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第110話 ドキドキ共同生活

 和やかな平日の朝――。


 リビングの扉を開けば、香ばしい匂いが漂って来る。

 それと同時、俺に気づいた雪那が表情を(ほころ)ばせた。


「む……おはよう。朝食はもう出来ているから、早く片付けてくれ」

「おう……サンキュー」


 見るからにハイグレードな黒いエプロン。

 ご機嫌そうに揺れるポニーテール。


 気分は正しく新婚さん――というわけではなく、全ては雪那が昨日から天月家に居候(いそうろう)することになったが故の事象。

 いや正確には、二つの家が一つになるように超特急改装工事された結果、お隣さんを超えて同居人になったというべきか。

 無論、天月・神宮寺、両保護者の親バカが発動した結果であり、俺に拒否権はなかった。


 というか、萌神たちとの会合を終えて帰って来た時には、既に壁面をぶち抜いて自分の家が拡張・合体された後であり、そもそも止めようがなかった。

 そんな光景に呆然としてしまったのは記憶に新しい出来事ではあったが、そもそも娘のために土地を買い上げて一軒家を立ててしまう様なダイナミックお父さんが主導と考えれば、無くはない話なのかもしれない。

 そうやってすぐに冷静さを取り戻せてしまったのは、良いことなのか毒された結果なのか――。


 まあでも、俺と雪那とシュトローム教諭。

 下手な“竜騎兵(ドラグーン)”すら撃退出来るだけの戦力が一ヵ所に集っている以上、これ以上の防衛体制もそうはないだろう。

 加えて、雪那を守るために神宮寺の連中も付近の家に常駐しているし、今は俺の家より安全な場所の方が少ないレベルであるはず。


 それに何より、狸婆(たぬきババア)を不用心に信用するのは危険だし、必要のない借りを作るわけにもいかない。

 同性かつ実力者である雪那の存在は、願ったり叶ったりではあるが――。


「ん、どうした?」

「いや、何でもない」


 シュトローム教諭が、直接(・・)的な形で神宮寺の庇護下にあると誤認させないため、わざわざウチに住まわせることになったわけだが、事態を説明している時の雪那は凄まじい迫力だった。

 今は何やらご機嫌ではあるが、そもそも家同士をぶち抜くというこの状況自体、紆余曲折(うよきょくせつ)の末、色々なことを加味した折衷(せっちゅう)案。

 ディオネの時とはまた別のベクトルで、ドッと疲れたことは言うまでもない。


 ちなみに、何故もっと直接的に神宮寺家を頼らないのかと言えば、その辺りの関係をふわっと曖昧(あいまい)にさせておく方が、何かと都合が良いという判断から。

 実際、神宮寺家や第二研究所が、居場所のないシュトローム教諭を庇護下に置いたとなれば、今度は惣一郎さんや零華さんが世界から排除されかねない。

 つまり守りを一極集中させてガッチリ固めるより、色んな勢力が少しずつ関わる面倒な存在になっている方が、外から手が出しづらいわけだ。

 今は馬鹿みたいに息巻いて立ち向かうより、大人の世界の面倒さとやらを利用させてもらう。それが最善策であるということ。


 とはいえ、異性同士が事実上同居することに対して、両家の親がノリノリだったことが一番の問題な気もするが。

 まあ女を連れ込んだ俺が悪いと言われてしまえば、それまで――なのか。


「雪那ちゃん、お料理上手だねー!」

「朝から元気だな、自称年上のお姉さん……」


 しかし渦中のシュトローム教諭は、緩み切った表情で雪那の朝食に舌鼓(したつづみ)を打っている。

 それを見る雪那もどこか照れ臭そうではあるが、他の生徒に見せないような穏やかな雰囲気を纏っていることには違いない。


「うん、おいひいね!」

「おかわりは沢山ありますから、焦らなくても大丈夫ですよ」


 天然全開のシュトローム教諭。

 雪那の専属メイドである音無結愛(おとなしゆあ)


 戦闘方面、家事方面と得意分野こそ違うが、二人の雰囲気は近いものがある。

 それにこれだけ無防備な様を見せつけられてしまえば、しっかり者の雪那としては対応せざるを得ない。

 クールビューティーな容姿以外は真逆に思える二人だが、意外と相性は良いらしい。


「……すっかり、ドジっ娘の扱いはお手のものだな」


 そうして目の前で繰り広げられるやり取りに名を付けるとすれば、仲の良い姉妹。

 年齢差がひっくり返っているのは、ご愛敬といったところか。


 まあ何はともあれ、こうして天月家での奇妙な共同生活が幕を開けることになった。

 男一人と美女二人。

 別に何かを起こすつもりはないが、いつか男の嫉妬で刺されそうだな。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


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