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折刀

まず、南海が仕掛けた。姿勢を真っ直ぐしたまま折田の近くにより、急にしゃがんで逆袈裟の抜刀を決めた。


「流石に斬れないから安心してよ……斬っちゃえたら、一瞬で終わっちゃうしね」

「……」


続いて南海は、立ち上がって刀を右肩の上あたりまで上げて、体を回しながら刀を振った。

今度は折田は後に退いて攻撃を避け、大きく前に踏み込んでその勢いのままみぞおちにストレートを入れようとしたが、南海はさっきと反対に回り、攻撃をかわした。


その後、南海は刀と手、足、膝、肘など、体のあらゆるところを用いて、折田を攻撃した。折田も負けじと殴り返した。


しばらくして、双方の動きが止まった。どちらも同じほどダメージを負っていたが、少しだけ南海の方が傷は浅い様に思われる。


「………テメェ、うぜえな」

「…そっか、ここらの不良の中で一番強いキミに言われたんだから、それは光栄だね」

「……テメェだけ武器持っててずるいなぁ……なあ、ちょっと(それ)"分けて"くれよ」

「…分けるだって?……それはどういう………?!」


南海の刀には異変が起きていた。刀の上半分の刃が、倒れ掛けていたのだ。


かたんという音がなった。下を見ると、南海の刀の刃が落ちていた。

「……なるほど、これが『刀折』ってやつ?」

「正解」

「そっかあ……(刀が折れるほど馬鹿力ってことなら避けるだけで良かったんだけど……これは厄介だな)」

「……さて、(これ)もらうぜ」


そう言って、折田は刃を拾い、横に薙いだ。南海は後ろに下がって避けた。


「こうなったら、ボクも『異能』を使った方が良いかな!」

「使えよ……それでようやく、対等な喧嘩になるぜ!」


「良いんだね……ボクの異能は、二つ名に全く関係ないよ!」


二人は接近して刀を振る。そして真正面で向かい合う。

折田は上に振りかぶり、南海は正眼に構える。

折田は刀をそのまま振り下ろすと予見した南海は、刀を上に上げて防御に入る。


しかし、折田は刃を持っていない方の手で南海の腹の殴りかかった。


「……(馬鹿が!…俺をみくびったみてえだな……テメェはちまちまとうぜえ攻撃を使うみてえだが、俺が使うとは予想しなかった……それがテメェの敗因だ!)」

「………何が、ボクの敗因だって?」

「なっ?!」


南海は左斜め後に下がり、刀を上段に構えて全力で折田の拳に振り下ろす。


「……いてえ…」

「だろうね……ボクも実際、食らいたくないよ…ごめんね」

「……(どういうことだ?さっきこいつは、俺の思考を…)」

「そう、ボクはキミの思考を読んだ」

「?!」

「……さて、これで決着はついたかな?」


そういうと、南海は折田に取られた刃を取り返し、その切先を向けた。


「……はあ、最悪だ。まさか、こんな相性が悪かったなんて……手が信じられんほど痛くてこれ以上戦いたくない」

「えっへーん……さて、これで入ってくれるんだよね?」

「ああ…お前とは仲良くなれねえと思うが、まあ退学を逃れるために入ってやるよ」

「やったー!じゃあ、よろしくね………あれ?そういや名前、聞いてたっけ?」

「……知らねえのか?」

「うん。苗字しか知らない……ごめんね」

刀也(とうや)だ。折田(おりた) 刀也(とうや)

「そっか!ボクは南海(みなみ) 悟理(さとり)。よろしく」

「……お前の名前は知ってんだよ」

「あれ?そうだっけ……まあ良いじゃん」


「……悟理さん、うるさいですよ」

「そうですぞ、さとりん」

「?!……だれだ!!」


南海と折田が話をしていると、校舎裏に誰かが歩いてきた。片方は細身の四角メガネ男、もう一人は鉢巻と制服の上に法被をきた四角メガネのふくよかな男だった。


「あ、アシさん!フルっち!きたんだ?」

「……きたんだじゃないですよ……なんであそこに不良たちが並べられてるんですか?」

「……なんやかんやあってー…ボクと折田で戦うことになったから、さっきまで折田がボコボコにしてた不良たちをそこに置いとくことにしたんだよね…」


「……さすがでござる、さとりん」

「……なんでそうなるんですか?!そしてなんで戦うことになってるんですか?!?!」

「……ボクの言葉使いが悪くて癇に障ったみたい」

「……なら仕方ないですね」

「なら仕方ないでござる」

「えー……ひっど…心外だわ…」

「……あの南海、こいつら誰?」

「ん?ああ、殺陣部の部長のアシさんと副部長のフルっちだよ」

「……お前部長じゃねえのかよ…」


「……折田さん、私たちの殺陣部に入っていただけるのですか?」

「まあそういうこった…えと…アシさん?」

「……芦木(あしき) 宅男(たくお)です」

「拙者はフルっちこと、古井(ふるい) 宅也(たくや)でござる」


「……古井 宅男…なんとまあ、ステレオタイプなオタクだこと…」

「フルっちは、我が部活随一のオタクだからね!」

「さとりん…照れるでござる…後で拙者の今期おすすめ深夜アニメを教えるでござる」

「前に聞いたと思うけど?」

「あれとはまた別の拙者のおすすめでござる」


「……これが、お前の殺陣部か………」

「まあね。これが殺陣部の三年生全員だよ」

「………ん?」

「ボクらの殺陣部は全学年イロモノ揃いだから期待しててね〜」

「………まじか」

「おーまじ!異端ぞろぞろだよぉ」


その日の帰り道

「…………はあ…別に、退学しても良かったんだがな……なんであんな誘いを受けちまったんだろうな…………まあ、いいか。こっちの方が、雑魚を一掃するよりも面白そうだ…」


折田は、勝敗を決した悟理のあの一撃のことを思い出していた。


「………それに、南海(あいつ)をいつか完膚なきまでボコボコにまかしてやりたくなったからな……このかりは、いつか返す!…………覚えてろよ、陣斬り!!」


折田の闘志に共鳴してか、帰り道の夕日はメラメラと燃えていた。

〜人物紹介〜

南海(みなみ) 悟理(さとり)…異能学校三年生。制服は女子用の形のシャツを前ボタンの位置だけ変えた服、そして袴ズボンを履いている。

男性で、自認も男性だが、かっこよさと可愛さどちらも求める性格のため、こんな制服にした。刀が好きで放課後の部活動では常に帯刀している。

折田(おりた) 刀也(とうや)…異能学校三年生 男性 戦闘時、相手の武器を折る異能『折刀(せっとう)』を扱う。不良であり、いつも学ランの前を開けている。

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