第76話 限界を超える力
「うーん。まず使える人が全然いないからアレなんだけど、“魔導兵装”の“オーバードライブ”機能については、二人とも知っているわよね?」
俺と雪那は首を縦に振る。
「特定の“魔導兵装”に搭載されている最大解放状態……だったか? 本体の出力リミッターを解除するとか、何とか……」
「その代償として、機体と魔導騎士への技量要求も増大するとも聞いていますが」
「ええ、その認識で間違っていないわ。学生には縁のない機能だと思っていたけど、よく勉強しているわね」
対する零華さんは、満足そうに頷く。
どうやらちゃんと答えを返せたようだ。
「それとバージョンアップに一体何の関係があるんだ? 本当にどうにもならなくなった時にしか使えない、自爆機能みたいなもんだろ?」
「そうね。まともに制御も出来ない最後の切り札であり、諸刃の剣。今までは……だけどね」
だが口元に手をやった零華さんは、したり顔で笑みを浮かべている。
「説明は分かったけど……結局、何が言いたいわけ……」
「“アイオーン”と“ニュクス”に“オーバードライブモード”を組み込んで運用して貰います」
先ほどまでのおどけた様子など微塵も感じさせない零華さんを前に、思わず息を呑む。
そこにいるのが疑いようもなく、皇国の頭脳と謳われる天才科学者に他ならないのだと、改めて認識させられたからだ。
だが、はいそうですか――と納得出来るわけもない。
むしろ、零華さんに対してとはいえ、少しばかりの怒りの感情が生まれつつあった。
「“アイオーン”への搭載は構わない。こっちから、お願いしたいくらいだ。だけど……!」
問題なのは、雪那の“ニュクス”に危険極まりない形態が搭載されるということにある。
“オーバードライブ”が諸刃の剣だというのなら、単純に切り札が増えるのとは訳が違うはず。
そんな物を雪那に――。
「もう、バカね。この私がそんな物騒なものを二人に使わせると思っているのかしら?」
零華さんは呆れたように溜息をつく。
だが表情はどこか俺たちを慈しむようであり、優しい声音をかけられる。
「両機ともフレームの剛性強化と各部の調整は徹底するし、さっきも言ったけど、私なりに出力強化と安全性の向上に対するプランもあるから、この話に踏み切ったの。それに戦力増強も、雪那ちゃんのお父様からの依頼でもあったしね」
「また父から……ですか……」
「ええ、そうよ」
婚約者騒動の直後で少し過敏に反応しすぎたか――と、思っていた傍ら、雪那は大車輪の如く働いている父親に驚きながら言葉を返す。
「だって……今のままじゃ、クオン皇国が滅亡するのは時間の問題だもの。しかも今まで見たいに、数年後にはちょっとヤバいかなぁ……とかじゃなくて、本当にすぐ目の前よ」
「――ッ!?」
しかしそれに対する回答は、俺たちの予想を遥かに超えるものだった。
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