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沈んだ太鼓。音のない夏。  作者: エルギ ハングラ
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第十三話 祈りは音に乗って

---


彼らは神社の守り人からの頼みを受けた後、急いで丘を駆け下りた。

息を切らし、こめかみに冷や汗を浮かべ、滑りやすい地面に足を取られながらも、できる限り速く下りようとした。


「手伝いたい気持ちはあるけど……カゲグイと直接戦うなんて……」

コウタは唾を飲み込んだ。「うっ……ムリだ……」


「なんで俺まで行かなきゃなんねぇんだよ?!」

警備員が絶望的な声で叫んだ。声は震えていた。


「お前みたいなヘタレが、どこが警備員なんだよ!」

ハクボが苛立った目で睨みつける。


三人——コウタ、ハクボ、そして警備員の草野ダイスケは、ついに丘の下に到着した。


しかし——


「え?オレ知らねぇけど……歳とるとこんな遅くなるもんなのか?」

ダイスケが周りをキョロキョロと見回し、無表情で呟く。


ドンッ!!


「うわっ!!」

コウタが背後からダイスケの尻を蹴飛ばし、スラップスティックのように前につんのめった。


その瞬間——


「ゲゲゲ……ゲギギ……」


またあの奇怪な音が風に乗って響き渡った。

肌を切り裂くような風と共に、その音は空気を震わせた。

三人は一斉に黙り込んだ。

鳥肌が立ち、心臓の鼓動が早まる。


「お前ら、なにをグズグズしている!!」

霧の向こうから声が響いた。


振り返ると——

目を疑う光景があった。


神社の守り人・ハクヅキが、漆黒の大型バイクにまたがり、顔の半分を覆う黒いヘルメットを被って、静かに座っていた。



---


「速っ!!」

コウタたち三人は同時に驚愕の声を上げた。



---


「それで、どういうふうに乗るの?」

コウタが息を切らしながら尋ねた。


「お前は俺の後ろに乗れ。もう一人はダイスケのバイクにな」

ハクヅキはまるで祭りの誘導でもしているかのように淡々と答えた。


「ねぇ、ハクボ、場所替わってくんない?」

コウタが希望を込めて聞く。


「絶対に嫌だ」

ハクボは即答した。表情は無。


ダイスケは小走りで自分のバイクに向かい、ヘルメットをかぶり、キーを回して……ブオン!

エンジンが唸る。


二台のバイクが準備を終え、全員が装備を整えた。


だが、コウタは震えていた。


「この震え……オレ、カゲグイよりこのジジイの運転の方が怖いんだけど!!」


「ふっ……若造はまだまだ甘いな」

ハクヅキが後ろを振り返る。

目が合った瞬間——


ブオオオオオオオオーーーッ!!


「うわあああああああ!!!」

「レーシングジジイィィィィィィィ!!!」

コウタの叫びが夜を裂いた。


ハクヅキのバイクは銃弾のように坂を駆け下り、夜風を突き抜ける。

タイヤが地面を切り裂く音が鳴り響いた。


「やっべ……」

ダイスケがバイクのハンドルをしっかりと握りながら呟く。


「年寄り……こわ……」

ハクボは虚ろな目で前を見据えた。



---


彼らは村の行政区へと向かって疾走していた。


ぬかるんだ小道を走り抜け、霧の中を突き進む。

大きな橋は静まり返り、細かな霧雨が降る中、濡れていた。

海風が塩の匂いを運び、肌を刺すような冷たさを伴って、遠くから聞こえる波音と共に——

普段は心を落ち着かせるはずの音が、今夜は何か深く、暗いものの囁きのように感じられた。


「海……なんでこんなに不気味に感じるんだろう」

ハクボが小さく呟いた。


橋を渡ろうとしたとき、あるものが目に留まった。


橋の端、鉄の手すりのそばに——

四人の子どもたちが遊んでいた。

無邪気な顔。

この闇夜には場違いすぎる、眩しいほどの笑顔。


「え、あれって……」

コウタが思わず指を差した。


「見るな」

ハクヅキが鋭く言った。だがその声は微かに震えていた。


ハクボとダイスケはすぐに顔を背けた。

手が震え、呼吸が荒くなる。


「やっぱり……」

ハクボがかすれた声で言う。「ダイスケさんが話してた、あの四人の子どもたち……あいつらだ……」


誰もそれ以上、何も言わなかった。


バイクは何も見なかったかのように、ただ走り続けた。



---


やがて、村の中心部が見えてきた。

伝統的な提灯が風に揺れながら、淡く光っている。

すでに数人の大人たちが集まり、不安そうにざわついていた。

その人混みの中に——

コウタの父と叔父の姿があった。


「いたっ!」

コウタが指差して叫んだ。


「やっと来たか」

マサキ——コウタの叔父が呟いた。


バイクが群衆の前で止まり、エンジン音が静かに消える。

そして再び、静寂が村を包んだ。


「よう、ハクヅキさん」

マサキが短く挨拶する。


「迷うな、マサキ」

ハクヅキは冷静に、だが重く答えた。


「必要な楽器はすべて集まった」

マサキが言い、村人たちが後ろから楽器を掲げて見せた。

木、金属、革で作られた伝統的な楽器たち——年季は入っていたが、丁寧に手入れされていた。


「こちらは『カグラの歌』の完全な巻物だ」

ハクヅキが言い、コウタがその巻物を手渡した。


だがその直後、奇妙な沈黙が流れた。


楽器はある。歌もある。


だが——

どう演奏するのか?

カゲグイを一時的に封じるのではなく、完全に終わらせるには?


「この曲は、記された通りに正確に演奏しなければならない」

ようやくハクヅキが口を開いた。

「音。順番。リズム。演奏する“時”さえも、一つとして外してはならない」



---


その時、静かな声が会話を裂いた。


「すみません……質問いいですか?」


全員が振り返る。

コウタが不安そうに、だが真っ直ぐな目で彼らを見た。


「カゲグイを封じる以外に……このカグラの歌の、本当の意味って何ですか?」


村人たちは顔を見合わせ、困惑した表情を見せる。


「僕の聞いた話では……」

コウタは続ける。

「この歌は、犠牲になった人たちへの祈りでもあると。闇に呑まれた魂を慰める歌なんだと」


沈黙。


数秒の静寂の後、年老いた男が静かに呟いた。

「……ああ、そうか。やっと分かった……」


コウタは息をつき、そして言った。


「なら……カグラの歌を“戦うため”ではなく、“捧げるため”に演奏しませんか?

彼らを忘れていないと伝えるために。

彼らの想いに応えるために。

僕たちが、できると信じて——祈りとして演奏しよう」


ハクヅキはうっすらと笑った。

「もちろん。やろう」


村人たちは一人、また一人と立ち上がり、準備を始めた。

楽器を整え、音を確かめ、邪を祓うためではなく——

心からの願いを奏でるための演奏に向けて。


それは、今夜すぐに始まるわけではない。


だが、すでに動き出していた。


そして——

音が、再び響きはじめる。



---

---


音は再び鳴り響く。

影はそれを探しに動き出す。

そして残された唯一のものは――祈り。

祈りこそが最後の希望となる。


ここまで物語を読んでくださり、本当にありがとうございます。


もしこの作品があなたの心に何かを残したのなら、ぜひブックマークや評価をしていただけると、とても嬉しいです。

コメントも大歓迎です! あなたの一言が、これからの大きな励みになります。


今後とも、どうぞ応援よろしくお願いいたします。



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