第147話 本拠地決戦
「■■、■■■■――!!!!」
異形が咆哮する。
筋肉の膨張でスーツが破れ飛び、両腕には魔力で出来た巨大な爪が出現。更に出で立ちの獣感が増していく。
「お、お父さんは!?」
「ありゃもう無理だ。諦めろ」
「そんな……!?」
驚愕している風破には悪いが、今回ばかりは俺も同意見。
というより、“首狩り悪魔”の最期を知っている以上、もう助けようがないことを肌で理解してしまっていた。
「疑わしきは罰せよ。裏切り者に対する口封じのつもりなんだろうが……大層な置き土産を残してくれたらしい」
「ああ、古くせぇやり方だが、単純なだけに厄介だ。しかも、この上には……暢気して働いてる連中が大量にいる」
そして“首狩り悪魔”を倒すことが、どういう結末を意味しているのかについても――。
「一体、どういう……」
「アレは機械と生物を融合させた人造兵器とでも称するべき存在。それも自爆能力持ちの……」
「じ、自爆って!?」
「ああ、しかもこの辺り一帯が焦土と化しかねない出力だ。下手に起爆を許せば、多くの命が失われることになる。しかも……っ!?」
「■、■■■――!!」
剣と爪が交錯。
衝撃と火花が舞い散る。
「烈火!?」
「それだけでも厄介だが……この禍々しい見た目の通り、そこら辺の魔導騎士よりも強い!」
力任せに押し返すが、流石の素早さだ。
初見だったなら、それなりに肝を冷やす結果になっていたはず。
「そういうことだ。お前の出る幕はねぇし、良い子ちゃんはすっこんでな」
「でも……!?」
「戦える状態じゃねぇんだろ? 精神も、魔導兵装も……」
閉鎖空間での高速戦闘に特化したスタイル。
典型的な暗殺者。
その様は、やはり以前までの二体と酷似している。当人が知ってか知らずか、トルドー財閥から何らかの処置を受けたことは間違いないのだろう。
ともかく一つだけ確かなのは、奴が厄介で危険極まりない相手であるという事実。
こうなってしまえば、もう四の五の言っている場合じゃない。
「“アイオーン”……」
「“デルカリオン”――!」
俺と萌神は戦闘装束を纏って、完全武装状態と化す。
戦闘数値はこちらの方が上。
地形的には向こうの方が有利。加えて、とてもまともに戦える状態にない風破を抱えていると来れば、萌神と肩を並べていても決して安心出来る状況ではないだろう。
それに何より――。
「せっかくの手がかりだ。見るからに末端のコイツにどこまで情報が降りて来ているのかは知らんが、黙って全てを消し飛ばさせるわけにはいかない」
トルドー財閥が起こした一連の事件。
それによって多くの人間が苦しみ、人生を歪められたことを知っている。
連中が一柳を擁立しなければ、雪那があれほど苦しむことはなかった。
連中が二階堂を突き回さなければ、学園対抗戦は普通に行われていたはずだし、ヴィクトリアさんが国を追われることもなかった。それに貸出機に細工され、風破や俺が死にかけることもなかった。
当然、犯罪を起こさずに済んだはずの一般人が信者となって道を踏み外したこと。風破が父親のトラウマを呼び起こされることもなかったはず。
それら全て、トルドー財閥が仕組んだことであると知った以上、絶対に許すわけにはいかない。
思わぬ形での遭遇となったが――。
「■■、■■■■■――!!!!」
「悪いが、圧倒させてもらう!」
爆散させずに奴を倒す。
難しいミッションだがやり切るしかない。
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