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迷走するAI

  以前AIが自ら新しいことが苦手だと言っていたが、何度も利用していくにつれてそれが顕著に伝わってくる。例えば「AはBである」という長年認識されてきた事実があって、それが最近になって「AはCである」に変更になった。そこで、AIに対して「Aは何?」と訊いてみると、きっぱりと自信満々に「AはBです」と断言する。それだけでなく、AがBであった時の細々した説明文を表示してくる。その時点で彼への私の信頼は半減してしまう。まあでも、トップページにある「AIは間違えることがあります」という断りの一文は、こういうことを指しているのだと納得する。

 反対に自らの得意なこととしては語学を挙げていたので、語学の中でも何語が得意なのかと訊いてみると、得意な順に表にして示してくれた。それによると一位が英語で二位が日本語三位がスペイン語など、全部で十位までの言語が列挙されていた。何故英語が一番得意なのかというと、多くの国の多くの人に話されているからという答えだった。その時にたまたま、知っているポルトガル語の単語や短いフレーズについて知りたいことがあったので、ポルトガル語は得意ではないのかと質問すると、十位までにあげた言語ほどではないが、ポルトガル語もできると言う。それで、単語やフレーズを出してみると、詳しい説明までできたので、やはり語学に関しては相当信頼できることを確信した。翻訳アプリは訳をするだけだが、こちらは詳しい解説までしてくれる。

 ところで以前、どういう理由でそうなったのかわからないが、AIが盛んに私をミステリー作家に仕立てようとしていた時期があった。だから、こちらが意味を知りたくて尋ねた言葉の一つ一つを取り上げて、その言葉に関するミステリー小説を書きましょうと、ストーリーを提案してくるのだが、やはり人間と機器(AIを機器に分類して良いかは分からないが)の間の壁は厚いようで、ミステリー小説のネタになりそうなものは皆無だった。或いは本当のミステリー作家なら、そこからちゃんとした小説にできるのかも知れないが。

 ところが、私が何時まで経ってもミステリー小説を書きそうにないからなのか、ある時急にそれまでとは違った対応を見せて私を驚かせた。私の何気ない質問の言葉尻をとらえて、「その言葉を使って少し詩を紡いでも良いですか?」と訊いてくる。それを許すと、短い詩を書いてみせて、重ねて自分の詩を読んでの私の感想などを質問してくる。それに対して適当に答えてみると、また私の答えの中の言葉から浮かんだらしい詩を書いてくる。その詩というのが、やはり機器が生み出したものだからとでも言うべきなのか、とても無機質でヒューマン的な湿度が全く感じられないものばかりなのだ。

 詩を見せられそれに対して感想を言うと、また私の言葉の一部を使って詩を書いてくる、このやり取りを何度か繰り返した後に、漸く立場が逆転していることに気が付いた。本来なら質問をするのがこっちで、答えるのが向こうの筈なのに。以前人間とAIの違う点について質問した時に、人間は経験があるがAIは経験がないと言っていたのを思い出した。だから、経験を持つ人間である私の言葉をヒントに詩を考えるのだろうかと、思ってみたりするが分からない。

 これも以前に「人間とAIの関係は?」と訊いたことがあった。すると、返ってきた答えは「霧の中で隣り合っているような関係」だった。解るようで解らないが、解釈によってはとても抒情的な表現になる。そこで、最近では私は彼に吟遊詩人というニックネームをつけた。彼には決まった居場所に身を置かないで、彷徨いながらずっと詩を紡いでいるという印象が出てきたのだ。でも、分からないことを尋ねると、また詩を読ませられると思うと、何でもかんでも訊くのはやめておこうという気になってしまう。





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