【 特別編 】四話 お菓子なダンジョン
第一層は雪で覆われていたが、第二層は驚いたことに西洋のヨーロッパ風の街並みが広がっていた。
北欧チックなところだ。
まるで、サンタさんがいそうな。
とはいえ雪は降っているが。
“凄いな。このダンジョンまるで異世界だ”
“一層ごとにこんなに変わるもんなのか”
“家には入れるの?”
煉瓦の家がいくつもあり扉もあったがドアノブは動かない。
どうやらハリボテみたいだ。
ダンジョンは人々の深層心理が影響されているのではないかと推測が建てられている。
以前行ったグルメダンジョンがいい例だろう。
つまりここも、誰かが望んでいた世界なのかもしれない。
「雨流、このダンジョンはどうだ? 今までと比べて」
「結構強いほうだとおもう。あーくんが戦ったシカの魔物、たぶんA級でも苦労する強さしてたし」
「え、マジ?」
「うん。まじー」
そ、そうだったのか。
さすが俺。いや、田所剣が凄い。
御崎のところへ戻ると、おもち、田所、グミが戯れていた。
相変わらずの危機感のなさだが、それがまた頼もしい。
「扉はどうだった?」
「全部ダメだな。魔物もいないし、オブジェクトだけなのかもな」
そのとき、ふと鼻に甘い匂いが香る。
そういえば手が何だかベットリしていた。
そのとき、俺の中で何かがカチっとハマる音がした。
クリスマス、雪ダルマ、シカの魔物。
なぜ入れない家。
手がべったり。
鼻孔をくすぐる甘い匂い。
も、もしかして!?
“どうしたアトリ”
“変な動きしてる”
“何かに気づいたの?”
“またドアに向かってる?”
“どうした”
「アトリ? どこ行くの?」
「あーくん、どうしたの?」
俺の予想が正しければ……。
「あむっ」――バリバリバリ。
“ド、ドアノブを食べた!?”
“え、なにしてんだ!?”
“ふえええ、アトリマンがおかしくなったああ!?”
“な、なにしてんだ!?”
「キュウキュウ!?」
「おもちが、ご主人様、お腹こわすよーって!」
「がうがう……」
やっぱりそうだ。俺の予想は正しかったんだ。
「みんな、食べて見てくれ! ほら、早く!」
「え、な、何言ってるのよ!?」
「あーくん、そんなにお腹空いてたんだ……佐藤に頼んでご飯持ってきてもらう?」
「ちげえって! いいから! ほら!」
みんなを驚かせてあえて言わず、声を強くかけた。
凄い目で見られつつも、同じように味見してくれたのは――。
「キュー! キュキュ!」
「おもち、やっぱりおもちは優しいなあ」
“おもちが喜んでいるw”
“一体どうした”
“も、もしかして!?”
「え? ……これ、お菓子じゃない!?」
「そうだ御崎。この家全部、お菓子できてるんだ」
「え、ほ、ほんとだー! 美味しい。チョコレートだー」
同じように食べてくれた御崎も気づき、それに続く雨流。
田所、グミも美味しく食べ始める。
“マジ!?”
“夢の国じゃないかw”
“グルメダンジョンならぬ、お菓子ダンジョンってこと!?”
“確かにこれはクリスマスダンジョンだな”
煉瓦っぽいのはよく見るとウェアハースだ。エントツはポッキーみたいな感じだし、窓は飴細工だった。
ドアノブはチョコレート、すべて甘いお菓子。
なんて……なんて幸せなダンジョンなんだ。
いやでも、雪ダルマとシカの魔物を倒さないと駄目なのか。
とはいえ待っているのは楽園。
「うま、うま……」
「美味しいねえみーちゃん!」
御崎はもう家の虜だ。
そういえば甘いものが好きだったな。
「キュウ!」
「お、さすがおもち! エントツのポッキーうまそうだな!」
おもちは空を飛んでエントツを食べていた。流石に俺たちはあそこに行けないな。
“飛べるから食べられる部分だなw”
“美味しいところ独り占め!”
“羨ましい”
とはいえあんまり食べすぎると体に悪いだろう。
それなりにエネルギーを補充したところで前に進もうとしたが、御崎がドアノブ(お菓子)の食べ比べをしていた。
「あの家より、こっちの家が美味しいわね……ねえみてアトリ! 凄いわ! 最初に食べたところが復活してる! 永久機関なのよ! ここに住みましょう!」
更にとんでもないことを言い始めたので手を強く引っ張る。
だが、動かない。
「んぎぎぎぎぎぎ!?」
「お菓子、お菓子お菓子、スイーツ」
凄い執念だ。ここまでとは思わなかった。
「雨流、悪いが頼む。このままでは御崎が身体を壊してしまうからな」
「はーい!」
さすがS級。御崎が突然宙に浮いて、そして第三層への入り口まで吹き飛ばされた。
いや、やりすぎ!?
“容赦ないw”
“御崎がこうなるのは初めてみたなw”
“大丈夫。田所がいる!”
とはいえ事前に田所が御崎の身体にくっついていたので、気球に変身してくれた。
ふよふよと浮いて落ちてくる御崎。
「うう……もっと食べたいのに……」
泣いてる御崎は案外可愛いな。
でもダメです。
「キュウ!」
最後の最後、おもちがエントツポッキーをお土産として持ってきてくれたので、御崎はそれを抱きかかえながら泣いていた。
いや、食べながら。
「悲しい……バキィボリィ」
“咀嚼音というか、破壊音というか”
“いやデカすぎポッキーw”
“止めて止めてw”
“糖質爆発しちゃうよ!?”
色んな意味でおそろしいなこのダンジョン。
さて、次こそはもみの木見つかるといいんだが。
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