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キャラメイク・下

gw中一日三回更新


「これってこの筐体で作ったステータスで戦わないとってことだよね」

「う、うん。あず先輩もそんな事を言ってた」

「だったら早く『キャラクター作成』しないと、間に合わないわ」


い、いやしかし、題名が気になる。何かとっかかりがあれば、あと少しで思い出せそうなのに…。


「みねも急いで!」

「う、うん…でもさ、これっていわゆる『乙女ゲーム』なんだよね?だったら、この筐体の見た目がおかしいような…」


どうも腑に落ちないけれど、おどろおどろしい筐体に表示された、スキル選択画面に向き合う。あれ、なんだか面白そう。まず目に入るのは、バトルで強そうなスキルだ。ハイロキネシスから魔法まで。治癒魔法とかもあるが、戦闘向きなものが多い。隣の山吹くんが、楽しそうにたくさん選択しているのが見える。山吹くん、弱そうな見た目なのに、ああいうのに憧れてるんだ…。なんか意外。


スキルはポイント制で、取れる数には限りがある。また、強力なスキルは、必要なポイントも多い。


次に目に入るのは、話し合いや交渉で強そうなスキル。読心術(心理学)、記憶力、並列思考に関係するスキルから、洗脳なんて怪しいものまである。反対側に座っている灯嶺は、ここら辺のスキルを検討しているようだ。さっきまでははっきりと現状に抗議していたのに、今は真面目な顔で悩んでいる。


最後の方には、雑多なスキルが並んでいる。生活魔法など。その中のいくつかに、私の目は吸い寄せられる。そこにはこう書かれている。


『内政』

『農耕知識』


あと少しで何か思い出せそうな…何か…


スキルの知識は、(当人が所持する現実のものとは独立して振る舞い、)自動的に行動をバックアップする。


〈あと60秒です〉


あっ!!!


脳裏にかつて見た文字列が蘇る。ようやく、どんなゲームか思い出せた。そう、あれは、決して乙女ゲームではなかった。


《〜RISE and DESUETUDE〜は、貧しい国家での生き残りを賭けた乙女ゲームです。獣害、虫害、戦争、治安の悪化、クーデター、凶作、伝染病、国王からの難題など、数々のピンチを乗り越え、王子様とのハッピーエンドを目指しましょう!》


そう、そして、この中の『凶作、伝染病』が特に凶悪だったのだ。あまりに多いバッドエンドが話題になっていたので、遊んだことがある。たしかに事前知識がなければ、全然生存できなかった。


ということは、取るべき最適解のスキルは確か『内政』『農耕知識』『治癒魔法』『薬物調合』…。この最後の一割のスキルが必須で、バトルのも心理戦のも罠だ!まずい、二人にも教えないと!


「灯嶺!山吹くん!『治癒魔法』か、せめて『健康』だけでも取って!」


二人は反応すらしない。こんな時に、無視!?いや、周りが静かすぎる。ゲームのBGMだけしか聞こえない。こうなったら、直接画面を操作して…


「あれ?壁!?」


私と灯嶺の間に、透明な壁がある!これのせいで声も届いてなかったんだ…。でも、なぜ?さっきはこんな物、なかったのに!


〈あと10秒です〉


駄目だ、山吹くんの方にも壁がある。どうしようもなく、自分のスキルを見直す。これで大丈夫なはず。『内政』は貴族として領土内の伝染病や凶作を抑えられるだろうし、『農耕知識』は作物の収穫倍率を大きく上げたはず。『薬物調合』は広く患者を救う手立てになり、『治癒魔法』は、乱発こそできないものの最も凶悪な病ですら完治を目指せる。二人にも伝えたかったのに。誰かが悪意を持ってこの壁を作り出した?そして、そんな事をするのは、この空間を作った黒幕だろうか?


〈転移を開始します。ゲーム内で死亡してしまった場合、地球でも死亡扱いとなります。また、国家内での開始地点は全員が別々になりますので、ご了承ください〉


ああ、それじゃ駄目なのに。いや、諦めるのはまだ早い。私は、向こうの世界でも生きた二人を必ず見つけ出してみせる。

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