神社に居るポーカーフェイスの巫女は、おふだを作る天才だった
高校生の僕は夏休みのある日、とある島へ出掛けていた。
……その島というものは、『真瀬井島』と呼ばれるところ。
そこは、島全体が『真瀬井神社』の敷地となっている。
大学進学の願掛けとおふだを貰おうと、行ってみようと思ったのだ。
▫▫▫
島へと向かう船が、港にやって来た。
船に乗って、出港する。
「久しぶりじゃんね、神社への参拝者は」
船長のおじさんが、そう言う。
「え、そうなんですか?」
「そうじゃ。昔は結構来てたんじゃが、ここ数年は年に10人行けば良いもんじゃ……僻地の神社の定め、じゃんかねぇ」
出港してから、約20分で真瀬井島……もとい、真瀬井神社へ着いた。
「んだば、待っとるからなぁ」
そうおじさんが言う。
「……貴方様が、今回の参拝者ですか?」
ふと女性の声が聞こえたので、僕は振り向く。
そこには、巫女の姿をした人が居る。
「は、はい。そうです」
僕が返すと、彼女は表情変えずに頷く。
「わたくし、真瀬井神社の巫女である娃谷しずくと申します。神社へ案内しましょう」
そういうと、しずくは神社の中へ入っていく。
僕は着いてく。
「あの、娃谷さん」
道中、僕が言うと彼女は振り返る。
「なんでしょう」
「あの、何て言うか……表情変えないなって、思いまして。あ、いや……別に悪いとかそういう……」
しどろもどろになりながらも、僕はそう言う。
「実は、決まり事なのです。真瀬井神社の巫女になる者は、表情は変えるな……と」
「特異な決まり、ですね」
僕が返すと、しずくは頷く。
そうこうしていると、本殿の方へ着いたみたいだ。
「確か、進学祈願の願掛けとおふだが欲しい……でしたか」
しずくがそう言う。
「はい、そうです」
「……それでは、この本殿に祈りを捧げてください。その間に、おふだを用意します」
しずくは建物の奥へ入っていく。
本殿に、『祈願の手順』という札があり、僕はそれにそって祈願する。
……手順は複雑で、5分掛かって終わった。
その間に、しずくが戻ってきた。
手には、手作りのおふだを持っている。
「見たことのないおふだ……ですね」
そのおふだを手に取った僕は、そう言う。
文字が書かれているが、全体的に絵に見える不思議な札だ。
「ここでしか、手に入れられないおふだです。きっと、貴方様の未来を切り開いていくことでしょう」
▫▫▫
それからと言うもの、僕は大学受験をした。
結果は、一発合格だ。
他にも、恋人が出来たり、有名企業に就職など良い事尽くしだ。
あの巫女は、天才だ。