぐ拝めますわね。




