血湧き肉踊るデスゲーム――掘リンピック開幕にゃ
フィクションです。
A long time ago in a galaxy far, far away..
遠い昔、はるかかなたの銀河で……
皇暦20XX年、極東の島国イッポンは乱れていた。
腐敗、汚職、おおよそ全ての悪徳が蔓延し、放蕩を極めるブルジョワジイを尻目に、プロレタリアァトは苦役労働を課される。
追い打ちをかけるように疫病が蔓延。クォビーッドなるその病に倒れた人々はやがて死に至り、数日後に起き上がる。腐肉と化した身体をひきずりウーウーと唸り、噛みつくことで仲間を増やす。彼らを恐れた支配者たちは首都トウキヨの周りに壁を建造、一切の関わりを遮断した。
つかの間の平穏を享受する支配者たち。しかし忘れるなかれ。平穏とは破られるためにある。
◯
薄靄が立ち込めるコロッセウム。その中心に、百余名程の老人たちが転がされていた。
「ン!?ング、こ、ここは・・・?」
「ヤヤ、あなたはアス=ホール大臣」
「そういうあなたはチョーゼバ=アッへー先帝ではありませんか」
「いったい何だ、どうなっているのだ」
「ニエフ=プイモル御大まで・・・いったいどうなっているのだ?」
「ムム・・・ワシは先程までハンバーガーを・・・」
「スーダレ皇帝陛下!!」
老人たちは皆、イッポンの政に携わる、政権与党ディミーン党、クォ・メイ党の党員であった。あとなんか都知事とかもいた。
「ここはシン・国立競技場じゃねえか。俺らは眠らせられて拉致されてきたってのか?」
曲がった口がトレード・マークのアス大臣があたりを見渡しながら言う。
「いったい下手人は誰です?悪夢のミン・スーの売国奴たちか?」
先帝は訝しがっている。
「ミン・スーにそのような力はないでしょう、先帝。ティナー国の援助を受けたキオサーン党が・・・」
「皇帝陛下。今は憶測よりも我が軍への出動要請を・・・」
――キィィィィィィィン。
競技場に響く、マイクのハウリング。
――軍は来ぬぞ。我がネオ・クオチカイが足止めをしておる。
「誰だ!?」
――我は貴様らに、日陰へと追いやられし者。そして・・・
ブッピガアアアン。競技場の中心に、何かが落下した。
薄靄を衝撃と土煙が追い立てる。ひととおりむせ返った後、老人たちがそちらを見やる。
右拳・右膝を地につけ俯いた姿勢。機械をつなぎあわせて無理に形にしたかのような、歪な人型がウィンと駆動音を鳴らしながら顔を上げ、老人たちを睨んだ。
『貴様らを裁くものだ』
◯
数日前、古都キヨト。ヘイアンの世に構築された霊的結界も、死の穢れの権化たる罹患者たちの前には無力であった。
その結界の最奥。戦神を祀るヤシロにて。
「さあ、あとは意識の移行工程を残すのみです」
白衣の男が、車椅子の老人に語りかける。
「しかし、本当に私でいいのかね」
老人が、絞りだすように呟く。
「老い先短い私などよりも、君たち若人が――」
「これは合理的判断に基づいた人選です。シンクロ率92%。あなたを超える人材は見つかりませんでした。それに――」
白衣の男は、円筒状の巨大な装置を撫でながら続ける。
「もう我々は、戦うことに疲れました。守るものを失っても戦い続ける、そんな気概はもうありません。でも、あなたは違うのでしょう?」
老人が目を見開く。
「あなたは我々とは違う。向こう側の人間です。我々は戦う意志を持った人間に、意志を代弁してもらうことしかできない。
あなたという人間を、深くは知りません。ひどいことをやってきた人かもしれません。
それでも、あなたが彼らを憎む気持ちだけは分かる。我々が信頼するのは、あなたではなく、その憎しみ」
銃声、怒号、悲鳴。それらがヤシロへと近づいてくる。
「だからどうか、我々の言葉を代弁してください。伝えてください。この国がとか、イデオロギーとか、どうでもいい。ただ――」
ヤシロに罹患者が雪崩れ込んできた。老人に、白衣の男に、殺到してかぶりつく。
白衣の男は血みどろになりながら、
「――恨んでいる!憎んでいる!こんなにメチャクチャにしやがって!何がグォリン・ピック祭典だ!全部ぶっ壊してくれ!!対ソン・タク人型決戦兵器、ネオ・タヌイガキ起動!!」
叩きつけるように装置のボタンを押した。
暗転。奔流。老人の意識がチカチカと明滅し拡散、収束、転動。
ガチャガチャと音を立て、二つに割れる円筒装置。その中央から、機械をつなぎあわせて無理に形にしたかのような、歪な人型が現れた。それと同時に、抜け殻になった老人の身体がズルリと崩折れる。
『覇ァ!』
ネオ・タヌイガキの目から怪光線が発射され、周囲の罹患者を貫き焼き払った。
「嗚呼・・・・・・」
白衣の男は満足そうに頷くと、目を閉じて、それきり動かなくなった。
ネオ・タヌイガキは、しばらく立ち尽くした後、
『墳!!』
ジェット推進で、ヤシロの天井をブチ破って飛翔した。
『駆逐してやる・・・・・・』
機械の目に、涙は流れない。
◯
「貴様はタヌイガキ!!おのれ、ジッテン・シャアの事故で死んだはずでは!」
『私は死ななかった。反逆の志持つプロレタリアァトの一団が、私を助けてくれた』
「おのれ、元は此方側だろうに、あのような下等な者たちに手を貸すとは何事か」
『下等は貴様らであろう。私の居ぬ間に好き放題やってくれたな』
タヌイガキは元はディミーン党の統率者であった。
『約束したのだ。彼らの怨嗟を、貴様らに届けると。グォリン・ピック祭典をブチ壊すと』
再び、天から人影が降る。今度は一つではなく、数十。
『この地で苦役労働に勤しみ、搾取され続けたエドゥッコの民・・・・・・
その中で衆道を好む志願者によって構成されし、ネオ・クオチカイ部隊だ』
「な、何をする気だ」
『知れたこと・・・・・・』
◯
ネオ・クオチカイ部隊が旧支配者たちを追い回し、捕まえ次第強姦する【掘リンピック】がここに開催された。
旧支配者がひとり掘られるたび、全国民に10万円の特別給付金が支給された。
ニエフ御大は最初に「たぶんこいつが全部悪いんです!」と差し出されたが、差し出した奴らごと犯されて死んだ。
アス大臣は漢字テストを受けさせられ知恵熱で死んだ。
ミツデス都知事はなんか肛門にマンボウを突っ込まれて死んだ。
全員がひとしきり犯された後、閉会式セレモニイと称してアッヘー先帝がガバガバになったスーダレ皇帝の肛門から白目を剥きながら登場する【アヘマリオ】の儀で締めくくられた。
それを見て爆笑していたネオ・タヌイガキであったが、その昔行ったハヌイ・トラの咎により犯されて死んだ。
イッポンは特別給付金をばらまきすぎて財政破綻した。
完。
昨今流行りの露悪モノがやりたかった。
筆者はノンポリです。
苦情は受け付けません。
ゆるして。