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ファーストコンタクトin俺の部屋


登場人物


【俺】・・・本名【阿迅座あじんざ 四郎しろう


年齢(26歳)

とあるベンチャー企業に勤める社会人。

黒髪黒目で中肉中背の、典型的な日本人である。

どことなく、非日常的なモノに憧憬の念を抱いているフシがある。


【???】・・・四郎の前に現れた謎の少女。その正体は………

 ある日、俺は『ブラックホール』に出会った。



 何を言っているか分からないとは思うが、本当に俺はブラックホールに出会ったのだ。



 ……あれは、そう……夏の音が近付く6月の頃―――――








 ◆ ◇ ◆






 ―――――その日は、土砂降りの雨が降っていた。





「…うっひ〜〜!―――びちょびちょだな、こりゃ。」


 服を雨でビショビショに濡らした俺は、そんな独り言を言いながら、一人暮らしをしているアパートの玄関先に転がり込むように帰宅した。

 傘はさしていたが、横向きに吹く強風のせいで雨が横殴りの雨となり、殆ど意味が無かったのは辛い。


「……困るなぁ……明日も明後日も大雨らしいし?……梅雨なんて無くなればいいのに……。」


 個人の力ではどうしようもない天気へ悪態を吐きつつ、濡れたスーツを脱ぎながら俺は1つだけのリビングへ繋がるドアを開ける。


 その先にあるのは、いつもと変わらない自室の風景。


 ……その筈だった。



「すぴー……すぴー……すぴー……すぴー……」



 聞こえてくる、()()()()()()()()()()


「え…?ん?????………んん??????」


 思わず俺は2度見――いや、3度見してしまう。


 ――――なぜなら、俺の部屋のど真ん中で()()()()()()()()()()()



 は?

 え?

 なんで?鍵掛かってたぞ??

 てか誰?不法侵入??



 一瞬の間に、脳裏をありとあらゆる言葉と思考が駆け巡り、俺は思わず手に持っていた濡れたスーツを、床に落としてしまう。


「う……うにゅう…………」


 大して大きい音はならなかったが、俺の気配に気付いたのかして、部屋の真ん中で堂々と寝ている女の子が身動ぎをした。


 はっ、となった時にはすでに時遅し。瞼をパッチリと開けた彼女と、目が合ってしまう。


「あ。」


「あ。」



 2人の声が、さして広くも無い部屋の中で、やけに大きく響いた。


「やば。」


 悪戯が見つかった子供のように、その女の子は慌てた表情で此方を見上げる。

 一方で、俺は相変わらず思考停止していた。……こんなコト初めてなのだ、仕方ない。(寧ろ経験済みだったら怖いだろ?)




「あ、あの………キミは……誰だい??」


 たっぷり1分は見つめ合って、俺は漸く誰何の声を絞り出す。


 少女は、一瞬逃げ場を探すように瞳を左右に動かしたが、やがて観念したように目を伏せて、ため息と共に口を開いた。


「……僕は、コラプ―――『コラプ=シュヴァルツシルト』。――――またの名を【ブラックホール】。

 ……はじめまして、人間のおにーさん。」


「????????」




 ――――何を言ってるんだ、この娘は???


 俺が最初に抱いたのは、そんな反応であった。


 名前が矢鱈と長ったらしいのも、僕っ娘だったのも、()()()()()()()()()()()()()()()()のも、その時は気にならなかった。


 むしろ、【ブラックホール】という台詞の方が、俺の注意を引いていたのだ。


(ブラックホールって………あの、ブラックホールなのか……?)



 ………【ブラックホール】―――それは、光さえ逃さない超強力な重力を持つ天体であり、太陽の30倍以上の質量を持つ星が寿命を迎えた後に生まれるモノである…とされている。


 子供向けの宇宙図鑑とかにも出て来る位にはポピュラーなモノであるが、そのブラックホールと目の前の女の子を結びつけるのは、どう足掻いても不可能に思えた。


 もっとも、何かの隠語ならまた話は別だが――――


「あ、その顔信じてないでしょ??」

「うん。」(即答)


 ――――なんなら不審者だと思ってます。或いは物凄く痛い子か。


 そんな俺の心の声が聞こえた訳では無いだろうが、少女――コラプ――はフワリと床から1メートル程浮かび上がった。


 この時点で現実離れした行動だが、其処から起きたことは、更に現実離れした事だったのだ。


「えいっ」


 可愛らしい掛け声と共に、床に落とした俺のスーツが独りでに浮かび上がる。


「あ、俺のスーツ……!?」


 俺が我に返って取り上げようとした瞬間、スーツは俺から離れて、彼女の方へ凄いスピードで吸い寄せられていった。


 そしてそのまま、彼女の掌の中へ消えてしまう。あとには、塵1つ残らない。


「えええ?!――ちょ、俺のスーツ返せよ!?それ無いと出社出来ないって!!」


 …いや、もう一着あるけどさ!でもそのスーツ、決して安くはなかったんだけど?!


 慌てて、俺は彼女へ近付く。何をされたか全く分からなかったが、何かとんでもない事をされたのは分かった。だが、それはそれとしてスーツは返して欲しい。


「焦らないでよ、おにーさん?―――ハイ。どーぞ。」


 なんてことは無い、と言わんばかりに彼女は手を振った。

 其処から出て来たのは、新品同然にピカピカになった俺のスーツ。

 さっきまで濡れていた筈なのに、何故かしっかりと乾いており、ご丁寧な事にきちんと畳まれてすらいる。


「え、あ、ドーモ??」


 下手なクリーニングに出した時より綺麗になっているスーツを受け取った俺は、空いている手で自分の頬を思いっきり抓ってみた。


「痛っ………」

「当たり前でしょ、おにーさん。夢じゃないんだから。」

「………て事は、コレは現実か………。」


 俺は呆然となりながら、取り敢えず畳まれたスーツをハンガーに架ける事にした。


 その間、少女はふわふわと浮遊しながら、此方を目で追っている様だった。


「……なぁ。じゃあ、キミは本当にブラックホールなのか?あの宇宙に有る、何でもかんで吸い込む天体なのか??」


 宙に浮く彼女へ、俺は改めて恐る恐る問い掛けた。


「そういったじゃん。証拠まで見せたのに、まだ信じてくれないの??」


 彼女がゆっくりと無重力的挙動をしながら、俺に目を向ける。

 その瞳は、宇宙を凝縮したかのように、何色とも言えない色で煌めいていた。


「いや…。まだ理解が追いついてないだけで……そもそも、俺の知ってるブラックホールとは、余りにも差が………」


 かなり狼狽えつつ、俺はふわふわ浮かぶ少女へ目を向ける。

 そもそも、なんでブラックホールが人間(しかもロリ!)の姿をして、俺の部屋にいるのか。

 まず、そこから理解が追いついていないのだ。


 それを見た彼女は、宙でクルリと一回転した。


「おにーさんは、多少僕達の知識を持ってるみたいだから言っとくけど、ヒト達がブラックホールと呼ぶ『アレ』は、僕達の持つ『形態』の一つにしか過ぎないんだ。」


 そう言いつつ、彼女は右手の人差し指を立てた。

 その先端に、グニャリとした歪みのような物が現れる。


「宇宙に鎮座するアレは『吸収体』。大規模なリソース収集を行う為に、その場から動かずに居たい時とかに僕達が取る姿だよ。

 ――で、今の僕みたいな姿の事を、『遊離体』って呼ぶんだ。

 その目的は、吸収体では力が届かない遠方へ赴き、多種多様なリソースを収集する事だね。

 2つの姿は分離可能且つ、吸収したリソースを共有出来るから、僕達の『成長』の為には、遊離体での行動が結構大事になってくるんだよね。」


「ごめん。マジで何一つ理解できない。」


 ――俺は完全に宇宙猫と化してしまった。吸収体?遊離体?リソース収集?なんのこっちゃ??


「うーーん。そっか…。ヒトにとっては馴染みのない話だもんね…。ブラックホール界隈では常識なんだけど。」

「ブラックホール界隈?!?!」


 なんだその宇宙規模の界隈。こわっ

 てか、その話の感じだと、宇宙中のブラックホール同士に面識がある事に………


「あるよ?僕達は高次元で交信可能だからね。時々恒星吸収パーティー(お茶会)とかするし。」


「えぇ………」(常識が崩れる音)


 紅茶キメるような感覚で、恒星キメないでもろて……。


「―――ま、僕はまだ()()()()()のブラックホールだから、吸収体を持ってないんだけどね。

 アレは、ある程度リソースを集めないと取ることの出来ない形態だから。」


 そう言いながら、更に宙で一回転する彼女。


「……さっきから言ってる、その『リソース』って何の事なんだ?」

「僕達が成長する為に必要な物質の総称さ。――僕達ブラックホールの目標は、リソースを集めてより質量の大きいブラックホールへ『進化』する事。

 ――そして、最終的には次元の壁を越えて『宇宙の外』へ行き、そこで溜め込んだリソースを消費して新しい『世界』を創造する事なんだよ。

 早い話が、全てのブラックホールは軈て【神】になる為に存在しているってことだね。」


「いや、スケールが壮大過ぎんだろ………。」


 俺は若干思考放棄気味になりながら、床に座り込んだ。

 次元の壁とか、宇宙の外とか、最終的に【神】になるとか、ちょっと理解の及ばない領域の話が多過ぎて、まともに頭が回らない。


「だよね~〜。人間のおにーさんには、ちょっと壮大すぎる話だったかな?」


 宙をゆっくりと回りながら、彼女は微かに笑った。


 俺はなんとか頭の回転を取り戻し、未だ俺の部屋の真ん中でプカプカと浮かぶ彼女を見上げる。


「……取り敢えず、キミの事は大体分かった。色々理解が及んでないところもあるけど、まぁ今は納得しとくよ。―――ただ、1個聞きたい。

 ………そもそも、なんで俺の部屋で寝てたの???」


 彼女の顔が、バツの悪そうな顔に変わった。


「……いやぁ……。雨宿りしようと思ってお邪魔したんだけど、眠たくなっちゃって…。えへっ」


 そう言って、誤魔化すように彼女は舌を小さく出した。


「俺、鍵掛けてた筈なんだけどなぁ…」

「窓すり抜けて入ったから。それぐらい朝飯前だよ。」

「……もう驚かんぞ。」


 透過能力なら仕方ないね(ヤケクソ)



 ―――てか、雨宿りにお邪魔したと言う事なら、この雨が上がった時、彼女は何処へ行くのだろうか?何か行くアテがあるのだろうか?…というか、そもそもなんで地球にやってきたのだろうか??


 ――そんな事を疑問に思って尋ねてみると、彼女は少し考えている風だった。


「うーーん……。考えてないや。…この星に来た理由も、この星の色んな物を吸い込んで、僕のリソースに変える為だけだし……。

 おにーさん、なんかオススメの物質ない?地球(この星)に来たのなら、一度は吸い込んだ方が良いよってヤツ。あ、スーツはもう良いよ。」

「そんな『〇〇に来たら、一度は食べたほうが良いグルメ』探してるみたいなノリで言われても………。」


 やはりブラックホールの感性は良く分からない。


 俺がそう答えると、彼女は暫く思案する様にプカプカしていたが、やがて徐ろに手を打った。


「あ、そーだ。―――いっその事、このままおにーさんの部屋に留まるってのも、一つの手かもね。」

「えっ。」


 唐突な居候宣言に固まる俺。――そんな俺を他所に、彼女は体の回転を止めて此方を見下ろしてきた。


「僕はまだ、この星の事良く知らないし?ファーストコンタクトがそれなりに上手くいったから、取り敢えずおにーさんを最初の協力者にするのも、悪くは無いかもね〜。」


 そう言いながら、俺の部屋をあっちへふわふわ、こっちへふわふわと飛び交うコラプ。


「い、いや、ちょっと待ってくれ。そんないきなり…」


 俺の困惑の声は、途中で彼女が壁をすり抜けて、隣の部屋へ行ってしまった事で遮られた。


(うわ、ほんとにすり抜けた!?)


 俺が驚いていると、直ぐに彼女が戻って来る。


「隣の部屋、空いてるね。――おにーさんにも『ぷらいばしー』ってモノはあるだろうから、隣の部屋を僕の部屋として使うことにするよ。」


 そう言って、彼女は俺の目の前までフワリと飛んで来た。

 そして、急展開に頭が追いつかない俺の前で、彼女は笑顔で口を開く。




「と言うことで、よろしくね。おにーさん♪」

「えぇ………」


 断ろうと思えば、断れたかもしれない。

 しかし、その時俺はそうはしなかった。


 もしかしたら、俺は『期待』していたのかもしれない。

 目の前に現れた常識外れの存在が、自分の『ありきたりな日常』をひっくり返してくれる事を………






 ――――コレが、俺とコラプ=シュヴァルツシルトの最初の遭遇(出会い)なのであった。


【コラプ=シュヴァルツシルト】


〈ステータス〉


性格・・・快活かつ自由気ままで好奇心旺盛

吸収体・・・未発露

遊離体・・・見かけの身長133.1 cm

      体重(質量)1.3M☉

      誕生年 162年前


好きなもの・・・珍しいモノ 可愛らしいモノ

嫌いなもの・・・ウニョウニョしたモノ ■■ッ■■ー■■■■ー


〈標準能力〉

【吸収分解】【原子保存】【原子操作】【情報保存】【物質再構築】【物質透過】【時空間転移】


固有特異点・・・ 【???】

      


〈容姿〉

銀髪のセミショート。(銀色って良いよね)


宇宙服を連想させるような、すこしブカブカの白っぽい服。(作者の衣類知識はゴミカスなので、各自の想像にお任せします)

下はベルト付きの黒いタックショートパンツ(やや大きめ)に、同じく黒のサイハイソックス。(太腿の上の方まで隠れるヤツ)

靴は黒と白のスニーカー。


また、腰回りには彼女の持つ【降着円盤】の一部が、光る天使の輪の様な形で露出している。

コレは、感情の起伏により回転が速くなったり、形が変わる。

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