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東端の村

「ロザリンドお嬢様、お目覚めください」

「…お早う、マリー」


この状況を説明するには、昨日の夜にまで遡らなければならない。まあ、要約して表すと、この村に転移して途方に暮れていた私を、マリーというこの子が宿に入れてくれた。いや、この説明では語弊があるだろう。マリーは、メイドとして私の元に出向く手筈になっていたらしい。これは、私をこの世界に転移させた神による計らいか、あるいはゲーム上そうなのか。いや、ゲームだとすぐに『内政』できてたような…?


「それで、今日中にお嬢様の血縁の方を尋ねたいという話でしたよね。今から出ないと、野宿することになってしまいますが」

「そ、そうでした」

「仕度を致しましょう」


手伝ってもらい、着替える。転移直後、私はこの世界の衣装一式を持っていた。そして、制服はどこへ行ったのやら、ゲーム画面の中の私が着ていたような衣装を身につけていた。さらに、この持ち物によると、私は男爵令嬢『ロザリンド・アルティパデス』らしい。身体自体は、峰と呼ばれていた頃と変わっていない。ああ、あの二人は元気でやっているだろうか。


昨日の私は、とりあえず目的地を目指し、後のことはそこで考えようと思っていた。スキル『内政』と『農耕知識』を活かすためには、それ相応の土地と民衆が必要となる。私一人で農作をしたって、できることはたかが知れている。運のいいことに、今は早春。これなら着いた先で活躍できるかもしれない。


「お嬢様、疫病が流行し始めているかもしれません。宿の主人も体調が悪そうでした。早々にこの村から出発しましょう」

「疫病…?そういえば、ここ数年で流行った病を知っています?」


妙な質問をするな、と少し怪訝な顔をされてしまった。ゲーム開始と同時に病が流行するはずだ。そうなると、今はいつなのか。


「いえ、私は存じ上げません」


となると、現在がゲーム開始に当たるはず。この病は…?


「この村の名前は?」

「東端の村としか。山脈を国境として、隣国と接しています」


ああ、もしかすると、これが最初の病!なんてことだ。ゲーム内での五度の流行病の一つ、隣国から来た肉に混入していた細菌による感染。ここ『スリタス公国』では、なぜか十分に加熱されてない肉を食べる文化があるから…。


「そういえば、宿の主人が、先日は商人が来たと話していました。隣国から肉などを輸入してこの国に———」


駄目じゃん。


そしてさらに都合の悪いことに、この最初の病には薬が効かないのである。『薬物調合』が役に立たない。プレイヤーとしては肉を食べず、清潔にすればよいが、この世界の人々がそんな事を知っているはずもなく。すでに最初の細菌を封じ込められそうになかった。


私は昨日の夜は何も食べなかったので問題ないが、マリーはどうなのだろうか。

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