第二十四話 笑顔の裏に潜む悲鳴
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トク トク トク〜
女の足音が高村大地の部屋から聞こえてきた。
妻の高村明は外に出てきたが、ふと立ち止まる。
驚いたように目を見開いた。そこには、バイクにもたれかかりながら待っている人物がいたのだ。
クールな雰囲気を纏った一人の女性。
長い間村に戻っていなかった、彼女の旧友だった。
「よう、明。」
「……りな?」と明がつぶやく。
友・加賀美りなの姿を見て目を少し大きくした。
声には嬉しさが混じっていたが、涙の名残がまだ揺れている。
「どうして突然戻ってきたの? めったにないことなのに。」
「当たり前だろう、幼馴染に会いたくなったんだ!」
りなはそう言って、気軽に明の肩を抱いた。
「ハハハ!」
「嘘つかないでよ!」
明も小さく笑って返す。
だがその顔にははっきりと出ていた――この再会が、今の自分にとってどれほど救いだったか。
心の奥で、少しだけ安らぎを感じていた。
「私も手伝いたいんだ。この村に迫っている問題と戦うためにね。」
りなは肩から手を離し、腰に手を当てて自信満々に言った。
「村の問題? ちょっと……もう知ってるの!?」
明は驚愕する。
「もちろんさ、このバカ! 白月さんに聞いたんだよ。」
りなは鼻で笑い、続けた。
「それより、どうしてお前は私に何も知らせなかったんだ、えっ!?」
「ごめん……あまりにも色々ありすぎて……」
明はうつむき、悲しみがまた顔に浮かぶ。
「……そうか。お悔やみ申し上げる。」
りなは静かに、真心こめて言った。
「ありがとう……」
明はかすかに微笑んだが、それは痛みを帯びた笑顔だった。
「旦那さんは?」とりなが質問する。
「彼は……まだ受け入れられないの。」
明は小声で答えた。
「そうか……。じゃあ、乗って。ここに長居するのは危険だ。」
りなは空を指差した。
「確かに……もう雲行きが怪しいわ。何か悪いことが起きてほしくない。」
明はそう返す。
明はりなのバイクにまたがった。
二人は共に村の集会所へ――もちろん、祭りの準備のために走り出した。
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「なにィィィ!!! どうしてお前は全然わかってくれないんだ!!」
怒号が集会所の庭に響き渡った。
がっしりとした体格、光るスキンヘッド、腕まくりをした筋肉質の男。
音楽班の責任者――藤田昇だった。
「うるせぇ! 教え方が下手なだけだろ、この野郎!」
吐き捨てるように返すのは白暮。顔は怒りで真っ赤に染まっていた。
「なんだと!? 小僧! 昨日から我慢して教えてやってるんだぞ!?」
昇は声を張り上げる。
「何度も言っただろ!? お前の教え方が悪いんだよ!! 俺の言葉が理解できねぇのか!? 筋肉バカ!」
挑発的な一言で空気が一気に沸点に達する。
このままでは――白暮が殴り飛ばされるのは時間の問題だった。
「アアアアア!!! もう我慢できん!! 流血沙汰になりたくなければ、今すぐ俺を止めろォ!!」
昇は戦闘態勢に入り、拳を固く握りしめる。
周囲の人々が慌てて飛びかかり、必死に押さえ込んだ。
「落ち着け、昇のバカ野郎!!」
村人の一人、清水陽翔が必死に押さえ込む。
「放せェェェ!!」
昇は全身をねじり、押さえる者たちを弾き飛ばす。
しかし、すぐにまた数人がかりで取り押さえにかかる。
「まるで怪物だな!?」
別の村人、岡部潤が叫ぶ。
「こいつ、本当に“昇バッファロー”だ!!」
ブフッ ブフッ ブフッ〜
昇の鼻息が荒く噴き出し、まるで怒った雄牛そのものだった。
「おい白暮! 生きたければ早く謝れ!!」
陽翔が絶叫する。
「そうだ! だいたい昇は悪くねぇ! お前が和太鼓をまともに叩けないだけだろ!!」
他の村人も次々に声を上げる。
「その通りだ!」
「賛成だ!!」
「こいつ、全然ダメだ!!」
群衆の声がますます大きくなる。
「フン! お前らに何がわかる!? 本当に音楽を理解しているのか!? ただの田舎オタクの集まりじゃねぇか!!」
白暮が鼻で笑う。
「な、何だと!?」
「お、オタクだと!?」
村人たちの顔色が一変した。
そして――彼らはあえて昇を解放した。
全員の瞳が暗く染まり、不気味な気配が庭に充満する。
「覚悟しろ!!」
「おいおい……何だよこれ――」
白暮が言葉を発した瞬間、もう遅かった。
群衆が一斉に彼へ殺到した。
「うわぁぁぁぁ、幸太ァァァ助けてくれぇぇ!!」
白暮が絶叫する。
しかし――親友の幸太は涼しい顔で彼を捕まえると、そのまま群衆へ差し出した。
「どうぞ、ご自由に。」
「や、やめろぉぉぉぉ〜!!!!」
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「音楽班……ずいぶん元気ねぇ〜」
「ま〜、本当にね。おほほほほ。」
集会所の中にいた二人の女性は、外からの騒音を、班の結束力によるものだと勘違いし、苦笑いしながら聞いていた。
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だが、その笑いと怒号の裏で――
誰一人として気づいていなかった。
闇の影が、ゆっくりと村へと忍び寄っていることに。
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ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!
第24話「笑顔の裏に潜む叫び」はいかがでしたでしょうか?
物語も少しずつ核心に近づき、登場人物たちの想いが複雑に絡み合ってきました。
更新が少し遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
お待ちいただいた皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。
次回もまた新しい展開を楽しみにしていただければ嬉しいです。
感想や応援のコメントをいただけると、執筆の励みになります!
それでは、次の話でお会いしましょう
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