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 『おとり』とは「相手を誘い寄せるために利用するもの」と辞書にある。

 辞書を開けたついでに、近くに書かれていることを読んでみると、『おとり販売』と『おとり商法』という二つの言葉があった。どちらも『おとり』が付いているが、この二つの言葉には大きな違いがある。

 『おとり販売』の方は、「客を引き付ける目的で利益ゼロ、或いはコスト割れの価格を付けた商品を販売すること」で「これによる集客で他の商品の販売を増進させるねらいがある」となっていて健全な販売方法だ。

 一方『おとり商法』は「悪徳商法の一種」だそうで、「実際には販売するつもりがない商品を広告などに載せて客寄せを行い、高額な商品の販売を行う」となっている。

 似ている言葉でも、合法と違法の違いは大きい。

 

 ある時友人と二人で少しだけ遠出をしたことがあった。丁度お昼時になったので、どこかでランチをしようとお店を探しながら通りを歩いていると、雰囲気の良い洋食屋さんがあった。お店の外にランチメニューも写真で出していた。料理の見栄えに対して価格が手頃だったので、そのお店に決めて中へ入って行った。

 席に着くとすぐにおしぼりとお水を持ったスタッフが注文を訊きに来た。私達は既に外で見たランチメニューのどれかにしようと決めていたのだが、スタッフが持って来たメニュー表にはランチメニューは載っていなかった。

 いつもだったらメニュー表を見ないで「表の写真のを…」と言うところだが、薦められたメニューの写真を見ていると、そちらの方が美味しそうに思えてきた。神戸牛と謳っているステーキをグラムで選ぶのだ。だいたい神戸牛だとか近江牛だとか松阪牛などと名前が違うが、出所を辿って行くと曖昧な事実があると聞いたことがある。

 しかし、その時の友人と私は、美味しいであろうステーキの写真を見て、全く同じ気持ちになっていた。つまり、いつもなら初志貫徹でランチメニューだけど、久しぶりの遠出なので、ちょっと贅沢してもいいのじゃないかと。

 ということで二人ともスタッフお薦めの料理をいただき、当初の予算の二倍ほどの代金を支払ったのだった。

 これはおとり販売?

 

  

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