第十一話 影の断片、音を喰らう夜 (第二部)
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コウタが振り向いた――
そして、母と伯母が床に倒れているのを見つけた。
父と叔父がすぐに駆け寄り、様子を確認した。
「ただの気絶だ……」と、叔父が囁いた。
「その方がいい。」
コウタの父は引き出しからガムテープを取り出す。
鼻を確認する——まだ呼吸している。
そして、ためらうことなく、母と伯母の口にガムテープを貼った。
「な、何してるんだよ?!」
ハクボが怒りと恐怖を混ぜた声で叫んだ。
「どうしてそんなことを……」
「音を出さなければ……彼女たちは安全だ。」
と、コウタの叔父が返した。
ブラアアアアアッ!!!
ドアが壊れ始めた。
木の隙間が開き、その向こうに“何か”が見えた。
「か……けぇえ……」
理由もなく恐怖だけを伝えるその言葉が、彼らの耳に届いた。
床の水たまりから、何かがゆっくりと現れる。
誰も気づかなかった……
ハクボの背後に、すでに一体の化け物が立っていることに。
その化け物には目がなかった。
口は泥のように開いていて——
そして、濡れた手でハクボの口を覆った。
ハクボは動けない。
声も出せない。
ただ、静かに泣くことしかできなかった。
父も、叔父も、コウタも――恐怖に満ちた目で彼を見つめる。
そして、コウタの叔父が人差し指を唇に当てた。
「シー……」
——静かに。
ハクボは息を止めた。
化け物はゆっくりと身をかがめた。
嗅いでいる。
発せられなかった音を、探している。
ダン!!
コウタの父が、壁に箒の柄を打ちつけた!
化け物が素早く振り向き、その音の方へと移動する。
ダン!!
今度は叔父も壁を叩いた——注意をそらすために。
その間に――
ブラッ!ブラッ!ブラアアアッ!!
古いドアがとうとう開いた。
全員が恐怖で黙り込む。
聞こえるのは呼吸と鼓動だけ。
黒い化け物が二体、濁った水の塊のような姿で中に入ってくる。
コウタの叔父が合図を送る。
部屋の端へゆっくりと進むように。つま先立ちで。
みんなそれに従い——息を殺す。
鼓動までも、抑えようとする。
化け物たちは、部屋の隅々を手探りしている。
――残るは階段。
ゆっくりと、一段ずつ……
キィ……ッ!!
踏んだ木の板が軋む音を立てた!
「か……けぇえ!!!!!!」
化け物が振り向く。
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!
四人が走り出す。
全力で。
音はない。
何も聞こえない。
あるのは、脈打つ血と詰まる息だけ。
化け物たちが背後から追いかけてくる。
コウタの父が後ろに物を投げて、簡易的な障壁を作る。
だが……
化け物は速すぎた。
どんどん近づいてくる…………もっと、もっと…………
そして——
「助けてぇええええ!!!!」
声だ!
声が響き渡った。
逃げる四人の足が止まる。
誰かが、外で叫んでいる。
化け物たちが振り向き、その声の方向へと素早く向かっていく。
コウタたちの存在を無視して。
彼らは恐怖の中で、安堵を覚える。
窓から外を覗くと――
一人の男が、村の水浸しの道で、カゲグイの一部に追われながら転げるように逃げていた。
そして、その一秒後——
クラッ!!
その声は消えた。
男の首がねじれた。
体は天井に叩きつけられるように吹き飛んだ。
血が、水面に広がる赤いインクのように滲んでいく。
たった一秒の叫びが響いた。
——静寂。
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ドクン……ドクン……
心臓が鳴っている。
恐怖と混乱の中で、まだ現実を信じられない。
そして……その緊張の最中に――
トン… トン… トン…
太鼓の音。
ヒューー……
笛の音。
チャラ…… チャラ……
鈴の音。
祭りの音楽。
だが……その聴覚の混乱の中、彼らはその音楽をはっきりと感じた。
外では、化け物たちが、聞こえていないはずの音を追っていた。
男の死体は消えた——影に喰われ、痕跡すら残さず。
コウタの叔父は、うつむいてつぶやく。
「俺たちが恐れていた“音”が……助けてくれた……」
雨は少しずつ弱まっていく。
血の匂いは、濡れた土の香りへと変わっていった。
それぞれの目が、窓の向こうの出来事を見つめていた。
理屈では説明できない何かを、確かに目にした。
恐怖の象徴だった“音”が、今や——守護の音に変わった。
そして、この夜——
音が鳴らされた。
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今夜、音は再び戻ってきた。
静寂を破るためではなく――
「誰が生き残るか」を選ぶために。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
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それでは、「第十二話」でまたお会いしましょう。
沈む太鼓の音と、音なき夏の中で――。
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