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チートライフデビュー

小説家になろうでありがちな奴を書いてみました。頭が痛くなっても責任とれませんのであしからず。

人型の生き物を撃つのに訓練した人間でも最初撃てないってデータがあるんですが、こいつは例外なんでしょうね(笑)

 ここは地球とは違う異世界。そこにある大陸の、ある国の、辺境にある村でのこと。

 柵に囲まれた村の唯一の出入口の正面に、10代半ばぐらいの少年が立っていた。

 黒い髪にこのあたりでは見かけない稀有な服を着ている。村人は「ひょっとして貴族なんじゃ」と疑っているが、当人は旅人としか言わない。


 そして彼は今、両手にこの異世界には存在しないはずの武器、”拳銃”を構えて連射していた。


ドン!


「わぐ!?」


ドンドン!


「ぎゃぴ!」

「べっ……」


 村を襲っているモンスター……ゴブリンと呼ばれているそれの頭や胴体が、大きな音がする度に破裂していく。

 肉塊となった群れの仲間を気にも留めず、ゴブリンたちは音がする方へと本能で集まってくる。どうも仲間をやられた怒りや恐怖などはないらしい。

 大昔に作られた生体兵器の末裔、という話から機械に近いのだろう。

 どちらにせよ俺からすれば実に好都合だ。連中は律儀に村の入り口から密集して入ってくる。これだけ密集していれば狙わなくても撃つだけで当たるんだから。

 まあ貰ったチート能力で、目をつぶっても面白いように急所に命中してくれるから変わらないけど。


 ゴブリンを全滅させると、避難していた村人たちがやってきて、モンスターたちがみな倒されていることに驚き、喜びの声をあげた。

 そしてその中から、スタイル抜群で紅色の髪をした少女が走り寄ってきた。


「コウヘイさん、怪我はありませんか」

「ファーナさん、大丈夫。もし怪我しても回復の銃弾で治せますし」


 俺の言葉を聞いて彼女―――ファーナは安堵の笑みを浮かべた。その姿はまさに女神そのものであり、思わず抱きしめてしまいたいぐらいだ。

 しかしここはモンスターの死体が山のように転がっており、村人たちもこっちを見てヒソヒソしている。とてもそんな気分にはなれない。

 中にはファーナという超絶美少女と親し気にしている俺を見て嫉妬の目を向けてくる男もいるぐらいだ。俺ってこの村の救世主だってこと分かってる?

 ついさっきまで「お願いです助けてください」と頭を下げてきたの、もう忘れているのか?


 そんなことを考えながら、コウヘイと呼ばれた少年は思い出す。自分が転生したときのことを。



 前世の日本で生きていたころは、将来に希望も持てず、惰性で生きているような会社員として過ごしていた。唯一の楽しみはネットサーフィンだけ。

 恋愛にも人付き合いにも興味を持たず、ただ言われたことだけをこなす日々。


 それが突然終わったのは、いつものように駅のホームで電車を待っていたとき。

通過する急行電車が近づいてくるのを、通勤客の列の先頭でぼけーっと見ていたら突然背中を押されたのだ。

 気づけば線路の上に落下していた。落下のショックで全身がしびれて動けない自分が顔を動かすと、急行電車が目の前に……。


 次の瞬間、真っ白な空間に座り込んでいて、眼前に滅茶苦茶綺麗なお姉さんが立っていた。

紅色の髪の毛を腰まで伸ばし、スタイルは出るところは出て引っ込むところは出ている、実に男好きのする豊満なものであった。

さらに身にまとっているのは薄い布だけ。大事なところは見えそうで見えないぐらいギリギリで、布の下のたまご肌が透けて見えていた。


 あまりのことに訳が分からず、そして目の前の女体美のすばらしさに心奪われて鼻の下を伸ばしていた自分に、お姉さんは頭を下げてきた。その拍子に豊満な胸がたゆんと揺れる。


「申し訳ありません。私のミスであなたを死なせてしまいました」

「はあ?」


 聞けば彼女は女神さまらしい。この神秘的な美しさなら納得である。

 本来なら駅で隣に立っていた人間が死ぬはずだったのだが、間違って自分が突き落とされたそうだ。


「私はあなたがいた世界には直接干渉できないので、代わりにある条件を満たした人間に働きかけることで、間接的に目的を果たそうとしました。ですが、その人間が貴方と間違えてしまい……」

「なるほど、でもそれはあなたじゃなくて、選んだ奴のミスでは?」

「その人間を選んだのは私です。実行したのは違っていても、私が干渉したことが原因ですので、責任があります」


 なかなか潔い。上司もこのぐらい部下の責任を取って欲しかったな。


「ちなみにその条件とは……」

「二つありまして。一つはもう失うものがなにもない、人生崖っぷちまで追い込まれていること。二つ目は、目的の人間に強い怒り、恨みを抱いていることです。何せ殺人をそそのかすので」


 そういえば女神様といえど、やっているのは殺人教唆だ。そこまで消さなきゃいけない理由とは。


「詳しくは話せませんが……ターゲットを放置していれば、いずれ世界大戦に発展して何十億人という人命が失われてしまいました」


 想像以上にものすごい理由だった。どんなことをすればそうなるんだ。


「ちなみにターゲットは、選んだ人間が念のために所持していたナイフに刺されているので、目的自体は果たすことができました。ですが、代わりに何の関係もないはずの貴方が巻き込まれてしまったのです。

本当に申し訳ありません」

「あの、この流れだとひょっとして、生き返るとかは無理、ってことですか?」

「はい。そのお詫びといってはなんですが、別の世界に転生してもらい、第2の人生を歩んでいただくことになります」

「マジですか!?」


 異世界転生。ネット小説で飽きるほどあるジャンルで、話の内容もご都合主義がひどいものが多いが、それでもハマっている。

それが自分に起きるとなれば、テンションは爆上がりである。


「それって、チート能力をくれるってことですよね!」

「チート? はい、すぐに死んでは意味がないので望む力を差し上げるつもりですが」

「よっしゃー!」


 思わずガッツポーズをしてしまう。

異世界転生といえばチートで無双してハーレム作ってすべてが望みのままに生きられる。そんな夢のような生活が送れるとなれば、喜ばずにはいられないのだ。


 女神様が「もう家族や大切な人と会うこともできないので、せめて向こうでかけがえのない出会いがあることを願っています」と言っていたが、テンションが上がっていた俺の耳には届いていなかった。

 職場でもプライベートでも大切な人なんていないし、家族についてもこの時の俺はまったく頭になかったのだ。


 そして俺は「10代の若い体に転生」すること加え「ジャムもしない絶対に壊れないずっと新品みたいに綺麗、望めばいつでも自分の手元にやってくる、何発でもどんな弾丸でも撃てる拳銃」と「どんな武器でも自由に使いこなせる上に病気もしないし回復も早いすごい身体能力」を望んだ。

 それを聞いた女神様は「異世界だと言葉が通じませんが」と聞くと、言葉の問題をすっかり忘れていた俺は追加で「どんな言語でも自由に翻訳できる能力」ももらった。

女神様は嫌な顔をせず、それどころか慈愛のこもった顔で見つめてくる。

それを見ていた俺は、この女神様と離れたくないと思ってしまった。


「あの、女神様「申し遅れました。私はファーナと申します」……ファーナ、さん。ここでお別れなんでしょうか?」

「え? はい、そうですね。それにあなたを死なせる原因を作った私といつまでも一緒にいるなんてコウヘイさんも嫌でしょう?」

「とんでもありません!」


 俺は彼女の手を握って大声で叫んだ。

 いきなりのことにびっくりしたのか、はたまた男性に手を握られたことが恥ずかしいのか、ファーナは頬を赤くした。


「ファーナさんみたいなものすごい美人さんと一緒にいられるなんて、夢のようです。嬉しくてたまりません! 一緒に異世界についてきてもらえませんか!?」

「ええ!?」

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