第40話 市街地戦闘
薄暗い住宅街を黒い影が駆ける。
すれ違いざまに警察の肉体から鮮血が舞い散り、黒い影がその頭上を飛び越えて屋根に飛び乗って走り去っていく
だが屋根を疾走する黒い影――“首狩り悪魔”を追おうとした隊員たちも、降り注いだ灰色の魔力弾をその身に浴びて崩れ落ちてしまう。
倒れ伏す隊員。
外壁に突っ込んで噴煙を上げる警察の車両。
追いついた頃には、追跡中の部隊が甚大な被害を被っていた。
多数の警察の追跡を振り切り、最早後は逃げおおすだけではあったが――。
「……悪いが、ここは通行止めだ」
俺はそんな逃走者の眼前で、蒼閃を奔らせる。
「――■■ッ!?」
結果、俺が魔導兵装を介さずに生成した蒼い魔力剣と、黒影の短剣が鈍い音を奏でてぶつかり合う。
「コイツが、“首狩り悪魔”か……」
そして相対する俺の眼前に、件の連続殺人鬼の姿が晒された。
全身を覆う黒い外套。
閉所での取り回しに優れたナックルガードの付いたトレンチナイフ。
その顔は、大きな目が描かれた白い仮面で覆われており、素性を窺い知ることは出来ない。
しかし事情はどうあれ、警察部隊の状況と外套に付着した血液からして対処すべき相手には違いないだろう。
とりあえずは、ぶん殴ってでも拘束するしかない。
「■■■――ッ!」
一方、鍔迫り合いの最中、黒影はいきなり距離を取る。
刃を押し込んで来なかった辺り、やはり機動力に長けているのか――と感じた瞬間、奴は奇妙な叫び声を上げてトレンチナイフを振り回して来た。
ヒトの形をしていながら、どこか獣染みた動きだ。
「気味の悪い奴だな」
再びの鍔迫り合い。
しかし黒影は互いの刀身同士を滑らせながら円を描くように身を反らし、俺の左側を通り抜けようとしている。
脱兎の如く――という言葉がこれほど当てはまる状況もないだろう。
だが――。
「……させるか!」
俺は右の剣を維持したまま、左手にも魔力剣を生成して黒影を斬り上げる。
「■、■■――! ■■■ッ!?」
一方の黒影は身体を流しながら地を蹴り、両足を折り曲げて跳躍。
俺の魔力剣の軌跡よりも上へと飛び上がった。
魔力で身体強化――とかそういう次元じゃない動き。人間離れした俊敏性だ。
「この動き……明らかに異常だが……」
“首狩り悪魔”の身のこなしに目を剥いたことは事実。
でもはい、そうですか――と逃がすわけにはいかない。
俺は即座に左の魔力剣を破棄。
更に左手の向きを変えると、瞬時に魔力剣を再生成。
「■■■――!! ■■■■■――!?」
逆手で放った蒼閃が、黒影を斬り裂く――。
「浅いか……」
俺は内心舌打ちを零しながら、隣を通りゆく黒影を睨み付ける。
結論から言えば、魔力剣は届いたと言える。
しかし滞空中にもかかわらず、奴はブリッジの様に大きく胸を張りながら身を反らした。
結果、奴自身を斬り裂くまでには至らず、剣先が僅かな鮮血を散らすのみに留まったわけだ。
「■■■■■――!!」
刹那の攻防の末、俺の横を文字通り飛び抜けた黒影は、地に足を付けて一歩で踏み切る。
このまま全速疾走されると、後を追うのが困難になってしまうが――。
「市街地では、使いたくなかったんだがな!」
俺は隣を飛び抜ける黒影に対し、即座に両手の魔力剣を破棄。
更にそのまま地を蹴り飛ばして急加速。
先に踏み出していたはずの奴へと瞬時に肉薄する。
そして“アイオーン”の武装のみを部分展開し、呼び出した“白亜の剣”を一閃。
奴の短剣の刀身を真っ二つに叩き斬る。
「■■■、■■――!?」
どこか異常な黒影も、得物を叩き斬られるとは思っていなかったんだろう。
ようやく、その足が止まる。
「これでッ!!」
当然、その隙を見逃すはずもない。
俺は再び地を蹴って身体を回転させ、側頭部に左の足刀蹴りを叩き込む。
「■■■――!?」
結果、当の“首狩り悪魔”を砲弾の如き勢いで道路へと叩きつけた。
激突の衝撃で舗装された道路までもが割れており、その衝撃を物語っているはずだが――。
「■■■■――!!」
背中から道路に打ち付けられて大の字で倒れていたはずの黒影は、何事もなかったかのように、すくっと立ち上がる。
不気味なほどの直立だ。
「コイツ、本当に人間か?」
当然逃がすつもりはないが、一方で疑問も尽きない。
「■■■■――!!」
だが再び疾走する黒影をどう捕らえようかと並走する傍ら、走り出したはずの黒影が、まるで押し返される様に吹き飛ばされて街路を転がった。
そうだったな、こっち側には――。
「……あらあら、貴方にはちょっとお尋ねしたいことがありまして、このまま帰すわけにはにはいきませんのよ」
“首狩り悪魔”の前に立ち塞がるのは、琥珀の瞳をした少女。
黒影に対して明確に敵意を露わにしている、ディオネ・フォルセティ。
「申し訳ありませんが、私のお話を聞いて下さいますわよね?」
本人的には納得がいかなかったようだが、いつでも挟み撃ちできるようにと待機させておいた同行者の少女が雷の槍を手に佇んでいた。
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