第29話 白騎士VS竜騎兵
魔導騎士と“竜騎兵”が天空を駆ける。
鈍い金属音を奏でながら、剣と戦斧を苛烈にぶつけ合う。
更にすれ違い様に剣戟を放った直後、己の刃に魔力を乗せる。
「“ヴァニティスクリーム”――!」
「“エクシードフィアーズ”――!」
振り向き様の斬撃魔導。
互いの一撃が再び交錯したかと思えば、破壊の波動が周囲を襲う。
「ここ数年、貴様ら騎士との戦いに我らが出張るまでもなかったが、なかなかどうして……!」
しかしクロードは、一切怯むことなく前方へ加速。爆炎の中を突き進んで来る。
その上、魔力の渦を纏っての刺突一閃。
普通であれば、魔導発動直後の硬直で躱せない攻撃ではあるが――。
「あの中を真っすぐに突っ込んで来るとは……」
「我らを引きずり出すほどの強者は久しいのでな。些か気分も高揚しているのさ!」
俺は迫り来る穂先に対し、首を反らしながら後退。ギリギリでの所で回避した。
一方クロードは、攻撃を躱されたと見るや、前進しながら戦斧を真横に薙いで来る。
「一人でやってろ!」
「はっ! 不可能だ!」
横薙ぎに振るわれた戦斧を屈んで躱し、頭上を通り抜ける銀閃に構わず、白刃の剣尖を突き立てる。
だが引き戻された戦斧の柄で阻まれ、またも四散する魔力の息吹が周囲を襲うだけに留まった。
「大した反応だ。偽りの騎士よ!」
直後、俺の刃が戦斧の柄で流されたかと思えば、クロードはまたも突っ込んで来る。
そうして突進と共に振るわれる戦斧が、突き、薙ぎ、払いを巧みに織り交ぜた斬撃の嵐と化す一方、当の俺は荒れ狂う剣戟の全てを二刀で捌き切った。
この間、刹那の攻防――。
そして俺たちの攻防は、より苛烈さを増していく。
「いい加減……!」
連撃を捌き切った直後、クロードから距離を取ると共に右剣を拳銃に換装し、砲撃魔導を撃ち放つ。
「この破壊力……!?」
クロードも左腕から魔力砲撃を放って迎撃。
再び爆炎が上がり、衝撃が天空を包み込む。
「だが、これで……!」
――“エクシードフィアーズ”。
砲撃が相殺された瞬間、左の剣を振り下ろす。
結果、飛翔させた巨大斬撃で猛烈な爆炎すらも吹き飛ばし、クロードを強襲する。
「我らは、不倒だッ!!」
――“ヴァニティスクリーム”。
対するクロードも戦斧に魔力を纏わせ、斬撃魔導を発動。
またも相殺――とはいかず、一手早かった分、奴の身体が僅かに流れていく。
だが吹き飛ばされた先には――。
「遅い……!」
俺は高速機動でクロードの真横に回り込んでおり、蒼穹の魔力を吹き出す“白亜の剣”を一閃。
奴を蒼穹の渦に叩き込む。
下の連中が騒がしい歓声を上げたようだが――。
「……良い一撃だったぞ。我が魔力壁を抜いて来るとはな!」
爆炎が晴れれば、クロードは健在。
斬撃が届く一瞬の間に魔力障壁を展開し、九死に一生を得ていたようだ。
とはいえ、至近距離からの斬撃魔導は効果的だったようで、身体の各所から鮮血を滴らせているが――。
「よもや、これほどまでに追い込まれるとは誤算だった。貴様という危険因子は、確実に排除せねばならんようだ!!」
瞬間、クロードの殺気が、冷たく研ぎ澄まされたものへと変質した。
更に戦斧の柄が伸縮を繰り返し、凄まじい勢いで迫って来る。
まさかの機構に不意を突かれた形にはなったが、機動力はこちらが上。
回避行動に入るものの――。
「貴様がどれほど迅かろうと、これなら逃がすことはない!」
更に分裂した柄は鎖のような形状と化しながら、伸縮を続ける。
それも鎖の表面に魔力が流れているのか、斬り払おうとしても弾かれ、その間に周囲を覆われてしまう。
宛ら、鎖の牢獄というところか。
「貴様と剣を交えた戦は、我が誇りに刻まれた」
一方、鎖の牢獄が色めき、クロードから魔力が流し込まれたのを感じる。
この位置取りでは互いに手の出しようがないはずだが、何かがマズい。
背筋に冷たいものが走る――なんて言葉では表せない焦燥感に襲われていた。
「これ、は……!?」
「さらばだ。白き騎士よ!」
だが鎖の各所で炸裂し始めた魔力に目を剥いた瞬間、牢獄の内側が轟音を奏でて弾け飛んだ。
鎖を伝導する超圧縮魔力炸裂。
正しく回避不可能な必殺の一撃ではあるが――。
「“レオニス”の柄が、灼き切れている……だとっ!?」
爆炎の中、蒼穹の煌翼が羽撃いた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
第一章もまもなくクライマックス!
このまま駆け抜けていきますので、
「面白そう!」
「続きが気になる!」
と少しでも思っていただけましたら、
広告の下にある【☆☆☆☆☆】を→【★★★★★】にしてポイントを入れてくださると嬉しいです!
その応援がモチベーションとなりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
では次話以降も読んでくださると嬉しいです!