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苦手な方はご注意ください。

薙刀よ、泣くなかれ、そなたの強さを我は知っている

作者: セロリア

2021年。


兵庫県。


妙見山、麓の町。


旧宮廷、源氏家。


天才と吟われる巴薙刀の母親と、資産家であり、弓の名家である、物部家の父親を持つ、姉妹が居る。


その姉の方は、源氏清音 (みなもとし きよね)。


妹は、源氏巴 (みなもとし ともえ)。


清音は家を継ぐべく歴史、華道、弓、薙刀を小さい頃から仕込まれて来た。


その家名の重みは相当なもの。


巴は清音とは違い、鍔薙刀、短刀、合気道を楽しんでいた。


特に接近戦の研究に余念が無く、合気道教室にも通い詰め、遂には師範代にも勝てるようになった。


師範から跡目を継がないか?と誘われるも、泣きながら、謝罪。


巴「すいません、私は薙刀しか頭に無いのです、合気道は接近戦に応用する為、利用するつもりで、本当にすいませんでした」


師範「うん、別に良いよ?」


巴「ふえ?」


師範「息子と結婚してくれるなら許す」


巴「ごめんなさい」


師範「ぶははははは!!息子振られた!振られてやんの!あいつ可哀想、ぶははははは!」


結局許してくれた、それどころか、薙刀を教えてくれんか?と言われた。


交換条件で、実践薙刀を教える代わりに、裏合気道を教え貰っている。


重い木材で精巧に作られた大人が振り回すような薙刀を、中学生を上がるくらいには振り回していた。


腕力で振り回すのでは無く、腰と肘で振り回す技術。


清音は薙刀だけは、巴には勝てなかった。


しかし、ルールを作られ、剣道ルールに寄れば、清音の圧勝だった。


巴「実践では負けないもん!負けてないもん!」


地団駄。


清音「今の平安な世ではあんたの才能は宝の持ち腐れよー、ぷぷ」


巴「う、うう・・うううう」


清音「あ、やば」


巴「姉ちゃんの馬鹿あ!」


姉に身軽に飛び掛かり、薙刀で軽々当てていく。


主に肩と、太もも。


清音「痛!痛い!痛い痛い」


巴「うわあああん」


試合の後はいつもこうなるのだ。


清音は湿布だらけになり、巴は祖父母に反省しなさいと小さい滝に連れて行かれる。


祖父「お前は実践薙刀は試合禁止!」


巴「はあい (んべー)」


テニスボールの大きさの大量ゴムボールを、射出する機械。


ゴムボールは青、緑、ピンクの三色。


6角形に配置され、中心に短刀二刀流、巴が居る。


完全自動ランダム射出されていくのを青いボールだけを叩いていく。


ピンクは避け、緑は出来れば叩く。


初めは、到底反応出来なかったが、今では時速135kmのゴムボールを平均5秒感覚で射出され、時々同時に二方向から射出される事もあるし、たまーに3方向から射出もある。


お陰で音方向感覚にも鋭敏になった。


殺気が無い機械相手だからこそ、背中に目がついた。


そんな日々が続き。



とうとう巴も高校生になった。


清音は薙刀と弓推薦で大学生へ。


高校生になった巴は薙刀部に入部。


巴「ワクワクするね!」


見学中、隣に座る女子に話し掛けた。


凛とした女子「そうね」


巴「・・あ、組み手始まるよ、どっちが勝つかな?」


凛とした女子「・・左かな?」


巴「えー?右でしょ?」


結果、左が勝利。


凛とした女子「貴女名前は?」


巴「ともえ、貴女は?」


凛とした女子「崎原琴音 (さきはら ことね)」


巴「私のお姉ちゃんきよねだよ!凄いね!」


琴音「?どこが?って貴女名字は!?」


巴「?みなもとし」


琴音「え?え?じゃ、源氏清音さんの妹さん!?」


巴「え?うん、そだよ?」


琴音「神様ありがとう!」


巴の手を取り、胸に当てた。


巴「およ?」


琴音「お願い!私と友達になって!お願い!」


巴「う?うん?それより」


主将がずんずん近づいて来ている。


琴音「やったああ!」


琴音が抱きしめる。


主将「・・」


むんずと、後ろ襟首を捕まれ、体育館外に放り出された。


凄い力である。


主将「あんたらうるさ」


〈ガラララガッチャアアアン!!〉


鍵を閉められた。


巴「るううう」


猫みたいにカリカリ引っ掻く。


琴音「ごめんなさい、私の憧れの人だから、つい」


巴「へあ?」


ドアの前で座り、話を始めた二人。


琴音「私さ、小さい時から剣道してたの、でも清音が薙刀で私が剣道で試合をする機会があって、・・それでボロ負け」


巴「・・ふえー」


琴音「清音さんのその姿に私、その・・」


巴「ほあ?」


琴音「憧れちゃって」


巴「お姉ちゃんは憧れる程薙刀強くないよ?」


琴音「は?」


殺気が凄い。


巴「お姉ちゃんは薙刀弱いもん、私に一回も勝った事無いし」


琴音「・・何?強がり?それとも馬鹿?」


巴「?いやいや、本当だし」


琴音「そんなに言うなら、今ここで貴女の実力試して良い?」


巴「ええ!?」


琴音「(ふふん、私に強がりなんか無意味なんだから!慌ててる慌ててる)」


巴「良いの!?じゃあ、早速やろう!」


琴音「は?」





体育館中、部員らの素振り姿勢を見て回る主将が、外の話声を聞いて叱ろうと鍵に手を伸ばしたら、この会話が聞こえた為、主将一人、ドアの前に佇んだまま、動かず。


木造薙刀の深い紫色の包み布袋が、落ちた。


立派な黒木で出来た薙刀である。


刃の部分は丸いスポンジ。


しかし、反りの部分が長い。


主将「ほう」


一方、琴音は薙刀ではなく、竹刀でいくようだ。


主将の後ろ「清音先輩と比べる為であろうな」


いつの間にか副将も覗き。


主将「・・清音先輩に無敗なんだと、妹」


副将「・・まじ?」


主将「さあ?」




琴音「・・」


巴「?いいよう?」


琴音「ふー、すー、ふー」


汗が吹き出てくる。


琴音「(何なの!?この人全く構えに隙が無い!?清音先輩に無敗は流石に盛ったんでしょうけど・・く・・けど・・本当に・・隙が無い!)」


主将「・・」


副将「やるな、隙が無い」


主将「黙って」


副将「お、おう」




巴「?始まってるんだよね?こっちから行くよ?」


琴音「いいわよ来なさい」


巴「んじゃ行くよー、ほい《ボ!》」


琴音「(突き!?いきなり!?)」


琴音は反射的に右斜めにかわしながら進み、胴をー。


巴は左足を前足から摺り足、後ろ足へ、両手を滑らせ、左手を前手から後手、右手を後手から前手へ。


薙刀の刃の部分が巴の腕に引かれながら琴音の左肩から袈裟斬り。


〈ズグン〉


主将「!?」


副将「!?」


琴音の動きが上からの打撃に近い一撃に一瞬止まった瞬間、薙刀の刃部分を滑らせた。


〈シパ!〉


琴音「あっ!!」


地面へ前のめりに転んだ。


すかさず、首に薙刀の刃部分が、コテンと当たった。


琴音「あ?あう?」


巴「はい、私の勝ちい、にゃはは」


琴音「・・」


呆然と巴を見ている。



副将「お、おい!?何だよあの技?おい!?観月 (みずき)?」


観月主将「・・」


〈ガララララ〉


巴、琴音『!?』


観月主将「・・あんたら、何で薙刀部に入りたいの?」


琴音「つ、強くなりたいから!薙刀が、最強だと思うからです」


巴「私には薙刀しか無いから、です」


観月主将「私は、荒谷観月、主将だ、実力は私より上でも、私の指示は絶対だ、法律の範囲内、武士道の範囲内でな、解ったか?」


琴音、巴『は、はい!!』


副将「おー、宜しくな新人!あたしは、藤原京子」


巴「源氏巴です、宜しくお願いします!」


琴音「崎原琴音です!宜しくお願いします!」


主将「まずは懸垂やってみろ、それから垂直ジャンプ測定な」


琴音「は、はい!」


巴「はい!」


琴音、懸垂10回。


巴、懸垂100回で辞めた。


琴音、垂直ジャンプ、51cm。


巴、垂直ジャンプ、91cm。


観月主将「お前バレーやれよ、オリンピック行けるんじゃね?」


巴「薙刀しか頭に無いです」


観月主将「あっそ、んじゃ、京子、巴と試合な」


京子副将「うえー、早速かよ」


観月主将「安心しろ、次は私だ」


京子「・・(言ってくれるなあ、おいおい、観月の出番は無いぜ!)」


防具は自分のモノを持って来ていたので、着替える。


観月「いいか?神棚に・・礼!互いに礼!構え!・・始め!」


京子「ヤアアア!!」


巴はゆったり背筋に一本芯がある構え、京子の咆哮にも崩れない。


京子「(嫌な構えだ・・な!)」


京子が使っている木造薙刀には鍔が無い。


絡め、滑らせ、手首を滑らせた。


しかし、誰も一本とは言わない。


巴「(あれ?今手首切り落としたんだけどな?解らないのかな?)」


観月「・・」


京子「やああ!」


面、胴、小手、脛を狙ってくる。


巴はそれをバックステップでいなしながら、胸、肩、を突くが有効にならない。


巴「????」


そして、京子が構わず突っ込み、強引に頭を打った。


京子「めええええーん!!」


観月主将「一本!それまで!」


巴「・・何ですかこれ」


観月主将「何が?」


巴「はあ!?私は一番最初に手首を切り落としました!それから何度も胸と両肩刺しました!なのに何で!?」


観月主将「それがルールだからだ」


巴「実践だったらとっくに殺してる!」


観月主将「これは実践じゃない、スポーツなんだ、嫌なら辞めろ」


巴「うぐ!?」


観月主将「殺し合いの時代じゃない、あくまでお遊びだ、剣道も、ただのチャンバラだし、薙刀も、剣道ルールに脛がついただけだ、嫌なら出ていけ」


巴「・・」


観月主将「どうした?出口はあそこ」


出入口を薙刀で指す。


巴「・・実践のつもりで貴女と試合したい、お頼み申します」


観月主将「私にメリットないし、どうせ辞めるしお前」


巴「怖いんですか?あん?」


観月主将「言っちまったなあ?覚悟は良いか?」


巴「いつでも」


観月主将「かかって来いや」


体育館、中央に行く3人。


京子「ルールは実践形式、刃部分は線より上とします、神棚に・・礼!互いに礼!・・始め!」


巴は涙目。


余程悔しかったのだろう。


巴は跳んだ。


腕は真上に上げ、高い天井には掲げられた木造薙刀。


観月「(ガードしてからー〈ゾク〉え?)」


ガードなんて出来る訳がない、圧力。


ガードしたら柄ごと頭を砕かれる。


左周り、回避。


すかさず、巴は腰に柄を当て、横薙ぎ。


観月は柄を立て、ガードしたが、自分の柄が顔面にめり込む。


観月「ぷあ!?」


観月が転がりながら、ぶっとぶ。


巴は回り、巴の柄回りながら、追撃。


観月の左側から容赦無しに来る刃部分。


観月は見ていない。


仕方なく、観月の両手が握る柄の真ん中に当てた。


観月の手からぶっとぶ、軽い木造薙刀。


観月「ひ!?ひうう!?」


観月は泣きながら漏らした。


100回やっても、100負けると解ってしまう。


圧倒的実戦才能。


巴「はい、私の勝ちい!」


12人の後輩達も引いている。


観月「うわああああ!」


床を拳で叩く、叩く、叩く。


京子が止めた。


京子「観月の負けだ、巴、今日はとりま、帰れ、な?」


巴「はい!ありがとうございました!」


巴は気持ち良く帰った。


観月は退部届けを出した。


しかし、京子の説明を聞いた顧問の女教師が、巴と話し合った結果、巴は出入り禁止になった。


理由は、試合は実践ではない事、先輩に敬意を払えない事、ルールを守れない事。


つまり、武道をやる資格無しと判断されたのだ。


巴「何が武道よ?ただの遊びじゃないですか!?」


女教師「そうよ?遊びのルールを守れないなら要らないの、解った?」


巴「うぐ、・・なら、武道って言わないで下さい!くだらない」


女教師「皆が武道って言ってるの、リモコンは何でリモコンって皆が言ってるの?正しくはリモートコントロール機器なのに、何で?皆がそう呼ぶからでしょ?同じよ、皆が武道って言うから、私もそう言ってるだけ、解る?私一人が言ってるみたいに言わないでくれる?」


巴「うぐう!?」


女教師「そんなに実践したいならすれば?警察のお世話になって死刑になれば?くだらない!」


巴「うぐぐう!?」


女教師「二度と内の門叩かないでね、さようなら」


話し合いはボロ負けだった。


実践薙刀は求められないどころか、異常者扱い。


邪魔者扱い。


平和な世の中では、犯罪者扱い。


匿名ネットでは、最強論争が巻き起こる癖に。


薙刀は最強なのに。


巴「ふぐ、うぐ、ふう、ふうう」 


体育館横の渡り廊下に取り残されたまま、悔しそうに袖で顔を何度も拭う。


沢山強くなる為に努力してきた。


全てを時代に否定された。


悔しい。


悔しい。


お遊戯で、偉そうにする奴ら。


実践だったら全員瞬殺する自信があるのに。


銃、弓矢以外なら。


中距離、近接戦なら、絶対に負け無いのに。


悔しい。


悔しい!


琴音「あのさ」


見ていた琴音が話掛けてきた。


巴「うぐう?あ、〈ゴシゴシ〉あはは、何?」


琴音「私、実践薙刀、やりたいなあ」


巴「・・ふえ?」


観月は部員らから同情され、また薙刀部員として戻ったらしい。


巴は両親に相談した。


父「うーむ、でもなあ、お前の薙刀は時代がなあ・・」


母「あら、時代錯誤は弓も同じじゃない?ボーガンも度重なる殺人事件で製造すら犯罪になったし」


父「・・どうしても道場やりたいのか?」


巴「私には薙刀しか無いの!極めたいの!お父さん!お願い!」


父「・・」


母「あなた!いいじゃない、巴は本物の武人よ、勿体無いわ」


父「・・うん、まあ、私も、巴の才能は本物だとは知っているし、勿体無いとも思う、・・けど・・」


巴「けど?」


父「師範の許可は成人してからじゃないと、教え子の責任問題やら何やらでなあ、要はお前の教え子が犯罪を犯した場合、それを許可した親に責任が来る、それに、世間が、そうなった場合、生意気だと、袋叩きに合うだろう、世間とはそういうモノだ」


母「その時は、逆に踏み込みましょう、フェンシング、剣道、槍、剣道、それらに勝てばぐうの音も出なくなるわ!」


父「・・ほう、まあ、確かにそうかも」


母「面白くなって来たわあ!燃えて来たわあ!おほほほ!」


巴「私頑張るよ!」


父「・・よし!解った!道場も、防具も、全て用意してやる、古い古民家をリフォームしたら良いだろ、どっか余ってるだろ、その辺に」


巴「ありがとう!!実践薙刀道場!私、頑張ります!」


父「おう!期待してるよ!」


母「評判関係、広告、ネット評価支持操作は任せなさい、いひひひひ、そういう知り合いママ沢山居るんだからいひひ」


巴「お母さん、程々にね・・」


かくして、女教師が潰れると思っていた高校1年の女子、源氏巴は、悔しさの余り、町道場を始める事になりました。



3ヵ月後。


町道場完成。


一面畳の床か広がる部屋。


民家の座敷と倉庫、土間、庭全て繋げて、一部屋に。


豪華な広さである。


大学体育館の7割くらいの広さ。


巴「お父さん、広すぎだよー」


父「・・ふ、少しやり過ぎたかなって」


母「あら、狭いくらいよ、大丈夫大丈夫、あら、薙刀がこんなに、軽いのから、中くらい、そして、重いモノまで、あら、模造品もあるのね」


父「やっぱり練習は、実践式出来ないと意味ないだろ?だって実践薙刀道場なんだから」


巴「お金かかったんじゃない?」


父「投資だよ、投資、巴は結婚しても薙刀だけは辞められないと踏んだんだよ、だから、無駄にはならない、だろ?」


巴「うん!ありがとうお父さん!大好きだよ!」


父「うえへへ」


デレデレである。


母親「水道、お風呂、ガスコンロ、保険、トイレは都市ね、浄化槽じゃない古民家なんて良く見つけたわね、後で三船にお礼しないと、ふむふむ」


母親は世間の常識を学ぶ為に完全一人暮らしを経験している為、きっちりしている。


三船とは、源氏家の女性秘書だ。


60代前半の美人な人である。


性格はきついが、母親には頭が上がらないらしい。


何か借りがあるらしいのだが、巴は興味無し。


父「これが、鍵だ、名義は私だから、でも、ここに泊まるなら、泊まると連絡しなさい、解ったな?後、男は駄目だ、これは話し合った事だから、ルール変更は受け付けない、良いな?」


母「そうよ、巴、そこは必ず守りなさい、あなたがもし、妊娠やら、性病、不純異性交遊、麻薬、レイプ被害にあったら、その男の家族は文字通り社会的に抹殺しますから、これは比喩でも、脅しでも無いわよ、勘違いしないように」


父「女同士でも駄目だ、レズ行為な、駄目だからな、性病は一生を左右する、お前が自殺するかしないかの大事な問題だ、こんな一人暮らしみたいな真似を許すのは、お前を信用してるからだ、お前は、性病も、妊娠も、麻薬も、不純異性交遊も、絶対にしないと」


母「約束、守れるわよね?、ね?」


巴「うん!絶対に守る!薙刀に誓って!裏切りません!」


父「ふははは、信用出来る言葉だ」


母「約束破ったら、他人になるのは勿論だけど、薙刀道場もこの先一生出来ないように手を回すからね、こんな簡単な約束破る人格破綻者では、実践武術なんて、危ないから、潰させて貰います、そういう約束でしたわね?あなた?」


父「ああ、そういう約束だ、良いな?巴?」


巴「うん!良いよ!」


母「貴女を信用するわ、頑張りなさい」


父「信用してるぞ、結構リフォーム頑張ったんだからな、道場、繁盛させなさい、それから模造刀だから、道場敷地内であれば大丈夫だが、敷地外では所持免許が必要になるからな、逮捕されるから、持ち歩くなよ、木造も駄目だ、お前は試合には出れないんだから、携帯に値する理由付けが出来ない、護身用という理由も駄目だ、違法だ、木造でも違法だからな」


巴「はあい!」


母「それじゃ、家近いけど、あくまで此処は道場、住む場所ではないわ、それに、ON、OFFはつけた方が良いから、基本的には帰宅しなさい、解った?」


巴「はあい!」


父「それじゃ、今日のところは帰ろうか」


巴「はあい!」


道場の空気を思い切り吸い込んで、後にした。



学校。


移動教室、移動中。




琴音「え?じゃ出来たんだ!?」


巴「うん!今日来る?」


琴音「え!?まじ?行く!絶対行く!」


巴「あー、それから、条件があって」


琴音「条件?」


巴「うん、私の場合、東大か慶応の薬学部の模試をBから落とすなって・・」


琴音「んぶえ」


巴「んぶえって?」


琴音「と、巴って頭良いの?」


巴「ん?んー?記憶力は良い方」


琴音「ふ、ふうん」


巴「琴音は夢は何?」


琴音「ゆ、夢?んー・・」


巴「お金が沢山あったら、何になりたい?お嫁さんは無し」


琴音「えー!?何でえ?」


巴「旦那さんに出ていけって言われたら死んだと同じだから」


琴音「うべ」


巴「うべ?」


琴音「厳しいなあ」


巴「そうだよね、世知辛いよね!」


琴音「いや、あんたが」


巴「うべ?」


琴音「真似すんなあ!」


巴「んぶえ」


琴音「んもう!」


巴「あはははは!ごめんごめん!」


教室到着。





放課後。


一緒に車で帰る巴と琴音。


琴音は両親が共働きで、帰っても誰も居ない。


父の執事、円山が、送迎してくれていて、琴音はそれに乗っている。


円山は刺青が凄い白髪のお爺ちゃん。


もう70近い。


しかし、気迫、運動神経テストはまだまだ若者にひけを取らない。


円山は父に何か借りがあるらしい。


琴音はます、巴の両親に挨拶。


父「娘から聞いてるよ、道場盛り立ててくれよ?」


琴音「は、はい!頑張ります!」


次いで、母へ挨拶。


母「貴女が崎原琴音さんね?常に良い成績と、社会的責任を重んじ、武士道に身を置かないと、クビにしますからね?解ってますか?」


崎原琴音「はい!承知しました!」


母「宜しい、詳しくは娘にお聞きなさい、貴女の成長も楽しみだわ」


道場に着いた。


巴の豪邸から歩いて10分あるか無いかの距離だが、巴は必ず送迎される。


琴音「えっと・・広すぎじゃない?」


巴「大は小を兼ねる!ね?」


琴音「・・まあ、そうね、狭いよりは良いか!」


巴「此処では私は先生です!師範と呼びなさい!敬語を使いなさい!良いですか?」


琴音「はい!先生!」


巴「師範!」


琴音「はい!師範!」


巴「むふー、宜しい!では、座って、・・この道場に通うに当たり、ルールがありますから、説明します!」


琴音「はい!宜しくお願いします!」


巴「うん、まずね、此処は男子禁制なの、敷地内に男子とか、というか男性ね、男性入れたら道場閉鎖」


琴音「まじ?」


巴「うん、まじ、まじです!」


琴音「はい!せん、師範!」


巴「後、東大か、慶応に入らなくても良いけど、それくらい合格する力をつけ続ける事です」


琴音「無理です!」


巴「私が勉強も、勉強方法も教えます!」


琴音「ありがとうございます!ははあ!」


巴「次は不純異性交遊や、麻薬、妊娠、性病、とにかく、武士道に反する全ての事を行った場合、二度と武術は出来ないように手を回されます、理由は、約束を守れない馬鹿には武術をやる資格は無いからです!」


琴音「うはあ!」


巴「人として当たり前をするだけで良いです、簡単です!」


琴音「はい!師範!」


巴「何か質問ありますか?」


琴音「無いです、師範!」


巴「師範大好きと言いなさい!」


琴音「師範大好きです!」


巴「師範可愛いと言いなさい!」


琴音「師範可愛いです!」


巴「師範最高!」


琴音「師範最高!」


巴「師範最強!」


琴音「師範最強!」


巴「師範に一生お仕えします!」


琴音「・・」


巴「あれ?」


琴音「・・」


巴「こほん、では、まずは体作りからします、壁に足を上げて寝て下さい」


ふくらはぎ、腰の筋肉、筋を伸ばしながら、脳内問題を巴が出題、琴音は解らない。


丁寧に暗記させていく。


毎日2時間。


道場の鍵を閉め、円山と琴音を送る毎日。


一週間経過。


巴「今日はつま先立ち、ぶら下がり肩伸ばしをやります」


琴音「またストレッチい?」


巴「師範は誰?」


琴音「はい!頑張ります!〈シュババ!〉」


巴「うむうむ」


また暗記問題をやりながら肩、腕、手首、脇腹が伸びる。


また一週間後。


巴「今度はこれで腰と、足、脇腹を伸ばします」


パイプ椅子、尻を置く場所に肘を立て、頭は背もたれに。


巴「これをひたすらやります」


琴音「・・はい師範」


巴「返事小さい!」


琴音「はい!師範!」


巴「うむ」


琴音「・・」


不満そうだ。




学校、体育の時間。


ドッチボール。


琴音は感じた。


ボールに力が伝わる。


投げやすい。


疲れない。


足が軽い。


腕、全身が、バネになっている感じがする。


琴音「・・(あのストレッチだけで)くふふふ」


巴は簡単に取り、投げるのも速く、誰も受け止められず、皆逃げる。


巴は一見痩せて見えるが、良く見れば筋肉質である。


特に胸は大胸筋を鍛えている為に、トップが張っていて、綺麗だ。


女子高生はめざとい。


友達1「巴ちゃんさあ、教えて欲しいんだけど」


友達2「私にも教えて」


巴「んあ?」


女友達皆『どうしたらそんなに胸が張るの!?大きさはそんなに変わらないのにい!?』


巴「ふえ?」


琴音「くふふふ」




道場。


琴音「今日は体の変化実感出来ました師範!やっぱり師範は最高です!」


巴「むむ?信用足らんぞ!」


琴音「はい!足りませんでした!ビシビシお願いします!師範!」


巴「うむうむ、じゃあ、もう少し広げるぞ?」


琴音「ギブギブ!!ノー!ノー!」


股割り器具使用中。


巴「行ける!まだ行ける!」


琴音「まじで!まじで!切れる!切れるう!」


巴「んもー、ちゃんと毎日使ってるう?」


琴音「毎日使ってますう!?いててて!たいたいたいたい!」


巴「かったいなあもー、稼働域ストレッチと筋肉ストレッチは違うって説明したよね?」


琴音「あ・・う・・」


あまりの痛さに凄い顔になっている。


巴「仕方ないなあもー」


緩めてあげた。


琴音〈チーーン〉


巴は琴音が休んでいる間に参考書を開きながら壁足上げ。


巴「ほれ、問題出すよー」


琴音「はい・・」





半年後。


琴音の身体能力は体操選手並みになっていた。


バク宙、連続バク転、鉄棒を畳に、縦に置き、その上で逆立ち。


巴「ふむ、やっと半人前かな」


琴音「師範、これもう忍者なんですけど、あたし忍者になれるんですけど」


巴「やだなあ!あははは!忍者なんて雑魚雑魚!あははは!やだもー!笑わせないでよ!あははは!そのレベルで終わる訳ないじゃん!あははは!次は腕力と体力ね?合気道、短刀も練習追加だから」


琴音「ふ、あたし、化け物になっちゃうんですね」


巴「んじゃ辞める?」


琴音「え?」


巴「剣道の達人からしたら、多分琴音は一秒持たないよ?負けた後に何言っても、負け犬なんだよ?やっぱり薙刀はお遊戯剣道にも勝てないんだって言われてもさ、反論出来ないんだよ?」


琴音「・・」


巴「私は負けないけど、琴音は負けるよ、今のままじゃ」


琴音「・・」


巴「琴音の頑張りなんて消し飛ぶよ、あっちはあっちで真剣に人生やるつもりなんだよ?」


琴音「うん」


巴「こっちも人生かけなきゃ、そのつもりでやらなきゃ、一生時間の無駄だよ」


琴音「うん、いえ、はい!師範!気合い入り直りました!ご指導お願いします!」


巴「うむ!んじゃ、重たい棒持って・・両足広げて、肩幅より少し広く、そう、棒肩に乗せて、そう、んで、腰がまだまだ余裕って言えるくらいで、左右交互に振って・・そうそう、これは捻れに強くなる運動です、毎日出来るように無理はしない事、筋肉痛で出来ないとか論外だから、自分で調整しなさい、毎日やる事だからね、捻る時に、お腹に力は入れない事、腹筋で庇うの禁止、内臓を鍛えてね」


琴音「う、ふ、な、るほ、ど、こ、れ、は、き、く」


巴「それ両側重り二つで7キロだから、せめて22キロは越えて貰うから」


琴音「ひいい」


琴音はバランス感があり、スマートな印象の体つきになった。


お尻が上がり、トップも上がった。


背筋が綺麗になり、肌が綺麗である。


男子達から告白される毎日。


しかし、全て断る。


体育、学年2位。


勉強、学年2位。


勿論各1位は巴である。


高校二年生になった。




巴と琴音は柔道の授業中。


琴音は柔道で勝ち進み、巴と当たり、柔道から段々合気道、合気道から、打撃、投げ、柳技まで、次々に繰り出される美しいアクション。


琴音、組み手惨敗。


仕方ないとはいえ、やはり悔しい。


巴「悔しいと思う事は良い事よ」


琴音「精進する!」


先生「良い?皆さんは真面目に柔道をやりましょうねえ?あれは柔道じゃありません、別の何かです、参考にしたら駄目ですよ?」


皆『はあい』


巴、琴音『・・』


女教師「あら?早く続きなさいな?勝手におやりなさい」


巴、琴音『・・戻ります』


女教師「あっそ」


巴「(糞雑魚教師!んべー!あんたより将来安泰なんだから!あんたが私を言い負かしたお陰でね!感謝してるわばーか!)」


琴音「(私成長してるわ!)」


一週間経過。


今度は剣道の授業。


巴は相変わらず、普通の女子高生にも容赦無し。


あまりに強い為、隣でやっている男子に女教師に押し出された。


男性教師が怒り、女教師に詰め寄る。


巴は仲介し、男子に混じった。


黒い胴着だから、バラけて女一人入っても解らない筈だが、何故か巴は解る。


姿勢、体型がモデルみたいだからだ。


男子らは初めは淡い期待にドキドキ。


が。


連続周り組み手により、気づく。


巴「や、〈バシイイ!〉ヤアアア!!」


速い、フェイント、本命、どれも正確無比。


正中線が片足親指に乗ってる時もブレ無し。


剣道部、次期主将と言われる二年男子、羽山龍山の番になった。


自然に。


女子らを含め、皆が見守る中。


琴音「(師範!負けるなよ!)」


龍山「(こいつ!!)」


巴「・・」


なかなか打ち込めない龍山、だが。


巴「・・く」


それは巴も同じ。


だが、龍山が怒涛攻め。


反撃をやらせまいと体重を乗せて打って来た為に、よろけ、面をやられた。


巴、負け。


巴は地団駄。


巴「薙刀なら負けない!絶対負けない!」


龍山「ほう!?俺は去年薙刀と戦って3回共勝ったぜ?負け犬」


巴「はん?そら勝てたでしょうねえ?実践薙刀じゃないもの、剥き出しの刃が遠くからギラリなのよ?あんた踏み込める?当たれば死ぬのよ!?」


龍山「はん?そら負けるでしょうねぇ?こっちだって抜き身ならどうだ?あ?一回踏み込めばもう何も出来ないボンクラが!刺し放題!切り放題!バーゲンせえええる!」


巴「もう怒った!あんた実践薙刀と勝負よ!!負けた方が何でも言う事聞くの!エッチな事以外ね」


龍山「だ、だあれがお前みたいな男女!こっちから願い・・願い下げだ馬鹿!」


男友達1「涙ふけよ」


男友達2「なんて勿体無い」


男友達3「お前は一生の友だ!」


男友達4「はい、受付けねー、書いて書いてー、一回200円からねー」


琴音「ちょ、止めないと!先生達は?あ、居た・・?」


男教師「良い機会ですなあ」


女教師「巴さんに勝てる訳ないでしょう?お馬鹿さん?」


琴音「あれえ!?」



自分用が無い為、仕方なく体育館に常備してあるモノを借りた。


巴「軽!?これしか無いから仕方ないか・・うーん、あんまりに軽いなあ、少し運動させて」


龍山「はいはい、どうぞー」


男友達5「お前さ、勝ったら告白しろ!」


男友達6「あの高嶺の花に男の良さを解らせるんだ!」


男友達7「解らせるだけで良いからな!その後の事は任せろ!」


男友達8「ラッキーハプニング起こす流れだからな!?解るな!?」


龍山「じゃっかわしいい!だあって見とれアホ共!!」


巴「うん、慣れた、良いよー」


男教師「構え、礼、・・始め!」


龍山「(打たせて打つ!どうせ脛狙いやろが)」


女教師「やっぱり男は馬鹿ね」ボソ。


女子生徒1「?」


女教師「さっきから何を勘違いしてるのかしら?」


巴が動いた、脛に当てに行く。


龍山「(ほら来た!)」


女教師「これは実践よ」


龍山は弾き、面を狙ー〈ググン!〉


龍山「え?」


巴の柄は遠心力の重みで止まらず、脛に当たり、龍山がよろけた。


龍山「チ!」


龍山そのまま突っ込み、面狙い。


巴は回転、面をかわした。


そのまま、低い姿勢から柄を伸ばしながら、龍山の胴体めがけ、ハンマー投げ要領で石突き薙ぎ払い、膝を伸ばしながらも忘れない。


石突き柄部分が左横腹に直撃。


龍山「あっぐ!?」


龍山左手で押さえ、よろめく。


巴、容赦無く逆跳び回転追撃。


柄を回わし、刃部分で、龍山の足首を最大遠心力で刈った。


龍山「あ!?」


〈ダアン!〉龍山受け身。


龍山、足を押さえ、涙を流し、唸っている。


巴、龍山の首に刃部分を当て、〈ズリリ〉引いた。


龍山「お前!お前ええ!?ここまでやんのか!?ああ!?剣道出来なくなったらどうすんだよお!?」


巴「これは実戦と言った、貴方は納得した筈」


龍山「くっしょ!いってえ!いってえよお!立てない!立てねえよお!」


救急車搬送。


警察からこってり怒られた。


主に教師二人が。


次期主将が簡単に倒された。


この噂は学校中を越えて、強豪高校新聞にも掲載された。



両親にも怒られたが、まあ、対等な試合だったという事で、むしろ、母親から誉められた。


道場。


琴音「やっぱり師範は凄い!」


巴「師範最高!」


琴音「最高!」


巴「師範最強!」


琴音「最強!」


巴「一生付いて行きます!」


琴音「・・」


巴「あれ?」







執事「着きましたお嬢様」


お嬢様「あら?随分立派ですこと?欲しいわあ、この道場」


〈ガララララ、パタン〉


お嬢様が建物内に入ると、道場内の音が止んだ。


お嬢様「失礼します」


並んで正座している琴音と巴。


巴「どちら様でしょうか?〈ほんわり〉」


お嬢様「貴女、源氏家の妹さん?」


巴「・・」


琴音「失礼ですね、どちら様?」


お嬢様「お黙りなさい、雑魚」


強者のオーラ。


琴音「あ?」


お嬢様「あら?(怖じ気つかないっ事は)・・貴女が源氏家の妹様でしたか、これはこれは失礼を、私、物部鏡華もののべ きょうかと申します」


深々お辞儀。


琴音「いや、妹の源氏巴は、隣、師範です」


鏡華「は?」


巴「ふえ?〈ボケー〉」


鏡華「あらあら、これは・・ぷ・・あ、失礼?私、この道場気に入りましたわ、買いたいのですが、いくらで売って下さいます?」


琴音「はあ!?いきなり来て何を言ってひ!?」


巴が無表情だ、これは激怒している時の癖である。


巴「何で?」


鏡華「はい?」


琴音「あわわわわ、し、師範、少し落ち着いて、ね?」


鏡華「貴女と薙刀で勝負したいんです、勝負は面白い方が良いでしょう?」


巴「なあんだ!そっかあ!あはははは!何かと思ったよー」


鏡華、琴音『!?』


巴「んじゃ、私に勝ったら道場丸ごとあげるよー、で?そっちは何を出す?」


鏡華「負ければお金を相場の5倍出しましょう、そして私が勝っても相場通り支払います、どうです?そちらに損はありませんね?」


巴「・・ここの土地、値上がりするもんねー、淡路島開発で」


鏡華「!?」


巴「50倍」


鏡華「え・・」


巴「相場の50倍を無しにして、無料でやるよ、私に勝てたらね」


鏡華「な!?ハアアアアア!?」


執事「なんと」


琴音「あーあー、執事さん、優秀な医者用意しといた方が良いよ」


鏡華「い、・・いぃでしょー、そんの鼻っ柱あ、粉にしてやります!」


巴「いいね、そう来なきゃ〈ニヘラ〉」


天真爛漫な可愛い笑顔。







琴音は不思議だった。


道場を金としか見ない人種、それは武士道におけるまさしく敵である。


なのに、巴を見ても戦闘が楽しみな風?にしか見えない。


しかし、何かが違う。


この焦りにも似た、焦燥感は何なのか。


琴音「(師範は普通に喜んでいるようにしか見えない・・大丈夫、いつもの師範だよね?手加減してくれる筈ー・・)」


巴は壁に並んでいる薙刀達から、選び、その前に立った。


琴音「(いつものようにパパって片付けて、また私の勝ちにゃーって可愛い笑顔でー)」


上に掛けてある、重い、黒薙刀を人差し指の指先だけで、〈コツンヒュラ〉外し、〈トーン、パシッ〉降ろした。


琴音、執事『《ゾ!!》』


巴「さて、始め・・ん?邪魔だよ?琴音」


琴音が通せんぼ。


鏡華「貴女何してるの!?邪魔よ!」


琴音「駄目です!師範!怒りに呑まれたら、駄目です!にゃはははって笑う師範に戻って下さい!お願いします!殺人犯になっちゃいますうう!!」


琴音の足は今にも崩れそうにガクガクしている。


執事「(勇気がある娘だ)」


巴「・・・・・・・・ぷ!にゃはははは!!解ってるにゃー、んもー、冗談、冗談にゃー、大丈夫だにゃー、にゃーにゃー」


琴音の頭を撫でる。


琴音「ふぐう、師範んん~」


巴「悪かったにゃ、よしよし良い子良い子にゃー」


鏡華「何なの!?私暇じゃないの!」


巴「ありがとうにゃへ、さ、信じるにゃ、さ」


琴音「・・ぐす、はい、頑張って下さい」


巴「はいにゃ」


琴音は頷き離れた。


鏡華「茶番は終わりました?さあ!行きますよ!」


巴「良い弟子を持ったわ〈フ〉」


鏡華「始め!」


巴はその場で垂直跳んだ、道場は天井が高い、刀部分はまだ天井に届かない。


鏡華「(まさか!?ただの打ち降ろし!?こんなのガードした後隙だらけ!!焦ったわね?)」


巴は半分以下の力で振り下ろした。


鏡華「(私の勝ちよ!!)」


巴、振り下ろしながら、右手をすーと引きながら柄を伸ばす。


遠心力が、モロに刃部分にかかる。


鏡華は上からの打ち降ろしに対して、咄嗟に柄を横にして、ガードした。


鏡華「(勝っ《ズンン》重!?)」


《ズドム!!》 巴は垂直飛びは90cm、そのうえ、刀先部分は反っている方が鏡華の背中に向いていた為に、ガードが意味を成さずに背面中腹に直撃、更に黒木材で出来ている為に、只でさえ、重い。


《バッタアアアアアン!!》鏡華、勢い良く前のめりに倒れ、前頭部を畳に強打。


鏡華チーーン気絶。


執事は急いで近い病院へ連れて行った。


琴音は様子をスマホで撮影していた。


琴音「・・殺したんですか?」


巴「んにゃ、半分だけにゃ」


琴音「師範んー!大好きですう!」


巴「一生ついて来るかにゃ?」


琴音「・・師範、格好良い男性用なんで、それは」


巴「ありゃぱ」






翌日、夕方。


鏡華「弟子にしてください!」


琴音「あ?てめー」


巴「厳しいぞよ?」


琴音「え!?」


鏡華「それでは!?」


巴「うんむ!」


琴音「師範!?」


鏡華「やった!」


琴音「・・ち」


鏡華「あ?」


琴音「んだこら命の恩人だぞ」


鏡華「えー、えー、ありやっしたー」


琴音「てめキャラ変わり過ぎだろがコラ?」


鏡華「わざわざてめーのレベルに合わせる事が出来るんだよ、口喧嘩はな、一方が高いままじゃ平行線なんだよ、解るか?」


琴音「それが命の恩人に対する態度かコラ?」


鏡華「ありやっしたーつか、私より弱い癖に偉そうにしないで下さいますか?せんぱああい?」


琴音「・・師範、こいつやっぱり7割いっときますわ」


鏡華「あ?んじゃ私は8割だばあか!」


琴音「感心だねー、わざわざ増やすとは」


鏡華「てめーのダメージだよざあこ」


巴「ただし、琴音の事を師範代と呼ぶように、これは絶対です、解った?琴音の方が強いし、解った?」


琴音「師範・・〈ジーン〉」


鏡華「〈シュン〉・・はい」


琴音「ま、まあ、態度改めるならこっちには喧嘩する理由無いしさ、妹弟子出来てさ、あたしも、嬉しいっていうか・・」


鏡華「師範代・・」


琴音「と、とにかく!これから宜しくな!鏡華!この道場を一緒に盛り上げて行こう!な?」


鏡華「ごちゃごちゃ言わないで取り敢えず、一戦良いですか?」


琴音「・・」


試合終了。


鏡華「まだ・・まだ・・かは?〈チーーン〉」


琴音「し、しつこかったあ!」


琴音が中くらい本気出して勝った。






物部鏡華、父親の妹の娘である。


つまり、従姉妹である。


顔見知りではなかったのは、帰国子女だからである。


高校に編入して来た。


同じクラスだ。


練習は主に琴音、鏡華vs巴。


2vs1でも、まるで勝てない。


琴音「(上手い!重い!)」


ガードすれば態勢がぶっとび、追撃してくる巴。


すかさず鏡華が、助けに後ろから仕掛ける。


巴はノールックで取り敢えず鏡華が居るであろう方向を含めて大きく石突きを伸ばし、腰、背中で、振る。


鏡華、ガード、態勢がぶっとぶ。


当たれば場所が解り、巴が、流れるように鏡華に追撃してくる。


琴音は既に起き上がり気味だから、たった今崩した相手を追う巴。


上から容赦無しに振り下ろし続ける。


勿論、わざと柄の真ん中を狙い、鏡華の手は狙わない。


鏡華「(重!これが連撃!く!?反撃したくても態勢が重いから崩される!)」


琴音が追い付く。


また適当に琴音の居るであろう方向へ石突きを大きく振る巴。


琴音は違う方向だったが、当たらないという事は居ない情報だという事。


巴は転がりながら、刃部分の下、柄を足で蹴り上げた。


琴音、間一髪で追撃に急ブレーキ回避。


琴音、足を止めた。


巴「減点、そこで、止まるな!何故追撃しない!安住のタイミングに居ようとするな!鏡華!琴音に任せるな!臆病者!」


琴音「はい!」


鏡華「く!はい!」








見え見えの攻撃=いなして、反撃。


この図式が実戦では通用しない事がよく解る。


ここにはリングは無い、ルールは最低限しかない。


重い棒を思い切り上から何度も振られる恐怖。


只でさえ重い棒に体重、遠心力が加わっている。


柄、石突きに当たれば粉砕骨折、刃部分にかすればパックリ割れる。


踏み込める?


冗談きつい。


スポーツ精神ごときでは絶対に踏み込めやしない。


軽い武器はこの世に無い。


銃弾、アーマー、銃器、槍、刀、棍棒、全て『重い』のだ。


実戦を想定するなら、重い木材を使い、ミスすれば骨ごと持って逝かれるプレッシャーに耐えなければ、何が訓練であろうか。


スポーツでは味わえない、実戦のあらゆる『重さ』に、琴音、鏡華は、認識を改めた。


スポーツと、実戦は、別世界であると。




病室内。


龍山が友達にしつこく喋っている。


遠心力、体重が加わっている、重い刃。


それが薙刀の正体だと。


スポーツ薙刀では、薙刀の真の怖さを知る事は出来ない。


体重、遠心力による容赦無しの連撃。


ガードもままならず、避ける度に集中力を持って逝かれる。


実は突きの方が優しい攻撃なのだ。


鬼の金棒に刃が付いたモノ、薙刀。


振り回せる広い環境下で薙刀使いとタイマン。


これ程の絶望は無いと、龍山は病室で熱く語っていた。


龍山「俺ん時ですら、軽い木材だったんだぜ?絶対真剣でもガード出来ない、つかガードしたらぶっとぶし、刀曲がる、避けて直ぐ斬り込むしかないけど、あいつは基本離れてるから多分届かない、まじ無理ゲー」


龍山が退院後、弟子入りして来たが、巴は男子禁制だからと断った。







三人共に高校3年。


巴は東大薬学部を目指す事に。


琴音は東大の建築学部へ。


鏡華は一端MITのプログラミング学部へ。


それぞれ目指す。


そして、3人共に合格。


大学の授業は全てインターネットを介して自宅学習で行われる為、別に特訓には影響無し。


巴に追い付こう追い付こうとしている二人だが、ある時気づいた。


巴は、成長している。


しかし、いつ訓練しているのか、二人は不思議だった。








源氏家。


巴の部屋。


防音箱の中、明かり無し。


巴はHz音楽を聞きながら座禅をしながら寝ている。


全て真っ暗に。


思考も止め、全て今の体の感覚に集中している。


それを毎日繰り返していたら、いつの間にか、ある現象が起こるようになった。


自分の体をミリ単位で正確に動かせるように。


速い動きをしている中でも、思考時間容量は激増。


あらゆる選択肢の中、最小限の動きを選び続けるように。


それは高校2年始めから起き始めたが、3年になった辺りから、別の現象が発生。


体の光が見えるようになった。


気という奴だろうか、流石に人には言えない。


それは、武器部位に無意識に寄せられるようだ。


蹴りなら足に、パンチなら拳に、肘なら肘に、光が寄る。


その光が見えるから、フェイントに引っ掛からない。


その光は敵意の度合いで色がコロコロ変わる。


幽霊を見るようになった。


妖怪?を見るようになった。


神様?を見るようになった。


だが、神様らは指を指してクスクス笑うばかり。


妖怪は巴から逃げるし、幽霊は逃げないというか、完全無視。






巴、大学二年になった。


今度は気を操れるようになって来た。


頭、掌から垂れ流しの気を完全に止める。


気を身体中に循環させる。


循環させると、むくみ、筋肉痛が全く無くなり、体が年中軽い。


どんどん強くなる巴に対して、鏡華、琴音はしつこく質問攻め。


仕方なく、巴は話した。


鏡華、琴音は意外に信じてくれた。


むしろ、師範の出鱈目な強さに納得出来ると。


気を教える事になった。





春。


大学を卒業する日になった。


道場の名前を、三人で考えた。


道場名、円心道場。


卒業祝いに三人に、それぞれ真剣の巴薙刀を貰った。


不燃マグネシウム合金で作製された、薙刀。


刃の部分は不燃マグネシウム合金と、超硬合金を混ぜ、ダイヤグラインダーで研磨したモノ。


形状記憶合金な為、曲がっても、元に戻る。


刃の形は巴型と呼ばれる大きめの厚さ、幅の刃。


反りがあり、長い、ガードしきれないだろう。


柄は、ネジ式が2箇所、外すと小さい鎖で繋がっていて、折り畳める。


刃部分は金物をいくつか外すと外れるようになっている。


これならば、カメラの三脚より目立たず運搬出来る。


取り敢えず用意された大きめ肩掛けバッグにすっぽり入る。


それは影打ち、大本命の違法薙刀である。


倉庫の奥深く一緒に保管した。


何重に、閉じ込めた。


そして、父親から、陽打ち、普通の槍に似た、真剣の薙刀を三人に貰い、卒業祝いで、食ったり、飲んだり。


それぞれ、帰宅した。


後日、それぞれ、保護者同伴の元、警察に市役所道場経営書類と共に、薙刀の刃部分だけを持って行き、携帯、所持許可証を発行して貰った。


これで短い、精巧黒木造薙刀を堂々持ち歩けるようになった。


琴音、鏡華は、円心流の最終試験を受け、何とか合格。


免許皆伝を得、支部を開く許可を与えた。





その2ヶ月後。


世界的パンデミックが発生。


発生元はまたしても中国。


コロナとは違い、致死率30%越え。


そのせいで、経済は本格的に死に絶え、中国は世界から孤立。


中国からミサイルの雨が降り日本の北から南までの全ての都市が火の海となった。


在日中国人が軍人と化し、暴徒化。


何でも中国の法律により、在日は全て軍人にならないといけないらしい。


在日中国人により、民族浄化作戦が徹底される都市から少し離れた町、街、村。


女は犯され、男は殺された。


自衛隊は国外に行っていて、警察も人手不足。


守ってくれる者は誰も居ない。


そんな中、それぞれ仕事場から、命からがら、巴の実家にやって来た三人。


巴の父親は殺され、母親は拉致られて、居ないガランと静まり帰る家。


豪華な家だったが、今は荒らされ放題だ。


巴「こっち」


琴音「埃やば」


鏡華「普通の薙刀じゃ、5人殺したら斬れなくなりました」


巴「あの薙刀は大丈夫、あれは違法技術の塊だから」


床板を外し、コンクリート色の扉を開け、階段。


地下に降り、ダイヤル式鍵を開け、部屋に入室。


ランプに火を灯した。


竹に似せて作られた高い高い煙突が何本も地下から伸びている。


巴「お父さん・・ありがとう・・ん?」


壁に大きな紙が貼ってある。


それには文字が並んでいた。








巴の愛する父と、母より。


戦うのは、平和になってからしなさい。


拳銃には勝てない、ミサイルには勝てない。


食事、飲料水無しには勝てない。


戦争とは、個人ではどうしようもない。


平和になってから、行動しなさい。


格闘術、武道とは、銃を使わない戦いなら、本来なら、勝てる民族だと証明する為のモノだ。


戦争に勝つ為ではなく、虐めや、理不尽と戦う為に、力を奮いなさい。


これは約束じゃない、お願いだ。


どうか。


戦争には参加しないでくれ。


さようなら。


愛する両親より。






そこには保存水が14リットルのペットボトルが大量、乾燥グラノーラ大量、乾パン大量、お酒のつまみ大量にあった。


トイレはバケツ。乾燥剤が大量にある。


三人はそこで暮らした。


地下は広いが、広いのには理由があり、人間の体温は二人以上が地下に閉じ込められた場合、人間の体温自体が凶器になる。


蒸し暑くなるのだ。


それを防ぐ為に地下水を利用し、水脈をパイプに大量に引き込み、冷たいパイプを何重にも一部屋に集めてある。


一部屋がクーラー兼、保存室になっているのだ。


紙の皿、コップ、割り箸を繰り返し使う。


巻きネジ時計を腕時計が動いている内に合わせ、起動。


巻きネジ時計は大きく、音が鳴らないタイプ。


年月日が見れる。


三人で適当お経を唱えながら、気を充実させる修行をした。










1か月後。


富士山が大噴火。


北海道、主要都市、海抜が低い場所ばかりな為に、一つ残らず都市は水没。


東京、大阪、名古屋、広島、神奈川、水没。


富士山位置から、日本は二つに割れ、折れた。


ロシア、中国軍は日本から脱出。


ロシア、中国の民間人、軍崩れの大半は日本に残ろうとしたが、激しい地震、津波、山崩れ、噴火、都市火災により、堪らず祖国に帰って行った者らも少ないながらも居た。


自分達にとっての『楽園』を既に築いた軍崩れ達は、祖国に戻ろうとはしなかった。


日本人の男らは奴隷、女達は肉袋。


生き残った日本人達は、激しい餓えに苦しみ、日本人の死体を食べるようになった。


惨劇を見た三人、飛び出そうとした琴音を、鏡華が止めた。


すごすご地下に戻った。


分ける?


誰に?


偽善と、道は違う。


まだまだ食料は不足している。


日本人らを見捨てるしか無い。


助けたとして、その後は?


瀕死の者達に、貴重な食料を食べさせる?


無駄になる確率が高い。




三人は更に3ヶ月は出ないと決め、小さい強化鏡が中に何枚も反射するように施された竹から伸びる太陽の光を浴びる。


人間は太陽光を浴びないと死んでしまうから、光合成部屋があるのだ。


3ヵ月経過。


真昼。


外に出た。


だいぶ、『減った』だろう、10月。


早米の収穫時期に当たる。





田んぼ作業している男に美人三人が話を聞く。


ロシア、中国、日本、台湾は既に和解しており、北海道はロシアに一旦取られたが、また自衛隊が取り返したらしい。


沖縄も日本が取り返したとの事。


日本は大量のミサイルを受けてもなお、結果だけ見れば負けなかったのだ。


外が、勝っても、中が荒らされた。


戦闘員以外を虐殺した、ロシア、中国人、韓国人は、国際法により、厳しく問答されている段階らしい。


それでも、富士山大噴火により、折れた日本。


この事は、日本人達の士気を大幅に下げた。


まだまだ、街には敗戦国、敗戦国と威張り散らす外国人がたむろしているという。


街中で暴れている馬鹿共を三人で殺さず倒しまくっていたら、大規模な喧嘩に突入。


刀、ナイフ、銃を使う敵に、巴らも、スイッチが入り、全て皆殺しにした。


三人は捕まり、審問に掛けられたが、事情を汲み取り、警察組織に入る条件で、不問とされた。


警察は現状、銃を使わない鎮圧武術に飢えていたからだ。


三人は日本警察組織に志願した。


そこで、使えない、使えないと、偉そうに語る武術を次々に木造薙刀で倒しまくった。


次第に。


実践薙刀を習いたいと申し出る男女が増えていった。


警察署長に相談し、警察道場を本格的に薙刀道場へ改築。


柔道、空手、剣道では実践では役に立たないと三人が全て証明し続けたから認められたのだった。


警察組織、必修武道項目が、実践柔道、実践剣術から、実践薙刀へ移行した瞬間である。


『美徳より守護神を取れ』


警察道場のスローガンである。


三人は警察お墨付きの日本警察治安薙刀部隊師範、通称、NAGIという文字と共に刺繍された服、軍帽子を着用している。


刺繍は、薙刀を構える、ハチマキ、着物姿の大和撫子。









2年後。


国際武術無差別種目、無差別級大会、開幕。


決勝。


巴「さあて、行きますかにゃ」


鏡華「勝ちます」


巴VS鏡華。


ロシア、中国の武術は日本人の脇役に一回戦で全滅していた。


勝ち上がるのはほぼ薙刀、短槍使い。


刀は3人途中まで居たが、薙刀に全て負けた。


実践槍と、実践薙刀の2頭が競う形になったが、巴、鏡華、琴音の遠心力薙刀の威力には勝てなかった。


最終的に、準決勝は、琴音VS鏡華。


鏡華が勝利。


決勝、立ち上がる外国人達、日本人達。


巴「琴音に良く勝ったにゃー、凄いにゃ」


鏡華「師範にも負けませんよ?」


巴「よく言った!じゃあ・・少し本気だそうかしら?」


鏡華「行くぞ!」


鐘が鳴った。


巴が、琴音がお互い、前進しながら少し跳ね、回転。


もの凄い遠心力が加わった刃部分同士がぶつかった。


鏡華の前進が後進に無理矢理変化させられた。


鏡華「・・」 


動じず、そのまま急ブレーキ、また前進する為にまた回転。


巴「・・」


既に追撃し、跳んで、上に掲げている。


鏡華はそのまま無理矢理軌道修正、受けて立ち、バット振り。


巴の遠心力を受けた。


巴は刃部分の反りを利用し、鏡華の背中を狙った。


が。


巴「!」


鏡華の背中に届いてない。


鏡華が恐れず、巴の遠心力、破壊力に、『踏み込んだ』証明。


巴「〈ゾクゾク〉はは!」


鏡華はニヤっと笑い、受け流した。


巴の態勢が崩れた。


鏡華は引いた柄を、再び同じ軌道に全力フルスイング。


巴は柄離した。


巴は頭部を狙われた、左足を伸ばし、親指の力だけで、態勢を捻り、無理矢理回避、同時、鏡華の柄を左手で握り、引きながら、右拳で伸び奉拳。


鏡華「かっは!?」


ぶっ飛ぶ鏡華。


観客『ウオオオオオオオオオオオオ!!』


ゴロゴロ転がりながら、離れる鏡華。


素早く木造薙刀を取り、走る巴。


巴は柄を左前半身で隠し、軌道が読めない。


鏡華、起き上がり、巴の右側に回り込む意識。


巴は急ブレーキ、石突きを高速で射出。


鏡華は巴の右側へ回り込みながら左上からの振り下ろし軌道。


巴はそれは当たらないと判断し、一瞬止まる。


鏡華の刃部分が過ぎるタイミングで少し前へ跳ね、回転。


巴の顔の側を鏡華の刃部分が過ぎて行く。


鏡華「(ああー・・やっぱり、格好良いなあ)」


巴が振り替える。


その巴の後ろから伸びた石突きが迫ってくる。


鏡華は今空振り態勢、何も出来ない。


巴は先に石突きを伸ばしていた分、振り伸ばす時間が短縮される。


鏡華「(私もいつかー)」


巴「(強くなったな)」


〈スドオ!〉鏡華の左肩から背中に斜めの痣が入った。


鏡華、立ち上がれない。



笛が鳴った。


巴が肩を貸す。


鏡華が笑う。


琴音が泣きながら駆け寄る。


観客達はスタンティングオベーション。


ロシア、中国、インド、タイ、ベトナム、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、カナダ、スイス、オーストラリア、国際総合予選も含め、総名、532名、この会場へ選抜された総名、36名中。


優勝者、円心流、実践薙刀、源氏巴みなもとし ともえ


世界が実践薙刀の威力を認めた瞬間であった。


記者がカメラ機材を抱え、写真を撮影しまくる。


巴「ピースピース!!」


鏡華「待っ・・痛い痛い!肩痛い!」


琴音「ほら、反対側、貸して、イエーイ!」


鏡華「んふふ、もー、イエーイ!!」


巴、琴音、鏡華『せーの、薙刀はー?最強だあー!イエーイ!!』


《パシャ》






END


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