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⑨(重大なネタバレを含むため、本文中に章題記載)

 ⑨第一主人公の死を以て物語が終わる


 両作とも、最後に第一主人公が死ぬことで物語の幕を閉じます。


 しかし正直なところ、筆者はこの点にそこまで似たものは感じません。ラインハルトと(ライト)の退場は、その印象が随分ちがいます。




 ラインハルトは不治の病でこの世を去りました。敵対していたイゼルローン共和政府に純軍事的に敗北したわけでもなく、最期まで皇帝としての威厳を保ったまま旅立っていった印象がつよいです。


 終盤のシヴァ星域会戦ではユリアンたちにブリュンヒルトへの侵入こそ許していますが、それは彼が病に倒れ一時的に帝国軍の指揮系統が麻痺してしまった故です。


 しかもこの時、ラインハルトが本気で侵入したユリアンたちを始末するつもりであれば、艦内の兵力を総動員していつでも殲滅できたはずです。ところが彼は指示らしい指示も出さず、傍らに控える歴戦の勇士ミッターマイヤー、ミュラーの両雄が艦内の戦いに介入することさえ許可しませんでした。このことから艦内防備に全力を注ぐ気がなかったことは明らか、ユリアンの力量を試すことに重点を置き、寧ろ敢えて自分の元まで来させたがっていた節さえうかがえます(それはそれで部下に無用の流血を強いることになってどうなのよ、とも思うのですが……)。


 結果ユリアンは無事彼のもとへたどり着き和平交渉を実現させるのですが、これもユリアンが「認められた」という色彩が強く、ラインハルトが敗北したという印象を抱く読者はまずいないでしょう。


 統治者としてのやり様をみれば疑義を抱きたくなる点は多々あるものの、依然ローエングラム王朝は宇宙の大半を支配下においていたこともあり、最後まで"強者"としての格は保ち続けたと言えるでしょう。




 一方、夜神月の最期はひどいものです。おのれの策をニアに看破され、キラとしての正体も暴かれ、正当性を演説するも誰ひとり耳を貸さず、松田に撃たれ血みどろでのたうちまわり、崇拝者だった魅上にさえ罵倒され、自分が利用してきた女たちに縋ろうとするも当然不可能で、最後はリュークに頼ろうとしたらノートに名前を書かれジ・エンド……み、惨めすぎる、改めて列挙してたらしんどくなってきた(笑)


 悪役とはいえ一応主人公なんだからもっと手加減してやれよ、とつい言いたくなってしまいますが……「子供たちが月の真似したがらないよう徹底的に堕とせ」とでも編集部から指示出てたんですかね?(映画やアニメではちょっとマイルドになってますね、この月の最期は)


 もう格もへったくれもあったもんじゃありません。ニアがいくら「メロがいなければ私は負けていた」と言ったところで、読者は「本来は月の勝ちだったんだ!」なんてとても思えません。そもそも2部の月は終始精彩を欠いていたように見えます。Lより劣るはずのニア、メロに押され続け気がついたら最終回向かえてた、そんな印象です(その辺がデスノ2部が1部に比べると不評な理由でしょう)。


 運も味方したとはいえあのLを抹殺した時の輝きはどこへ行ってしまったのか、と問い詰めたいくらいです。やはり勝利の栄光で慢心してしまったのか? 或いはLとの死闘及びその後5年にも及ぶキラとしての暗躍で、心身ともに相当疲弊していたとも考えられます。


 だとしたら没落直前のナポレオン1世みたいですね。そういえばラインハルトのモデルの一人はナポレオンだと、田中芳樹先生ご自身が度々言及しておられます。ほら、ここにも共通点が……というのは無理が過ぎるか(笑)


 キラ帝国も瓦解し、世界は元の秩序が乱れた時代に逆戻りします。この辺も銀河に統一王朝を残して逝ったラインハルトとは対照的です。月の死後は一部のキラ信者が祈りを捧げるだけ……地球教みたいになっとるやん。




 まあこの辺は架空戦記と超常サスペンス、というジャンルの違いも大きいでしょう。現代日本を舞台にした作品で乱世の姦雄気質の奴が野望を達成してしまったら色んな意味でやべーことになります。ましてや掲載誌は少年ジャンプなわけだし。


 ラインハルトも生まれるのがあと1600年ほど早ければ、単なるイタい奴で終わった可能性が高いです。それはそれで見てみたいけど(キルヒアイスの苦労がしのばれるな……)。


 


 ともかくここでは、筆者としては「最後に第一主人公が死ぬ」という現象だけは一致している、と主張するにとどめさせていただきます。パズルの最後のピースとしてはパンチが弱いのは否めませんが、いたしかたないでしょう。

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