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第159話 新たなる日常

 模擬戦は終わりを迎えた。

 だが地に足を付けて“魔導兵装(アルミュール)”を解除した直後、思わぬ相手から声をかけられることになる。


「たっはー! お前スゲェな! 全然敵わなかったぜ!」

「それはどうも……でも(すす)塗れで引っ付こうとしないでくれ」

「ありゃ!?」


 肩を組もうとして地面にダイブしたのは、伊佐涼斗。

 あれだけ動き回ったのに、随分と元気な奴だ。

 それに随分と馴れ馴れしい。ただ言動に嫌味が感じられない辺り、素でこういう奴ということなのだろう。お山の大将が集まったミツルギ生には、あまりいなかったタイプだ。


「きゅぅ……」


 ちなみに根本京子は、目を回しながら気絶中。現在進行形で養護教諭に回収されている真っ最中だった。

 しかし生徒が意識を失ったのに周りは誰も動じていないし、回収班も随分と慣れた手つきを披露している。まあ全ては、こんな異常な出来事も魔導騎士養成学園において日常茶飯事であるが故のこと。

 まあ“魔導兵装(アルミュール)”の術者保護機能で身を守られているとあって、実質的には寝入りが痛い昼寝の様なものだ。

 とはいえ、寝入っていては授業に遅れてしまうのだから、あまり羨ましくないサボり方ではあるが。


「うぉっ!? すっげー!」

「鼻の下が三倍くらいに伸びてるよー」

「下半身に素直だな」

「惚れたッ!」

「ええっ!?」


 ただ色んな意味で伊佐を瞬殺したらしい養護教諭に関しては、あまりいい思い出がない。

 確かに一見すれば、外跳ねショートカットに谷間全開の妖艶お姉様でありながら、治療魔導の腕前も超一級品。

 次代の魔導騎士の中でトップエリートと定められているミツルギ生の健康を預かる立場に恥じないだけの能力は十分に持っているのだろう。


 だが時々目つきがヤバいというか、身の危険を感じるというか。

 現にFクラス時代、俺がサボりの定番スポットである保健室を利用しなかった理由もそこにある。


「ねぇ!? 見た!? 今俺の方を見てニコって!?」

「そうかなぁ? 小鳥遊(たかなし)先生、美人だし……」

「いや、むしろそうあって欲しいけどな」


 端的に言えば、肉食獣の目つき。

 時折、こうして獲物を見定めるかのような視線を感じていたことが原因だった。本当なら妖艶美女と密室で二人きり――なんて、ドキワクシチュエーションかもしれないが、俺もそこまで頭がお花畑じゃない。

 もし万が一のことがあれば、零華さんや第二研究所へどれだけの風評被害が起きることか。

 それに俺も一応、自分の問題で色々悩んでいたわけで――。


 美人教師の流し目を受け、身震いする俺。

 それから大興奮の伊佐に加え、隣で苦笑する風破。


 しかし模擬戦の疲れを感じながら三者三様で佇む最中、もう一人の美人教師から鉄槌を落とされることになる。


「ど、どうしよう!? このまま告白したら……へぶううっっ!?」


 炸裂音と共に伊佐の頭頂部から白い煙が上がった。


「ふぇっ!?」


 一方の風破は目を見開きながら驚愕しており、当の俺はノールックで背後に可変拳銃を向けた体勢で止まっている。

 誰が行動を起こしたのかについては明白だろう。

 問題は何をされたのかということだが――。


「授業中に公開雑談とは良い度胸だ。当然、そこの不埒者(ふらちもの)の発言も生中継されていたのだが?」


 鳳城先生の指の間に収まっているのは、白いチョーク。

 それを“ダガーダーツ”の要領で、こっちの後頭部に目掛けて三本ほどぶん投げて来たということ。背面撃ち二連射で事なきを得ていなければ、俺や風破も約一名の犠牲者のように悶絶していたことだろう。

 迎撃が間に合わなかったのか、わざと助けなかったのかについては想像にお任せするが、飛び回りながら悶絶する伊佐の反応には一見の価値がある。

 ある意味、こういうのも一つの才能なのかもしれない。少なくとも見ていて退屈しない奴ではあるようだ。


 とはいえ、今はデジタル全盛の時代。普段から荷物が少なそうなスーツ姿の美人さんが、あんな時代遅れな筆記用具を一体どころから取り出したのやら。


 ただ一つだけ確かなのは、的確で手短なありがたいお話を頂戴することだけだな。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


「面白そう!」

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