〜始まりの始まり
三限目だいぶ眠くなってくる時期である。
今日、水曜日は音楽という俺が最も苦手な教科であるのも伴ってとても退屈だ。
そうな三限目にある不思議なことが起こる。床を見たものが言った。
「なっなにっ、この絵?」一人の女子生徒が叫ぶ。続けて「なんだよこの紋章っ!」次々に叫び声や悲鳴があがる。
俺もその床を見てみると、六芒星いわゆる召喚紋などで使われるような形をしたものが浮かび上がっている。
黒がかった紫色の線で描かれているその六芒星は次第に教室いっぱいまで広がった。
クラス全体の悲鳴の声がさらに大きかなってくる。そしてある生徒が手にしていた筆記用具を落とした瞬間クラス全員の視界が明転した。
次に視界が戻った時中世ヨーロッパ時代のような謁見の間らしきものが広がっていた。
そしてモデル顔負けの素晴らしきドレスで飾られた女性と王と思わしき威厳たっぷりの男性、そして周囲には数十名の騎士のような人物が俺たちを見ていた。
「こっ、ここは?」クラス委員の加賀が叫んだ。するとそれに答えるかのように先程の女性が「ようこそお越しくださいました勇者様、どうか我らをお救いください。」と言った。
小説顔負けのテンプレ展開にびっくりした俺だがそれどころではない。
まずここが教室でないことが問題だ。
そう思ったが、その女性が「今日は遅くみなさまお疲れだと思います。詳しいことは明日お話しいたしますのでお休みください。」と有無を言わさない物言いで騎士に指示を出しながら俺たちを寝床へ連れて行った。
こうして俺の最も濃くなるであろう一週間が始まったのだった。