第23話 本格始動
――合同演習二日目。
「さて、今日から通常通りの訓練に戻るが、学生諸君も振り落とされずについて来るように! 配慮はするが、甘えさせるつもりはないからな!」
団服に一等空尉の階級証を光らせる男性教官は、俺たち学生を含めた中隊に檄を飛ばす。
ここからが、ようやく本番だな。
「まず学生諸君は、三人一組に分かれてくれ。そこに団員二名を加えた五人一組を一小隊とし、海上演習に臨んでもらう! 昨日以上に慣れないことも多いと思うが、是非とも有意義な時間として欲しい!」
俺以外の全員がAクラスである状況でチーム分け。
正直、うげっ――と思ったが、今回は雪那と風破がいてくれたことで事なきを得た。
それと土守一派で一チーム。他の三人で一チームと、綺麗に分かれてくれたことも嬉しい誤算だったのかもしれない。
「では戦闘シミュレーターを起動する。持ち場に付けっ!」
そうして教官に促されると、各自魔導兵装を起動して空に舞い上がった。
ちなみに俺たち学生を含め、今は全員が軍支給の“陽炎”を使っている。
理由は二つ。
一つ目は、これが連携訓練であり、一人だけ突出しても意味がないから。
二つ目は、それを理解できず、ここで良いところを見せてやろう――的な考えを、最初から潰すためだろう。
実際、ついさっき固有機を起動しようとポージングしたまま固まった自称・僕様は、なんとも哀愁漂う姿だったしな。
そんなことを考えている一方、眼下の滑走路が波打つ海上へと変化し、本物と変わらない潮の香りが漂ってきた。
これは第二研究所で試験稼働に用いたシミュレーターの大型規格版であり、周りはすっかり大海原だ。
でも魔導使いである俺たちからすれば、驚くような現象でもない。むしろ海風を切る感覚に心地良さすら覚えながら、団員の指示に合わせて空を駆けていく。
「次、即時反転からの“流斬連撃陣”――!!」
急上昇からの反転。
俺たちは二人と三人で分かれ、五つの流星と化した。
更にそのままの勢いで下方のターゲットマーカーへと降り注ぎ、順番にすれ違い様に一閃を叩き込んでいく。
怒涛の疾風五連撃。
ターゲットマーカーは、一瞬にして細切れと化す。
「……初めてにしては上出来だ。以後の訓練もこの調子でな。そして次は射撃陣形に取り掛かる……と言いたいところだが、この小隊は特別進捗が良い。よって、他の者が追い付いて来るまで休憩とする!」
男性団員の指示が飛び、風破はフラフラと危なっかしい様子で訓練場の脇に着地した瞬間に座り込んでしまう。
だが普段はここまで実戦的な訓練が学園で行われることはない。風破の反応は当然のものだし、陣形をやり切っただけで十分すぎるレベルだろう。
その上、コミュ力の高さを発揮し、小隊についてくれている団員たちと談笑している。あれは俺には真似できそうにないな。
「あれだけ自信満々だったというのに、随分な有様だな」
「というか、俺たちの進捗が良いってより、連中がグダグダしてるだけなんじゃないのか?」
ちなみに他の連中の間抜けな様子も真似できそうにもない。
「上、旋回、左四五度。次に高度を下げ、相手の背後に回り込み、多角的に攻撃を加えるには……って、っ!? なぁああっ!?!?」
「お、おいっ!? どわぁ!?」
土守の取り巻き二人は、あわや正面衝突寸前――というところを、どうにかすれ違うように回避する。
ギリギリでも避けたことを褒めるべきか、Aランクのエリートが間抜け極まりないと呆れるべきか。
恐らくは後者だろう。実際、僕様も見事にブチギレ中だ。
「え、えっと……! つ、次はッ! ふぇ!? なんでみんなと逆方向に!?」
それに花咲伊吹とかいう、第三勢力の女子生徒も目を回しながら空を舞っている。
彼女と同じ小隊の連中も散々ということで、風破の優秀さが際立つな。
「……この様でプログラムが消化し切れるのだろうか?」
「まあ、なるようになるさ。確かに学園の恥を晒している気はしないでもないが……」
俺はFクラスだし関係ない。
そんなことを考えていると、隣の雪那からジト目を向けられる。学園が誇る超絶女子高生とドロップアウト寸前の俺では、そもそも認識が違うのだろう。
人気者は大変だな。
ともかく二日目の訓練日程の間、終始生徒の悲鳴が空に響き渡り続けていた。
そして続く最終日――。
「今一度、僕の優秀さを証明してみせる!」
「……だってさ」
「知らん。私には関係ない」
俺たち学生は二グループに分かれ、まさかの全力戦闘に挑むことになった。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
「面白そう!」
「続きが気になる!」
と少しでも思っていただけましたら、
広告の下にある【☆☆☆☆☆】を→【★★★★★】にしてポイントを入れてくださると嬉しいです!
その応援がモチベーションとなりますので、ぜひよろしくお願いいたします。
では次話以降も読んでくださると嬉しいです!