表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

144/167

第144話 蹴りから始まる交渉術

 よく分からないオブジェや絵画。

 壁中に刻まれた、巨大な華十字架の紋様。

 無駄に設置されたモニターに加え、背もたれの高い豪勢な椅子。


 端から見れば、金を持った大人の秘密基地。

 男子として目を惹かれる部分がないとは言わないが、それは自分の力で造ったという大前提があってのものだ。

 他人を洗脳して無理やり巻き上げた金で造られたことを知っていれば、醜悪さが詰まった虚構の城としか思えない。


 一言で表すのなら――。


「悪趣味だな。何もかも……」


 萌神が吐き捨てている通りだ。

 だがそれ以上に悪趣味なのは――。


「烈火!? それに……」

「あン……?」

「出来ればこんなところで会いたくはなかったが……」


 ここにいるはずのない風破が、部屋の中央でふんぞり返っている東雲と相対していること。


 いくら血縁者とはいえ、我が物顔で表の人間を巻き込む辺り、やはり奴はただの下種野郎でしかない。悪にしろ、正義にしろ、随分と器の小さい男だ。

 とはいえ、侵入者(俺たち)を見て顔を真っ青にしている辺り、やはり小物でしかないのだろうが。


「ひっ、お、お前は……!?」

「ごきげんよう……とでも言っておけばいいか? ムカつく面だが……」

「ひぃいいいっ!?!?」


 瞬間展開した“白亜の剣(アーク・エクリプス)”を放り投げ、東雲の前にあるコンソールを破壊する。

 地下空間のシステムを掌握(しょうあく)している以上、わざわざ破壊せずとも助けを呼ばれる心配はない。故にこれは個人的な私怨というやつだ。


 俺たちを付け回したこと。

 風破を巻き込んだこと。

 信者たちを増長させたこと。


 魔導適性がなくて苦しんだのか、ただのちゃらんぽらんで産んだ娘を捨てたのかは知らんが、最早同情の余地はないと判断していいだろう。


「や、やめっ!? 来るなァ!? へぶぅぅううっ!?!?」


 直後、降伏勧告すらせず、その顔面に靴底を叩き込む。


「は、へっ……?」


 すると、驚愕で目を白黒させている風破を尻目に、信者の金で私腹を肥やした小太りボディーが吹き飛んでいった。

 まあ学園の友達が実父の職場に乗り込んで来た挙句、出合い頭に顔面を蹴り飛ばしているのだから、処理落ちするのも当然の反応だろう。


「ふん、随分とらしくねぇが、分かりやすくてこっちも楽だな」


 一方の萌神は、呆れたように肩を竦めながらもどこか楽しそうだ。

 ここまで潜入続きで肩肘(かたひじ)張っていただろうし、ようやく本領発揮というわけだ。

 とは言いつつも、それとなく状況を察して風破のフォローに入れるようにしてくれている辺り、やっぱり頼りになるな。


「なんてガキだッ!? 人の顔を……!?」

「年頃の娘の尻を追い回すよりマシだと思うが? それに人を使ってのストーキングもな」

「な、何の話……!?」

(とぼ)けても無駄だ。あちこちの集会所に警察が踏み込む所為(せい)で、健気な教徒共が捕まって焦ってるんだろう? 金蔓(かねづる)がいなくなると困るからな」


 東雲の顔がどんどん青ざめていく。

 本来一般人である俺が知り得るはずがない悪徳ビジネスの本質。どこまで知っているのか――と、不安になっているのだろう。

 というより、俺がここにいる時点で全ての答えだし、下手に警察が踏み込んで来るよりも異質な状況には変わりない。

 何なのか分からない――に勝る恐怖はないからな。


「そんなことはどうでもいい。どうしてこんな悪の秘密基地に風破がいるのかを説明願いたいわけだが?」


 しかしコイツをブチのめして神宮寺の傘下に引き渡して終わりというところで、まさかの足踏み(イレギュラー)

 蹴りから始まる交渉術で全てを吐かせる必要がありそうだな。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


「面白そう!」

「続きが気になる!」


と少しでも思っていただけましたら、

広告の下にある【☆☆☆☆☆】を→【★★★★★】にしてポイントを入れてくださると嬉しいです!


その応援がモチベーションとなりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

では次話以降も読んでくださると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ